家族
「父上……母上……、私は、私は!」
「アルシー、落ち着きなさい」
ドルイは話を遮った
「父上……」
「アルシー」
アーシャはそういいながら彼女の肩に手を置いた
「母上……」
「前世の記憶が残っていながら我々の事を親と認めてくれる、それだけで私たちはアルシー、我々はね、君を愛することができるのだよ」
「そうよ、貴方は私が生んだ私の娘……その事実は変わらないわ、それにドルイの言った事がすべてよ」
アルシーは泣きながら
「ぐすっ……こんな、こんな不気味な子供が父上と母上の子供でごめんなさい……」
そう言った瞬間、アルシーの頬に衝撃が走った
「え……?」
「アルシー! 何故謝る! 君は自分が悪いと思っているのか!」
ドルイはアルシーの頬を平手打ちしていた
「ど、ドルイ、どうしたの!」
ドルイの急な変貌ぶりにアーシャは驚いたが
「黙っていろ! アルシー、前世の記憶があるなら理解できるだろうから話してやる、俺とアーシャの間にはな!」
ドルイがとある話題を話しそうになったので、顔青くして……
「ドルイ! やめて!」
と叫んだ
だが……
「子供ができないと言われていたのだ!」
ドルイは止まらなかった
「ドルイ……」
「え……、それじゃ、私は……、え?」
アルシーは理解できてしまった
”不妊症の両親の間にできた子”
それが何を意味するのか。
このような世界において子供ができるできないがどれほど大事なことなのかということはアルシーは知っていた。
その上で、子供ができないと告げられた時の二人の気持ち
そして、それを覆し、子供ができたという二人の気持ち
それを理解できた
「その顔は理解できたということだな」
ドルイはアルシーがその答えにたどり着いたことを感じでいた
「……」
「私とドルイは諦めていたわ、自分たちの子供を持つという未来を」
アーシャも諦め、その時の事を話し出した
「だけど、アルシー、アーシャが君を身籠ったとき、私たちは神に感謝した、そしてこの子がどんな子であっても我々はこの子を愛すると誓った」
「大事な世継ぎだというのもわかるよ、でも、それだけで……」
「それだけだよ、唯一絶対の真理、それは君が私たちの娘だからだよ」
「そうよ、それだけ、だけど、それが一番大事なことなの」
「…………ひっく、そんな事言われたら、泣くしかないじゃないか」
「「アルシー……」」
「怖かった、事実を話せば父上と母上が私を見捨てるのじゃないかと考えるとどうしようもなく怖かった。ルナンは私のメイドだと割り切っていたし、私の専属メイドだったから固く約束すれば父上と母上にこのことが伝わることはないと思っていた。でも、いつかは話さないといけないでしょ? そしたら、今日、真里菜さんと女王様に呼ばれて……」
「女王様とマリナ殿? 今日の昼の話か? アルシー、どういうことだ?」
「私が、前世の、いや異世界の記憶というか知識を持っているということに気付かれて呼ばれたみたいだった」
「異世界? アルシーそれは……」
「……ドルイ、貴方は知ってる筈よ、真里菜がこの世界の人間じゃないって話を」
「しかし、あれは噂では……」
「私は真里菜と一緒に居ることが多かったから、聞いたのよ、彼女がこの世界の人間じゃないって」
「ではマリナ殿はアルシーの事を知っていたのか?」
「いや、話した感じだと私と真里菜さんは接点はなかったと思う、だけど、同じ故郷を持っているということは伝わったの」
「同郷……ということはアルシー、貴方はニホン人だったのね」
「はい……」
「そうか……まあその話は今はいい。最後に一つだけ聞かせてくれないか? これで今日のことはおしまいだ」
「はい」
「前世での君の性別は何だったのだ?」
「…………」
アルシーは思った
”最早、確信犯である”と
「父上、その質問は意味を成しません」
「ん?」
「そう、聞く時点で既に答えは父上の中にあると思います」
「やはりそうだったか」
「…………はい」
「ドルイ、どういうこと?」
一人理解できていないアーシャ
ルナンは既にその事に関して疑いを持っていない
「アルシーの前世は男の人みたいだ」
「あら、それって……アルシー大変だったわね……」
アーシャはあらあらという顔をしていた
「母上……」
アルシーは二人がというかアーシャがもっと驚くと思っていたのだが、その予想は外れていた
「それが事実だとしても私たちは君を女の子としてしか扱えない……」
「それは大丈夫です、この5年の間にある程度の覚悟はできてますので」
「そうか……」
アルシーの覚悟というか諦めはドルイに伝わった
そんな空気を
「さあ、こんな辛気臭いのは止めにして、ご飯にしましょう!」
アーシャは話の話題を変えた
「そうだな、俺も腹が減ったぞ!」
”ぐーーー”
緊張が解けたのかドルイのお腹からは少々下品な音が聞こえた
「もう、父上! はしたないです!」
「む、これは不可抗力なのだ」
「へへへ」
”ありがとうございます、父上、母上”
アルシーは心で両親に感謝した
この日、アルシー家は本当の家族となったのだった




