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神滅者  作者: おまめ
神の地
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終焉

神とは、絶対である。

触れることすら許されない存在。

だが――それを滅ぼし、力を奪う“例外”が現れた。

 

そのものは全ての神を滅ぼし最終到達点へ向かう

『神々』が顕現した後、神の園は沈黙した。


それは停止ではない。混乱でもない。むしろ逆だった。これまで権能を循環させ、神々を生み、淘汰し、均衡を保ち続けていたこの領域そのものが、ただ一つの結論へ到達した結果として生じた静寂だった。これ以上の処理は不要。これ以上の演算も不要。すでに答えは出ている。目の前にいる存在は排除される――その結論だけが、神の園の隅々にまで浸透し、空間の揺らぎすら整然と固定されていく。


中心に立つのは『神々』。


数多ある神格の頂点。権能の集積。神話の完成形。神という概念そのものが、ただ一つの存在へ収束した末に顕現する史上最強の神。その姿に定義は存在しない。見れば神に見え、獣に見え、人に見え、ある瞬間には空そのもののようであり、次の瞬間には虚無に見える。認識する側が理解できる形へ合わせているのではない。そもそも固定された姿を必要としていないのである。見るという行為の方が追いつかず、理解のほうが後から置き去りにされる。ただそこにいる。それだけで十分だった。


神の園を循環していた権能は沈黙し、空間の歪みは静止し、これまで幾重にも重なり続けていた管理機構すら、その存在を前提とした挙動へと書き換えられていく。まるで神の園そのものが、“本来あるべき主”を前に姿勢を正しているかのようだった。


そして、その前に立つのはそのもの。


だが、すでに以前の姿ではない。


『権能』を得たことで、一度はあらゆる力を己の内部へ宿し、神界そのものを統制しうる器へ至った存在。しかし今、その内側は空白だった。『凌駕』『殲滅』『永劫』『封緘』『神獣』『暴虐』『魔法』――さらには神界から神の園に至るまで奪い、喰らい、支配し、自らの内部へ沈めてきたすべての権能。それらはすでに剥ぎ取られている。


奪われた、という表現は正しくない。


回収。


ただ、それだけだった。


最初から世界に属していた力が、本来あるべき場所へ戻されたに過ぎない。ゆえに抵抗は成立しない。拒絶も意味を持たない。所有していたと思っていた力は、もとより仮初だった。


そして今、それらは神格として実体化している。


神の園を埋め尽くすほどの神々。かつてそのものの内部に宿り、その意思ひとつで統制されていた権能たち。『暴虐』『魔法』『海皇』『幻想』『侵食』『歴史』――そのものが越えてきた敵、そのものが滅ぼし、その存在を己の中へ沈めてきた神々。そのすべてが『神々』の背後へ整然と並び、もはや軍勢というより、一つの処理系として完成されていた。異常を排除するためだけに最適化された、絶対的な秩序。


普通なら、その時点で終わっていた。


だが、それでもそのものは崩れない。


身体はすでに限界を越えている。一度すべての権能を宿した代償として、器だけが異常な広がりを持ったまま残されていた。内部構造は摩耗し切り、骨格は歪み、神経は裂け、存在の輪郭すら不安定になっている。普通の神であれば、すでに存在を維持できない。空白に耐えきれず、とうに崩壊している。


それでも壊れない。


理由は単純だった。


一度、すべてを宿している。


それだけだった。


権能そのものはない。だが、その感覚だけが深層に焼き付いている。何がどう干渉し、どの順番で重なり、どこで歪みが生じるのか。それを身体ではなく、存在そのものが記憶している。ゆえに壊れ切らない。ゆえに崩れ切らない。空になった器はなお、過去の頂点を覚えていた。


その異常を確認した瞬間、『神々』が処理を開始する。


予備動作は存在しない。


権能の発動ですらない。


ただ、世界が判断する。


不要。


その瞬間、そのものの身体が軋んだ。


圧ではない。攻撃でもない。“存在する必要がない”という結論が、直接現実へ反映された結果だった。骨格が沈み、筋繊維が裂け、内臓が押し潰され、神経が断裂していく。外側から破壊されているのではない。存在そのものが、内側から解体され始めていた。


膝が沈み、神の園の地面が砕ける。空間そのものが、そのものの崩壊へ呼応するように軋み始める。それでも倒れない。歪んだ骨格を無理やり引き上げ、崩れかけた身体を維持しながら、そのものは再び立つ。呼吸は成立していない。感覚は遅れ、思考には明確な鈍化がある。それでも視線だけは落ちない。


その姿を確認した瞬間、『神々』の背後に並ぶ神々が動き出した。


それは戦闘ではない。


処理の補助。


不要物の削除。


最初に踏み込んだのは『暴虐』。殴る。ただそれだけ。しかし、その単純さゆえに極限まで最適化された破壊が、そのものへ叩き込まれる。避けたかどうかは関係ない。当たるという結果だけが先に成立し、その後から現実が追いつく。


吹き飛ばされる。


だが、その先にはすでに次が待っている。


『魔法』。


多重展開された術式が幾重にも空間を覆い尽くし、炎、雷、空間断裂、重力崩壊、存在分解が一斉に叩き込まれる。かつてそのもの自身が自在に扱っていた体系が、今は完全な敵として牙を剥いていた。干渉の密度が違う。一つひとつの術式が独立しているにも関わらず、すべてが連動し、逃げ場そのものを消していく。


そこへ『海皇』が重なる。


血流が奪われる。


圧力が乱れる。


呼吸という前提が崩れる。


海ではない。水ですらない。体内という小宇宙そのものが支配下に置かれ、自律が失われていく。


さらに『幻想』が認識を狂わせ、『侵食』が輪郭を削り、『歴史』が“すでに壊れていた結果”を現在へ押し込むことで、回避も防御も意味を持たなくなる。それらは連続した攻撃ではない。同時に成立する破滅だった。骨が折れ、肉が裂け、存在が摩耗し、内側から崩壊していく。


普通なら、一瞬で終わっている。


神であろうと耐えられない。


四聖権能ですら、ここまで徹底された処理を受ければ崩壊する。


それでも、そのものは壊れない。


理由は強さではない。


耐久力でもない。


経験。


ただそれだけだった。


一度、全てを宿している。


何が来るのか知っている。


どう壊れるのか知っている。


どこで崩壊が決定的になるのか理解している。


だから完全な消滅だけを拒絶できる。


壊れる。


だが壊れ切らない。


崩れる。


だが崩れ切らない。


存在の輪郭が削れ、神格が摩耗し、身体の原型すら曖昧になりながら、それでもなお立ち続ける。


その異常を前にして、『神々』は理解する。


神々では足りない。


権能では足りない。


ならば――世界ごと終わらせればいい。


その瞬間、神の園だけではなく、神界、人間界、さらには存在するあらゆる階層の深層で何かが噛み合い始める。神々の力が収束していく。神話、信仰、権能、存在理由、その起源から終焉まで、あらゆる神格の根幹が一つの現象として束ねられていく。


それは本来、決して成立しない力。


全ての神の力が揃った時のみ発動可能な、唯一絶対の終末機構。


〔世界の始まりと終わり〕。


それは単なる破壊ではない。世界を滅ぼすだけの力でもない。創造と終焉、その相反する概念を完全な循環として統一し、“存在すること”そのものを意味のないものへ変える力だった。世界が生まれる。だが同時に滅ぶ。始まりが終わりを呼び、終わりが始まりを生み、その連鎖が無限速度で回転し続けることで、あらゆる存在を“存在する前”と“滅んだ後”へ同時に押し潰していく。


まだ発動していない。


準備段階。


それだけで世界が耐えられない。


神界の空が裂け、人間界では理由もなく地平が崩れ始める。時間の流れが乱れ、因果が歪み、存在の順序そのものが崩壊していく。世界が終わるのではない。世界という概念そのものが、存在の前提から崩れ始めている。


そして、その中心にいるそのものは初めて理解する。


勝てない。


攻略がない。


工夫もない。


これまでの敵には突破口があった。どれほど強大でも分析できた。理解できた。崩せた。


だが、これは違う。


世界そのもの。


存在の前提。


終わりだけが確定している。


初めて、明確な形を持った絶望がそのものの内部へ沈む。


それでも立つ。


理由はない。勝算もない。可能性すら存在しない。それでも止まれない。神界を越えた。神の園を越えた。四聖権能を滅ぼした。ならば最後も越える。その意思だけを残し、そのものは崩壊する世界の中心でなお立ち続ける。


そして『神々』が、ついに〔世界の始まりと終わり〕を起動する。


始まりが押し寄せ、終わりが覆い尽くし、神界が裂け、神の園が崩れ、世界そのものが終焉へ沈み始める。


その中心で。


そのものだけがなお立っていた。


まるで滅びそのものへ、真正面から噛みつこうとするかのように。

第38話いかがでしたか?


世界が終わるという絶望を目の前にその者はどう立ち回るのか


次回もお楽しみに♪

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