第19話
男性3人は再び2階に上がると部屋を調べていく。夕方が近づいてきた頃スミスが声を出した。別の部屋を探していたカイルとラッセルがスミスがいる部屋に入る。彼は手に何かを持っていた。
「この部屋にこれがあったんだけど、魔法袋にしちゃあデザイン、色が違っている気がするんだ」
彼が手に持っているのは5人が腰にぶら下げている魔法袋と似ている袋だ。ただスミスが言っている様にデザインが違う。魔法袋は収納できる量で色分けされていて。小、つまり一番容量の小さいのは白色、中が青色、そして一番多く収納できるのは茶色になっている。ここにいる5人が持っているのも茶色の魔法袋だ。それ以外に青が2つと茶色を1つ予備として持っている。
今スミスが手に持っている魔法袋は黒色だった。しかも茶色のよりも一回り大きい。鑑定してもらおうと3人は2階から降りるとローズに近づいた。
「魔法袋っぽいのを見つけたんだけどさ、色が黒で大きいんだよ。鑑定してくれるかい?」
スミスが持っていた袋を受け取ったローズはえっ!と声を出した。驚愕した顔をしている。
「どうした?これは何だ?」
全員がローズに顔を向けている。しばらくしてから彼女は大きく深呼吸をすると袋から顔をあげた。
「カイルが言っていたあっと驚く物よ、これ」
そこで一旦言葉を切ったローズ。他の4人は彼女の次の言葉をじっと待つ。
「これ、魔法袋じゃない、これはアイテムボックスよ」
「「アイテムボックス?」」
「そう。2度鑑定したから間違いない。これはアイテムボックス。容量は茶色の魔法袋の大の数十倍。具体的な収納量は私にも分からないくらいに多い。なによりも、この袋の中は時間が止まっている。生き物以外は全て収納可能。中で時間が止まっているから腐らない」
「!!」
そんな夢みたいなアイテムが存在していたのかという驚きと、その性能というか効果を聞いて皆声がでない。
「ローズ、つまりこのアイテムボックスに食料や水、果実を入れておくとずっと腐らないって事だよな?」
「そう。冷たいのは冷たいまま、暖かいのは暖かいままで取り出すまで永久に保存できる」
「女神様の啓示はこのアイテムボックスを探せと言うことだったんだな」
ラッセルが言った。
「使い方は魔法袋と同じみたいね」
「とんでもない物が出てきたね」
「でもさ、姉貴、これで移動がずっと楽になるぞ」
レミーナとスミスのやりとりを聞いている他のメンバー。
「ローズ」
カイルがアイテムボックスを手に持っているローズに顔を向けた。
「その中に入っているものは取り出すまで永久に保存されている。そう言ったよな?」
「その通り」
ローズが答える。
「いま、その中に何が入っているのか分かるか?」
「「なるほど!」」
皆感嘆した声を出した。
「分かるわよ」
ローズはそう言って袋の入り口に手を入れた。しばらくそのままにしていた手を抜くと4人を見る。
「水、食料品、着替え、書類が入ってる。あとは今はあまり意味がないけどお金もあるわ」
食料品、水があると聞いて全員の表情が明るくなる。ローズが確認したが使い方は魔法袋と同じで、袋に触れながら収納したいものを手で触れると勝手に中に入る。取り出す時はゆを袋の中に入れると収納されているアイテムが脳裏に浮かぶのでその中から取り出したいアイテムを念じれば良い。
日も暮れてきたので教会で具体的にチェックしようと5人は捜索を終了し、教会に戻ってきた。
まずはお祈りだ。女神像の前で跪いて祈りを捧げる。
「何も言わなかった」
「つまり正しいってこと?」
ラッセルとレミーナがそう言うとカイルに顔を向ける。
「今までの例から言えば、間違っていない時は啓示が出ない。なので多分アイテムボックスを探せという啓示だったんだと思う。でも一応明日も探そう。宿を全部探してからもう一度祈りを捧げないか?」
「全部探すのは賛成ね。後悔したくない」
「俺もローズに賛成だ。明日もやろうぜ」
スミスとレミーナにも異論はないので明日も引き続き旅館を捜索することになった。明日の予定はこれで決まった。となると次やることは、アイテムボックスの中身のチェックだ。教会の中に残っているテーブルを集めて大きなテーブルを作った。
「この上に乗りきらないかもしれないけどな」
「とりあえず出すわね」
テーブルの上に次々とアイテムボックスの中身が置かれていく。冷たい水や果実汁、それに湯気を立てている鹿肉や新鮮な野菜が並べられた。金塊や現金も積まれている。ローズによると水と食料品はまだ中に入っているそうだ。
「テーブルに出しただけでこの量だ。俺たち5人でも相当持つぞ」
並べられている料理を見てラッセルが言った。
「これだけで5人で2ヶ月分以上はあるな」
「これ以外にまだ中にあるんだろう?」
「そう」
今日はテーブルに置かれた料理の中から夕食を選んで食べることにする。果実汁も取り出した。残りの食料はアイテムボックスに戻す。
「まともな食事はローズの故郷のアルバートン以来だな」
「本当、美味しいね」
皆久しぶりの料理に感激している5人。
「それにしてもアイテムボックスはすごいな。出来たばかりの食事だぞ、これ」
「これから途中で果実の実や綺麗な水があればどんどんアイテムボックスに放り込んでいこう」
「そうだな。野営の時もあるだろうしな」
「この持ち主は商人さんだったみたい。中に入っていた書類を見ると契約書とか注文書なの。お金持ちの商人ね」
ローズは食事をしながらアイテムボックスに入っていた書類に目を通していた。あちこちから仕入れをして地元の街で販売をしていた様だ。アイテムボックスがあるから仕入れも楽だったのだろうと推測できる。
「商売で出かけている時にスタンピードに出会ったのかな」
「それで出来るだけ食料や水を集めて旅館の2階の部屋でやり過ごそうとしたのだろう」
ラッセルとカイルが話をしている。
「でもスタンピードの威力はこの商人の想像以上だった」
2人に続いてスミスが言った。頷く4人。ここにいる4人はスタンピードの生き残りだ。あの時の規模、そして恐怖は皆が実感している。
「この商人以外にも大勢の人が亡くなった。彼らのためにも黒幕を探してやっつけないと」
そう言ったカイルがローズに顔を向けた。
「そのアイテムボックスはローズが持っていたらいいと俺は思うんだがどうかな?」
「いいんじゃないか。一番しっかりしてるしな」
ラッセルが言うと皆もそれでいいと言う。
「そうそう。ローズが持っていれば安心よ。ラッセルに持たせたら戦闘中にぶん投げそうだし」
「おい!」
レミーナの言葉に全員が笑った。
「分かった。肌身離さず持ってるわ」
「「お願いします」」




