第一話:悪夢からの旅立ち
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『人工の朝焼けの欠片』をお届けします。
ダークファンタジーな世界観と、主人公フラスカの成長を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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耳を劈く咆哮。折れ散る樹木の悲鳴。炎に包まれる家々と、母の最後の叫び——。
「っ……!」
フラスカという名の赤髪の少女は、短い悲鳴とともに跳ね起き、またしても悪夢から目を覚ました。荒い息を整えながら胸に手を当てる。
ほぼ毎日、私は同じ夢を見る。ほぼ毎日、あの悪夢を何度も、何度も追体験しているのだ。古代の魔物によって、両親を奪われたあの日の悪夢を——。
彼女は静かにベッドを抜け出した。まだ寝ているおじさんを起こさないよう、足音を殺して洗面所へと向かう。
鏡の前に立ち、身だしなみを整え始める。まるで揉みの木の枝のようにあちこちに跳ねた、長くてボリュームのある赤髪を丁寧に梳かしていく。鏡に映る自分の瞳は疲れており、どこか悲しげだった。
今日は彼女にとって、とても大切な日であり、同時に少し切ない日でもあった。
最近14歳を迎えた彼女は、いよいよ一人立ちの旅に出なければならなかったのだ。
本当は、優しいおじさんの元を離れたくはなかった。あの恐ろしい魔物から必死で逃げ延び、道端に倒れていた自分を拾ってくれた人。身寄りのなかったおじさんは、フラスカを実の娘のように受け入れ、その心にあるすべての愛と温もりを注いでくれたのだ。
引き取られた当時でさえ決して若くはなかったおじさんは、年月とともにすっかり体が弱り、今ではすっかり年老いてしまっていた。フラスカはできる限りの手助けをしようとしたが、おじさんはいつも「大事ない」と言って彼女を宥めた。
愛しているからこそ、尊敬しているからこそ、そして一人にしてしまうのが怖いからこそ——彼女はここを去りたくなかった。しかし、おじさんは「お前のためなんだ」と強く背中を押したのだ。
旅の支度を整え、彼女は育ての親であるおじさんとともに、家の敷居をまたいで立っていた。
「おじさん……立ち去るよう背中を押してくれたのはわかっているけれど、私、絶対に帰ってくるから! 約束する。おじさんのことや、してくれた優しさは絶対に忘れないよ。だからお願い、もし体調が悪くなったらすぐに手紙を書いて。私、飛んで帰ってくるから!」
「何を言っているんだ、フラスカ。この老いぼれなら大丈夫だ。お前は自分のことだけを考えて、どうか気をつけて行くんだぞ」
そう言葉を交わすと、二人は最後に強く抱きしめ合った。そして腕をほどくと、フラスカは森へと続く小道を歩き出し、遠ざかるおじさんに向かって、いつまでも手を振り続けた。
村を完全に離れた瞬間、彼女の目から涙があふれ出した。こんなに悲しそうな顔を, 誰にも、特に大好きなおじさんには見せたくなかったのだ。必死に涙を拭おうとしたが、溢れる雫は止まらなかった。
それから約半年間、フラスカは森や村々を渡り歩き、時にどこかの村に留まりながら、一人立ちの生活を学んでいった。彼女はどんな時も手を差し伸べ、誰に対しても優しく親切だった。人々は「どうしてこれほどまでに無私で、優しくいられるのだろう」と感嘆した。
けれど彼らは知らなかったのだ。誰かを助けることだけが、彼女を死の淵から繋ぎ止めている唯一の理由だということを——。
両親を失ったあの日、小さく無力で何もできなかった自分に、彼女は強い罪悪感を抱いていた。けれど魔法を学び、少しだけ大人になった今、彼女はついに「人を助ける力」を手に入れたのだ。それこそが、彼女が心から望んでいたことだった。
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