第18話
翌朝から5人は村の中にあった店らしき跡を探していく。瓦礫が積み重なっているところはラッセルが大きな瓦礫を取り除き、その中にスミスが入って何かないかを探していく。
「ここは違うんじゃないか、服屋っぽいぞ」
瓦礫の奥に入っているスミスが顔を奥に突っ込んだまま言った。
「とりあえず先入観は捨てよう。時間はあるぞ」
「カイルの言う通りだ。あとで後悔したくないからな」
1軒の瓦礫に2、3時間かけて探していく5人。時々出てくるアイテムはローズが鑑定をする。
「これは女性がファッションでつけるスカーフね。特殊効果は無いわ」
「見てると村人の生活水準は低くはないけど、高いという感じもしないわ」
レミーナとローズは女性視点から品物を見ている。男性陣には分からないが彼女達は売っている服やアクセサリーを見ると大体の生活水準が想像できるそうだ。
「言っても村だからな。村人が華やかな生活をしているとは思えない」
「そうだよな。でも女神は何かあると言ってるんだ。続けるしかないぞ」
そう言ったカイルだが内心ではラッセルの言う通り村人がそんな大事な物を持っているとは思えないと感じていた。
村の中には薬屋があった。そこは時間をかけて5人で探索をする。
「これは普通のポーション、こっちは痛み止め」
テーブルの上に置かれた薬を見ては鑑定するローズ。この日は4軒の店の瓦礫の中を調べたが、どこにでも手に入る物ばかりだった。日が暮れたので村で2泊目の野営になる。
焚き火の周りに座って夕食をとっている時にそれまで黙って食事をしていたカイルがひょっとしたらと言った。全員が食事の手を止めて彼に注目する。
「俺たちは間違った場所を探していたのかもしれない」
「どう言う事だ?」
「どう言う事なんだい?」
スミスとラッセルが同時に聞いてきた。
「うん、今日の昼間瓦礫を探している時にラッセルが言ってただろう。村人が華やかな生活をしているとは思えないって」
その言葉を思い出していたラッセルが確かにそう言ったと言う。他の3人もその言葉を覚えていた。
「それが引っかかってたんだよ。普通の村人が、女神様が啓示で言う様な重要な物を普段から持っていたのかって」
4人はカイルの次の言葉を待っている。
「ずっと考えていたんだけど、今ひょっとしたらと気がついた。この村で探すべき場所は店や家じゃなくて旅館じゃないかなって。旅館には村以外からいろんな人がやってくる。商人、旅行者、ひょっとしたら軍人も。彼らがこの旅館にいる時にスタンピードに遭遇していたとしたら?」
全員があっ!と声を出した。
「そうなんだよ。スタンピードがあった時にこの村にいた誰かが貴重な何かを持っていたのかもしれない。そう思ったんだよ」
「言われてみればカイルの言う通りだ、ここは宿場町っぽいしな」
「村の住民じゃなくて旅行者だったのね」
「まだ決まった訳じゃない。でも村の店や村人の家の跡を探すよりはずっと可能性が高いと思う。まず旅館を探してみて、そこで見つからなかったらもう一度村人の家を探さないか」
カイルの言葉で明日からの方針が決まった。宿は3軒ある。明日1日で探しきれなければ明後日も探す。何かが見つかるまでは村を離れない。
「よく気がついたわね」
食事が終わって水を飲んでいる時にローズが感心した声で言った。彼女がそう言うと他のメンバーも明日も無駄骨になるところだったよと言っている。
「いやいや、まだそうだと決まった訳じゃないから」
「でも考えれば考えるほどカイルの言う通りだと思えてくる」
「俺も姉貴と一緒だ。もうそれしかないぞって思ってる」
「カイルの言う通りだとして、一体何なんだろうな。女神が啓示で言うくらいだから俺たちに役にたつアイテムであることは間違いないんだろうけど」
ラッセルの言葉に皆が思っていることを言い合う。武器だ、防具だ、いや腕輪だ指輪だ。
「指輪、腕輪だったら大きくないからな注意して探さないと」
「時間はある。焦らずゆっくり探そうぜ」
ラッセルが言った。
翌朝から5人は村の中にある3軒の旅館跡を捜索する。3軒とも2階建の建物だが、2階部分も破壊されていて、窓ガラスはなく、壁にもあちらこちらに穴が開いていたり、凹んだりしている。石造りの旅館はまだ形をとどめているが木造の旅館はほとんど倒壊している。
「ローズとレミーナは周辺の警戒を頼む。俺とカイルとスミスで2階からやろう」
「気をつけて」
比較的状態が良い2軒の石造の宿から調べることにした。最初の宿の2階に上がる階段を慎重に登った3人が2階の各部屋の跡を調べはじめた。屋根の一部が落ちている部屋もあれば壁がなくなっていて、地上で見ているレミーナとローズの姿が見える部屋もある。
朝から始めて最初の旅館の捜索が終わったのは昼過ぎだった。何も収穫がなかった。アイテムは一個も見つからなかった。
「午後からは石造りのもう一軒の旅館をしらべよう」
「普通に考えたらお金持ちの人は豪華な旅館に泊まるわよね」
「そう言うことだ。あの3軒の残骸から見ると木造の宿はかなり安普請だぞ」
果実を食べ水分を補給しながら話をする。
休憩をした彼らは午後からもう1軒の石造りの旅館の捜索を始めた。3人は2階に上がるとそれぞれ部屋に入って中を調べていく。
スタンピードから2年以上が経っていることもあり、衣料関係はもうボロボロになっている。
調べ始めて1時間が過ぎた頃、2階からラッセルの声がした。
「腕輪がある」
「持ってきて」
地上からローズが叫んだ。
「スミス、鑑定はローズに任せて、俺たちは引き続き探すぞ」
「了解した」
2階から降りてきたラッセルが見つけた腕輪は回復の腕輪だった。
「これはスミスだな。盾が持つべきだ」
ラッセルが下から2階にいる2人に声をかける。部屋を捜索していた2人が1階に降りてきた。
「ラッセルの言うとおりだな。スミスが装備したらいい」
ローズから腕輪の効果を聞いたカイルはスミスを見て言った。
「分かった」
彼は体力の腕輪を装備しているが、もう片方の手に回復の腕輪を装備する。
「これでローズの回復魔法の回数が減るんじゃないか」
「恐らくそうなると思う」
「カイル、女神の啓示はこの腕輪の事だと思うか?」
聞かれたカイルはラッセルを見て首を左右に振った。
「いや、俺は違うと思う。もちろん回復の腕輪が貴重なアイテムなのは間違いない。でも俺はそれじゃない気がする。何というかもっと皆がアッと驚く物で、俺たちの旅に間違いなく役に立つ物じゃないかと思うんだ」
「となると引き続き宝探しを続けよう」




