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異世界旅~家に帰るまでが遠足です~④

 今回の旅で宿泊する町は、比較的大きな町ばかり。

 だから全ての町に、ギルドが管理する厩舎や宿舎が整備されてる。

 御者と馬は町に着くごとに、どんどん交代していくんだ。

 

 そうすれば、御者は同じ道の往復だけで済むから疲労度が違うし、一泊で家に帰れることも多い。 

 馬はきちんと休ませる事ができるしね。


 ギルドから護衛任務を受けた冒険者と御者は、専用の宿舎が使えるんだって。

 雑魚寝だけど、大抵厩舎に隣接した建物にあるから朝が楽だし、それに朝食の屋台も建物の目の前に出てるしね。

 とっても便利で評判が良いんだってさ。


 たまに懐が温かい冒険者が宿屋に泊まる事もあるみたいだけど、ほとんどはこの雑魚寝宿舎を利用するんだ。

 男女別なので女性の冒険者も、みんなそこを利用しているらしい。

 御者に至っては女性はいないし、冒険者の女性だってとっても少ない。

 だから下手すると、安宿より広い宿舎を少人数で利用できる、って言うんで、これまた女性冒険者に大好評なんだって。


 最近は短時間労働じゃなくて、がっつりフルタイムで働く女性が増えてきてる。

 ギルド側も女性の冒険者獲得に積極的らしくて、こういう福利厚生(?)に力を入れてるよ。

 ギルドで冒険者をする女性って人間族はほとんどいないらしい。

 そもそも冒険者って獣人の血が入ってないただの人間族はいないのかもしれない。

 

 何故って?…絶対とは言わないけど…ほぼ無理だから。

 獣人と人間、身体能力が違いすぎるんだ。

 よほど強い魔法が使える人なら別だけど、この世界、魔法も魔力も減る一方だからね…。

 

 獣人女性は是非とも欲しい人材なんだと思うんだ。

 獣人は男女問わず、とてつもない力や肉体を持った人がいるからさ。

 働く女性が増えれば、こういう護衛任務に女性を指名する人も多くなるでしょ?

 だから…ギルドもあの手この手で色々頑張ってるんだろうね。


 「もっと増えても良さそうな気がするけど」ってシーラさんに言ったらさ、なんか…獣人の若い女性って、不安定期っていう体の不調が起こる時期があるみたいなんだよ。

 シーラさんが変に言葉を濁すから、どういう状態をいうのかはよくわかんないんだけど…。 

 

 なんでも人種や個人差がかなりあるみたいで…発作みたいな感じなのかなぁ。

 酷い人はお仕事ができなくなるばかりじゃなくて、その時期は家から出る事もままならないんだって。

 だからね、もっともっと獣人女性の雇用を積極的にしたいんだけど、ギルドもそこでちょっと躓いてるらしいんだ。

 何か解決策が見つかると良いよね。


 ◇◇◇


 冒険者の護衛は、旅の最初から最期まで、基本的には同じ人達が護衛についてくれる。

 10日間の馬車旅とは言え、5日間をタンデムで泊まる事になるので、シーラさんも復路の護衛が変更になると思ってたらしいけど、ちょうど条件にハマった男女の冒険者バディがいたらしい。

 それが今回の護衛の二人だったんだ。

 

 ミネラリアからタンデムまでとなると、復路は別の人達に変わる事も多いんだよ。

 そういう事も、ギルドが全部対応してくれるから安心のレンタルパックなんだけどね。


 シーラさんは女性だから、いつも男女のバディを護衛に指名してるんだって。

 さっきも話に出たけど、女性冒険者は圧倒的に少ない。

 だから料金が少しお高めなんだけど。

 これはガイアさんが絶対にそうしろと譲らないらしい。…ガイアさんも苦労が絶えないね。


 はぁ~、それにしてもさ、程よい硬さと柔らかさ…。

 もう、このクッション無しでは馬車生活を生き抜ける気がしない。

 どうか無事にお尻がミネラリアへ戻れますように!

 …まだ旅は始まったばっかりだけども是非とも祈っておきたい。


 あ、念のために、薬師のグリンデルさんの薬局で、痛みの回復が早くなる薬草茶を買っておいたからね。

 あの薬草茶、とってもよく効いたんだ。

 大事な大事なお守りだよ!


 シーラさんは結局馬車の中で、僕が差し出したクッションコレクションを離さなかった。

 君たちとはケツの出来が違うのさ。って、ずっと思ってたけど…本当は異世界人のみんなも馬車が辛いのかもしれないな。


 ◇◇◇


 今日の宿場であるカシールの町に着いた。カシールは、ミネラリアよりかなり小さめな町だ。

 僕たちはギルドカードを提示して町に入る。

『ちょ…ちゃんと見なよ!』って、逆に思うくらいのあっさりとした検問で町の中に通された。

 

 なんでも、同じ領地内の移動であること。且つ、一団がギルドカードを全員所持していること。

 さらにはギルドのレンタルパック馬車で町に入る事で、確認が極端に緩くなるらしい。


 今日はそうでもなかったけど、町の入り口で馬車渋滞が起こる事も多いらしいんだ。

 確かに、みんな同じ時間帯で移動するからね。

 だから、検問をさっさと済ませるための苦肉の策って感じなんだろうけど…。

 

 そりゃ確かにギルドで馬車を借りる時に、シーラさんはしっかりチェックされてるけど…僕はチェックされてないんだよ…どうなの、これ。


 御者と馬は今日でお別れだ。御者は「まいどっっしたー!」と元気に挨拶する、気の良い若者だった。

 まいどした君と別れ、僕らは鞄や貴重品、水の樽なんかを持って宿屋へと向かう。

 シーラさんがいつも使う宿が空いていれば、そこに一泊する予定。


 クッションコレクションは僕にとっては超貴重品だけど、一般的に貴重品じゃないから持っていかないよ。

 客車に置いたままで大丈夫らしい。ギルドの管理だから安心なんだって。

 クッション諸君、また明日!


 ◇◇◇


 護衛の冒険者二人とは、明日の出発時間なんかを確認してから、解散になる。解散と言っても護衛の二人は、厩舎横の建物に常駐する、ギルド職員のところへ行くらしい。

 彼らは今日の報告をして、ギルド側からの業務連絡を受けたり、あとは朝の集合時間なんかを告げて、そこで本当の解散になるんだ。


 イレギュラーな事…例えば急な延泊とか、そういう対処もここでしてくれるらしい。

 まぁ、大抵は本人同士で交渉が終わってるから、報告だけみたいな形になるみたいだけどね。


 今回の旅の護衛を引き受けてくれたのは、ダリアさんというすっごく細マッチョなお姉さんと、ドイルさんというすっごく大柄マッチョなお兄さん。…なんて、思ってたら二人とも16歳だった…タメかよ…。

 そう思っていたのは二人も同じで、僕の年齢を知って「マジか…」って呟いてた。

 聞こえたぞ。

 僕の事、絶対子供だと思ってたな…ぐるぅぅ…


 ダリアさんは豹人族。ダガーという短剣と鞭を使うらしい。

 鞭使い…僕、別の世界の扉も開いてしまいそう…なんてね…。

 

 ドイルさんは熊人族。大剣というすっごく大きな剣で戦う、ガイアさんと同じ剣のタイプの人だ。

 立派な体躯を駆使して盾役にもなれるんだ。


 いつもは4人組でパーティを組んでいるんだって。

 他の二人もダリアさんとドイルさんと同じように、護衛業務を引き受けてるらしい。

 物腰柔らかく、挨拶や言葉遣いも丁寧で、シーラさんも気に入ったみたい。

 

 この年齢で、もうEランクなんだって…ランクをあげる為には、礼儀作法なんかも必須らしいから、先を見据えて所作や言葉遣いも学んでるんだろう。


 今晩は…その…高校の椅子にちんまり座った瞬間に椅子を破壊するドイルさんと、セーラー服で鞭を持ったダリアさんが夢に出てきそうなんだけど…

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