お茶が冷める前に
アイゼルへふっかけます
––屋敷
ザァァァー
依然として雨が降り続いている。
(ピクっ)
「…血の匂い」
ニアが飛び出す。
屋敷の門まで行って帰ってくる。
「ヴァルゼオンが門のところで倒れてるにゃ」
ずぶ濡れになったニアが言った。
まずはヴァルゼオンの手当てだ。
ヴァルゼオンにレイが魔力を分け与えながら屋敷に運ぶ。
幸いミオたちには気づかれていない。
「申し訳ありません主様…エストレアばかりではなく私までも…私が不甲斐ないばかりに…」
ヴァルゼオンが言った。
「あまり、喋らない方がいいかな。だけど一つだけ教えてよ。誰にやられた?」
レイがヴァルゼオンに聞く。
「…アイゼル」
ヴァルゼオンはそう言って目を閉じ、気を失った。
「あぁ、知ってる名前だね…」
レイが言った。
ヴァルゼオンは回復魔法が使えるミリエルとエストレアの二人に任せた。
––翌日、朝
魔導学院
「おはよう、レイ」
学院内では普通の学生を装っているリリスがレイに挨拶をした。
(ビクッ)
リリスはレイのあまりの不機嫌な顔を見て恐怖した。
「あ、おはようリリス」
次の瞬間、レイは元通りだった。
リリスはその顔を見てなんとなく安堵したが、何か起こる事を直感した。
––講義
アイゼルが教壇に立ち学生たちに武術についてこれが最強と伝えている。
武術だけではなく魔法を駆使して戦う今の時代にアイゼルの話に学生たちはまたかという顔をしていた。
そんな時、レイはアイゼルにだけわかる様、明らかな殺気を送り続けた。
「…ちっ」
アイゼルが小さく舌打ちをした。
アイゼルは講義室をゆっくり巡回していき、
最後にレイの元へ。
「一体どう言うつもりだ、無属性。お前も俺の講義がつまらないって言うつもりか?お前は魔法が使えないんだからお前こそ武術しかないだろう。すべての講義が終わったらこの魔導学院裏にこい。俺が直々に鍛えてやる。必ずこい」
アイゼルがレイにだけ聞こえる様に話した。
それを聞いてレイは「わかった」とだけ答えた。
––講義終了後
魔導学院裏、
こちらは各出入り口と異なり人の気配は全くない。
レイが現れるや否や
「よく来たじゃないか、前にもやられてるのによくこれたもんだ」
アイゼルがレイに言う。
「ああ、そうだった。前にもやられたんだったっけ、忘れてたよ、正直あんまり印象になかったからさ」
レイがアイゼルに返した。
「あ?なんだと!?」
アイゼルが言うと同時にレイに向かって突進する。
アイゼルはそのままレイに突っ込む。
レイは吹き飛ばされ転がった。
「げほっげほっ」
咳こみながらレイは立ち上がった。
すかさずアイゼルの追撃。
腹部へ強烈な一撃が加えられた。
レイの体が前方に折れ曲がり少し宙に浮く。
さらにアイゼルの追撃。
宙に浮いた背中めがけて両手を組み地面へレイの体を叩きつける。
レイは動かなくなった。
アイゼルはふと周りを見た。
そこには、黒い集団がいた。
「ふむ、囲まれたか。お前たちが黒十華ってやつらか?この無属性を片付けたら次はお前たちの相手をしてやろう」
アイゼルが言った。
これを建物の陰から様子を見ていた者がいる。
リリスであった。
リリスは気配を感じた。
「あなたも主様に敵対するのかしら」
リリスの背後からエフィリアが話しかけた。
「いえ、私はあんな彼に挑もうなんてバカはしないわ」
「じゃあ、どうしてあなたはここにいるの?もしかしてあなた、主様のこと…」
「いや、ただ気になって来てみただけ…」
(そうよ、私はあの人を目標にしたいだけ…だと思う)
「何せよ要らない事はしないことね」
そう言ってエフィリアは消えた。
そうしている間にレイが苦しみながら立ち上がる。
「この前は、大勢の前で力が出せなかったが今回は全力で葬ってやろう。一人くらいいなくなっても行方不明事件で片付くだけだろうしな!行くぞ––破城盾撃!!」
レイの体が激しく吹っ飛ぶ。
「ぐわぁぁぁぁ」
レイの悲痛な叫び声が上がる。
「見ろ!これがお前と俺の差だ。無属性が生き残れるほど世界は甘くねぇ、せめて来世ではまともな属性を引くんだな」
レイはピクリとも動かない。
「こいつはもう立つこともできない。後わずかで死ぬ。さあ次はお前たちの番だ!かかってくるがいい」
アイゼルが言う。
「バカなやつ」
エルフィが言った。
「お前はあのクラスにいた…お前も、お前もか!」
エルフィに言った後、クロエとニアを見てアイゼルが言った。
「バカとはどういう事だ言ってみろ」
アイゼルが言う。
「私たちは主様の力が漏れて他の者たちに気づかれないようにするためここに存在しているだけ」
クロエが言う。
「何を訳のわからない事を…」
アイゼルがそう言った時、
「優越感には浸れたか?」
レイのその言葉と同時にアイゼルの腹部から刃が二本突き出てきた。
「ぐふぁ」
アイゼルは口から血を吐く。
「俺は最近、ティータイムに淹れてくれるお茶が気に入っていたんだ…」
レイがアイゼルに言う。
「…何を言っている」
アイゼルが言った。
「執事のヴァルゼオンが不意をつかれて刺されたんだ、こんな風に…」
「執事?ヴァルゼオンが?冥府十王だぞ?なぜ無属性のお前なんかに」
「さぁ、あんたの講義がつまらなかったんじゃないの?」
レイは二本の刃を打ち火花が散った。
そして、真っ黒な暗黒の炎が現れた。
「なんだ、それは」
アイゼルが言った。
「これはあんたを焼き尽くす炎さ」
そう言って暗黒の炎を纏った剣でアイゼルを切り裂いた。
「うぉぉぉぉぉぉぉ…」
アイゼルは叫び声と共に暗黒の炎に侵食され焼き尽くされていく。
「さぁ帰ろうか、今日のお茶は何かな」
レイが言った。
今日のお茶はなんだろう!




