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就職に有利です

今回は短いです、すみません。(いつもくらい書いてたつもりだった模様)

「っ、やっぱり加減が難しいな」

 流石A級という言葉がつい口から出る。俺が行使した魔術は、筋力強化の最上位魔術で全身の筋力を強化するモノ。本屋を出たところで不愉快なアレが俺を掴んだ時に使った魔術の上位互換にあたるモノだ。

「それでも初回みたいに重りを天井にぶつけそうになったり尻もちはつかなくなったじゃないっすか」

「それはそうなんだが……使うべき時に使うとなると、これはちょっと厳しいぞ?」

 魔術の効果を終わらせてしまえば、手にした重りは今の俺では支えきれない。最初触れた時冷たさを感じた鉄の塊は胸の高さから落とせば俺の足を潰すくらい訳ない重量がある。

「バカみたいに巨大な重量武器を扱うにはこの魔術は必須だからな」

 過去の英雄にはそう言った武器を素の筋力で扱ってた化け物もいたらしいが、魔術の発達した現在では巨大武器を扱うのは魔術と武術を両方修めた魔術剣士が殆どだ。

「本来なら使ってみようとも思わなかった高等魔術だが、この機会、活かさないわけにもいかないだろう」

 プレスではないが、できればこの魔術はモノにしておきたい。そんな気持ちが俺にもある。

「肉体強化系の魔術が使えると肉体労働系の職場では待遇が良くなるらしいからな」

「え」

 魔術剣士科に進めなかった俺がこのまま卒業した場合、普通の魔術師求めてるような場所に就職できる見込みは薄い。となると最悪、学歴を問わない肉体労働系の仕事しかないかもしれないが、その手の職種では肉体強化系の魔術を会得しているだけで待遇が全然違ってくるのだ。

「まぁ、二人がかりで持ち上げる資材を一人で運べたりすれば、実質二人分の労働力だしな」

「先輩……今までが今までだったみたいっすからアレっすけど、A級魔術使えるならそれこそ仕事先はよりどりみどりの筈っすよ?」

「なっ」

 横合いからの指摘に、俺は思わず重りを持ったまま振り返る。

「本当か?」

「『本当か』も何も、A級使えるのってよほど才能に溢れた人でもなきゃ、卒業間近でパートナーの補正アリでも二割も居ないっすよ?」

 もっと良い待遇の仕事がいくらでもあるとプレスは言う。

「ふむ。以前の俺だと全く身の丈に合わなかったからな」

 全く知らなかったが、まだ四年生でB級魔術を扱おうとしているプレスなら卒業までには手の届く範囲内ということか俺より詳しく。

「それはそれとして、もうこっちも随分なれたんで、先輩、触媒取りに行ってもいいっすよ?」

「っ、そうか」

「ええ、今なら補正抜きでも行けそうな気がするし、実際補正抜きで扱えるか試してもおきたいんで」

 お気遣いなくという後輩に俺はすまんなと軽く頭を下げて重りを置き、踵を返した。


◆◇◆


「さてと、急ぐとなると脚力強化だけでも使いたいところだが」

 今の俺では制御できるかに疑問が残るし、廊下は走ってはいけないモノだ。

「構わず走るのはあの生き物ぐらいか」

 自分の都合しか考えないが故に廊下を馬より早く駆け、走らないようにしつつ急いで追いかけた俺を遅いとなじるのがあの生き物だった。

「半面教師という意味では役に立ってたんだな」

 思い返して複雑な気持ちになりながら俺は廊下を進み。

「ちょっと、実技実習室が空いてないってどういうことよ?!」

「噂をすればなんとか、か」

 事務室の方からの聞き覚えのある騒音に、俺は幼馴染について思い出したことをかなり後悔した。


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