第1話「1972」
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「What the hell are we supposed to do with these girls?(なあ、これからこの子たちをどうするつもりだ)」
「I don't know. We still haven't reached a political agreement with the Japanese government.(分からない、日本政府との政治的合意がまだ取れていない)」
米軍病院の地下。規則的に並ぶ白い蛍光灯の下、研究員たちの言い争いは紛糾する。
これは議論ではない。なぜなら答えが出る見通しは全く立っていないからだ。ただの言い争いと言っていい。
「Higher command ordered us to withdraw with all classified documents.(上の人間は全ての機密文書と共に撤収せよと言っていた)」
「But that would mean...(だが、それでは……)」
白衣を着た研究員の何人かが彼女たちを見る。
「Poor things. They don't even have a sense of self yet. They can't think for themselves... and now they're being dragged into the political arena.(ああ、可哀想に。この子たちには自我も、思考もまだ何もないというのに……政治的な舞台に放り出されてしまうんだね)」
視線の先にいる少女たちは動かない。呼吸はしている。瞬きもする。だが、彼女たちはただベッドに横たわって点滴を打たれている。
2つの部屋、12床のベッドに寝かされた少女たち。彼女たちには特殊な機器が幾つも取り付けられ、常に脳波を測定されている。
棚に収められていた研究資料は次々と取り出され、箱に詰められ、どこかへ運び出されていく。それはまるで、何かを隠したがっているようだった。
「They'll eventually develop a sense of self, just like any other human being. And then there's their abilities... Can the Japanese government really take responsibility for them?(彼女たちはいずれ人間さながらの自我を手に入れるわ。それに、あの能力だって……。日本政府は本当に彼女たちの責任が取れるの!?)」
「Enough. They're nothing more than research subjects. Besides, they should consider themselves lucky they weren't terminated. Don't get any more attached.(やめろ、あれはただの研究対象だ。それに、処分されなかっただけマシじゃないか。これ以上、肩入れするのはよせ)」
白衣の人間は何人か抵抗の素振りを見せたものの、迷彩色を纏った男たちに無理やり連れて行かれてしまった。
「Orders from the commanding officer. Take everything.(指揮官の命令だ。全て持っていけ)」
入れ替わり立ち代わり、どれだけの人間が出入りしたかは分からない。だが、激しい口論や軍靴の音は3時間程度で収まり、その後は白い光と電子音だけがこの場を支配した。
――――――――――
1週間ほど後になって、別の人たちがこの病室を訪れた。彼らは白衣ではなく、皆スーツを身に纏っていた。
「これは……」
眼鏡をかけた男がつい驚きの声をあげる。
残されていたのは12人の少女。加えて最低限の生命維持装置と、それぞれのベッドに付けられたネームプレートだけ。
そこにはそれぞれこう書かれていた。
『Ishikawa』
『Gushikawa』
『Katsuren』
『Yonashiro』
『Yomitan』
『Kadena』
『Chatan』
『Misato』
『Koza』
『Kita-Nakagusuku』
『Nakagusuku』
そして――
『Ginowan』
と。




