同郷の同志
アルシーが案内された部屋には既にもう一人女性がいた
「アルシーちゃん、こちらが現カロム王国女王のエリザベーラ2世よ」
「え! え! あ、ああ、これは失礼いたしました! 私、ジャンヴァルディ候長女のアルシーと申します。」
「ふふ、マリナ、あなたの予想は当たりのようね」
「ええ、もう確信していますので」
(な、なんのことだよ!)
アルシーには彼女たちの考えがまるで分からなかったので目の前の二人をポカンと眺めることしかできなかった
「あ、そうよね……マリナ、アルシーちゃんに何も話していないわよね?」
「勿論です」
「ほとんどの人が知らない秘密ですものね、噂程度には広まっているけれども。話していいわよね?」
「はい」
「アルシーちゃん、マリナの本当の名前は入間真里菜って言うのよ、聞き覚えあるかしら?」
女王はアルシーにとって非常に懐かしい文字で彼女の名前を書いていた
「いるま……まりな……、まさか……日本人、でも……」
「そうよ、だけど可笑しいわね、どうして5歳の貴方が知っているのかしら? 日本人という言葉はこの国の文献には出てこない物よ。 そこでなのだけど……貴方は何者?」
アルシーは”しまった!”という顔をしたがもう遅かった。
(この二人、確信犯だな……どこで不信感を抱かせたのかはわからないけど、感づかれたのが運の尽きか……騙せる気がしねえし、仕方がない)
「あー、仕方ない。 おそらく貴女達が思っている通りだ。 初めまして、安見安吾と言う。 真里菜さんとは十中八九同郷の人間だった者だ」
「え? 男の方なの?」
真里菜が驚いたように安吾に聞く
「自分も驚いた……、20XX年までしがないサラリーマンだったんだけどな、気が付いたら赤ん坊。しかも女の子になってた……」
「20XX年ね……まあ私がこっちに来て既に10年程経ってるしね」
「ちなみに死んだときは20歳だった」
「ちょっと待って? 今5歳よね? じゃあ実質25歳?」
「まあ、俺という人格が生きた期間に限るけどな……」
「精神年齢だけどあまり変わらない……私は今28歳よ」
「18でこっちに飛ばされた?」
「ええ、まあ、姫様とヴァレンスのお蔭で何とかやってこれたんだけどね」
「いろいろあったみたいだな……」
「まあ、今を楽しく生きていられているからもう昔のことよ」
「あー、俺も少しは気が軽くなったよ、仲間がいるとわかったからな」
…………
「ちょっと! 二人で盛り上がって私をお忘れではありませんかしら!」
「「あ」」
「あ、とはどういうことですか!」
「「すみません」」
「どうして、そんなに息が合うのかしらね……」
「「……だって」」
「……」
「息が合うのは必然よね?」
「ああ」
同じ日本人、大体の考える事は似ていた
「まあ、いいわ」
「あの、自分は何故この場に呼ばれたのですか? 真里菜さんと同郷とかいう件は俺と真里菜さんだけでもいいと思いますが」
アルシーは口調を戻した
「ええそうね」
「…………」
「安吾さん、姫様がここにいるのは、単に好奇心よ」
「アグレッシブな姫様だな……」
「ほんとにそうよ、前はもっと凄くて大変だったわ……」
「そういえば聞いたよ。 真里菜さんは親衛隊の隊長だったらしいね」
「そうなのよ、だから、姫様の尻ぬぐいも私の仕事だったのよね」
「心中お察しいたします」
「あら、ありがとう」
「…………貴方たち、故意よね、故意に私をないがしろにしているよね?」
「いえ」
「そんなことは」
「「ありません」」
「あるだろ!!!」
妙なところで息の合う二人
「安吾さん、貴方まさか」
「真里菜さんこそ、そのノリは」
「だからなんなのよ貴方たち!」
まあ、安吾も真里菜もこの世界の生活に慣れているため(というか言語体系が実は違うため)とある方言は心の声でしか発動しない
「同郷の同士だったという確認です」
「ふふ、そうね」
「もういいです、疲れました……」
「安吾さん……」
「そうですね」
「「からかって、ごめんなさい」」
「お前らああ!」
何とも騒がしい3人組である
というか、この二人、一国の王に対して何とも恐れ多い事をしているという実感はあるのだろうか?
まあ、この女王がそういうことに無頓着であるということを真里菜は知っているが故だろうが。
「安吾さん、いえこっちの世界じゃアルシーちゃんの方がいいわね」
「本当はそれ、むずむずするんですけどね、それでお願いします」
若干苦笑を浮かべるアルシー
「分かったわ、女王様もいいですよね?」
「ええ」
ちなみに切り替えの速さが女王の売りである
「では、会場に戻りましょう」
異世界人であるマリナ
この事実を知っているのはカルム王国現女王のエリザベーラ2世とヴァレンスとアーシャだけである
真里菜はアルシーのような生まれ変わりではなく、迷い人と言われている
元の世界から死なずにこの世界に迷い込んだ、こちらでいう神隠しに逢ったもの
ちなみに最初に彼女とであったのがヴァレンス(馴れ初めである)
そしてヴァレンスを評価していた現女王エリザベーラ2世の目に彼女が止まり親衛隊として迎えいれられた
故に女王に評価されていたヴァレンスの地位がそれなりに高い地位にあるのは不思議ではない




