緊急入院&術後1日目
午前中にお姉ちゃんのお見舞いに出掛けました。
「お姉ちゃん、おはよう」
「おはよう」
「どう?」
「う~ん、こんな感じ」
「いやいや、どんな感じよ」
「夜中に尿量が少ないとかで点滴2本だったんだよ」
そうなんだ。点滴パックを確認すると、予定経過時間が書いてあり実時間も記載してある。何?この開きの差。何気に点滴落下を見たら?? 滴落ちてなくない? 薬液入ってないじゃん。
「お姉ちゃん、点滴落下してないよ」
「えっ? どうしたらいいの?」
「ナースコールじゃないの」
「よつ葉なら原因わかるんじゃないの?」
「免許ない人に処置させないでよ。捕まりたくないわ」
「よつ葉が、チョイチョイってできたら忙しい看護師さん呼ばなくてよくない?」
「いやいや、だからね、よつ葉はまだできないんだよ」
「役にたたないね」
「悪かったわね! 早くナースコールしなさいよ」
「はいはい、押したわよ」
『はい、どうされました?』
看護師さんの応答がありました。
「点滴が」
「終わりました?」
「いえ、まだなんですけど……」
なんかイライラするこのやり取りに、思わず
「点滴パックはまだ半分ほど残っていますが、薬液の落下がありません。確認お願いします」
思わず、口出ししてしまいました。
「わかりました。今行きますね」
「よつ葉、手慣れてるね!」
「状況説明しただけだけど」
「看護師に足乗っけてるもんね」
こんな会話をしていたら看護師さんが来てくださいました。
「おはようございます。お願いします」
そう声をかけました。
「おはようございます。連絡ありがとう」
「いえ、お願いします」
点滴の根本の部分の管が、折れていたようで落下が止まっていたようでした。
「これくらいなら、妹ちゃんにしてもらっていいわよ」
「命の危機を感じるのでやめておきます」
「これに気付いてくれたの妹ちゃんじゃないの?」
「それとこれとは別ですよ。よつ葉は素人ですから。命は大切にしなくちゃ」
「あはは……昨日も頼もしかったわよ」
「覚えて無いから無効ですよ」
どういうこと?!
絶食のお姉ちゃんの目の前で、おやつ食べてやるんだからね!! 覚えておきなさいよ! いやいやちょっと待てよ、倍返し怖いなぁ。止めておこう。(小心者のよつ葉)
お昼過ぎたら、離床を予定しています。
おしっこの管を抜いて、トイレは自身で行くようにしましょうね。と言うことだった。
早期離床は、今では当たり前に行われている。痛いだろうになぁと思うけど、いつまでもベッド上安静というわけにもいかないので術後早期離床が推奨されているのは実習先の病院でもそうだったし、講義でもそう習っていた。実践されているんだなぁと実感する。
薬が処方されていますので、今から飲んでくださいね。と言って1回分の薬を渡された。絶飲食だったので水もお茶もない。指導看護師さんが咄嗟に
「水道水で良かったらナースステーションから持ってくるよ」
と言ってくださいましたが、姉が
「よつ葉、売店に行って水買ってきて」
「わかった。行ってくる」
そう言って、病室を出て売店までの長い道のりを水を買いにでかけました。売店で水を買い病室に戻る。しばらくして看護師さんが来て「○○」は、ありますか?と、聞かれ無いことを伝えると「下の売店で購入してきてください」と言われました。
今、水買って戻って来たばかりなのに、また行くの? もう少し早く教えてもらってたら、水と一緒に買ってきたのに……と思いながら病院ではよくあること……と思いながら今来た道を戻り売店へ行く。そして本日2度目の売店。看護師さんに言われたものを発見する。
ん? サイズ?!
んーーーーーー?!
よつ葉より大きいサイズだよねぇ?!
じゃあ[M]サイズでいいかっ!
マジックテープタイプって言ってたよね?
えっ!! 紐タイプのものとお値段が雲泥の差なんだけど!! マジックテープタイプのって言ってたしなぁ……。仕方なくマジックテープタイプのお高い方のMサイズのモノを持ちレジに並ぶ。
売店からの帰り道、携帯を取り出しメール画面を開く。よつ葉の愚痴メール【この2500円の請求は誰にしたら良いの?】と送られたお気の毒な方からの返信【もちろん じ・ば・ら】に笑えて、切ない気持ちが仕方ないなぁ。お姉ちゃんのためだもんね食費削ればいけるかな。と思えました。この一通のメールに救われました。明るく病室に戻り
「お姉ちゃん、サイズってMで良かった? Lサイズに変えてもらってくる?」
と笑って言うことができました。
「これでいいよ。よつ葉なら子供サイズだろうけどね」
一言多いなぁ……。まぁ、痛い痛いばかり言われるよりマシかっ。
あっ、おしっこのパックが外れてる!もうすぐ離床で歩く練習するんだって。
看護師さんが来て、いよいよ離床のお時間です。この病院ではスリッパなどは禁止でスニーカーなので靴下を看護師さんが履かせてくれてたんですけど、苦労してます。よつ葉はおとなしく家族を演じます。口出しせず見てお勉強です。
あっ、強引に履かせてる!
思わず姉と顔を見合わせ笑ってしまいました。
そしてベッドの高さを一番したまで下げて、ゆっくりゆっくり動く姉に、お手伝いのつもりだったんだろうが、足をクイッて引っ張るので、姉の「痛っ」が響く。看護師さんの「ごめんごめん」に緩いなぁと思う。これ、相手が悪かったら、怖いことが起こっていそうな事案だなぁと密かに思っていた。
点滴スタンドを連れて、ゆっくりゆっくり歩く。
まだドレーンが入っているのでパックをいれるポシェットをたすき掛けにしていた。
ふと思う。このポシェット誰が作ったんだろう?明らかに手作り感100%でした。いずれ解決したいと思います。
久しぶりにお姉ちゃんとゆっくり話せました。よつ葉のこと。お姉ちゃんのクラスの様子。そしてよつ葉の過去問題集の丸つけを楽しそうにする姉に、これほど丸つけが似合うのは姉しか居ないだろうなぁと思うほど昔から姉はよつ葉の採点をしたがる。挙げ句の果てに、問題集と答えの冊子を両手に持ち、よつ葉に問題を出してくる。
「連続10問正解したら合格ね。間違えたらもう一度やり直しだからね」
そう言われて始まった、姉の地獄の勉強会。
「ぶっぶー、不正解です。後3問だったのにね。やり直しです」
これが昨日手術を受けた人なのかと思います。
点滴交換に来た看護師さんが、優しいお姉さんね。と笑っていたら、容赦なく看護師に
「よつ葉にこれが現役よ!ってところを見せつけてやってください」
と、無茶ぶりをされた担当看護師さん。
「看護学生さんの前で恥かけないわね。かっこいいところを見せなくちゃね」
「2100問あるんですが、何問目が良いですか?」
「じゃあ、777問目!」
お姉ちゃんが問題を読み上げる。
Aちゃん(8歳、女児)は、白血病(leukemia)の終末期で入院しているが、病状は安定している。両親と姉のBちゃん(10歳)の4人家族である。
Aちゃんの家族へ看護師が伝える内容として適切なのはどれか。
1.「Aちゃんは外出できません」
2.「Bちゃんは面会できません」
3.「Aちゃんが食べたい物を食べて良いです」
4.「Aちゃんよりもご家族の意思を優先します」
5.「Aちゃんに終末期であることは伝えないでください」
「私さぁ、小児は苦手だからなぁ。末期と言うことを考えたら<3>でしょ」
「正解です」
「ほらほら! 私小児でもいけるね!」
「現役の看護師さんには簡単すぎましたよね」
「いやいや小児なんて看護学生の実習しか無いからね」
お姉ちゃんに捕まってしまった看護師さんでしたが、お姉ちゃんと楽しそうによつ葉の問題集を見ていて恐ろしいことを考えたようです。
「それじゃあ、現役看護師からの1問~~♪」
「えっ? 無理無理」
「国家試験対策よ♪」
そう言って、問題を読み上げる看護師さん。
創傷の治癒過程で炎症期に起こる現象はどれか。
1.創傷周囲の線維芽細胞が活性化する。
2.肉芽の形成が促進される。
3.滲出液が創に溜まる。
4.創の収縮が起こる。
5.上皮化が起こる。
「さぁ、何番?」
と、姉が答えを促す。
「ちょっと簡単すぎたわね」
「答えは3番です」
「うん、正解」
「試験が明日でも、いけるんじゃない?」
「いやいや、もう少し勉強しないと」
「いやぁ~ね、能ある鷹は……ってやつ?」
と、言い残して散々よつ葉をイジって遊んでナースステーションに戻っていった。ゆったりした時間が流れ、夕食の時間になった。
手術後初めてのご飯!
昨日の朝にヨーグルト食べて以来のご飯と喜んでいました。お粥だけかと思いきや、おかずあるじゃん!! 固形物!! お姉ちゃんの夕食の内容も見たことだし、お姉ちゃんに合わせてよつ葉もお昼食べ損ねていたし、目の前で美味しそうに病院食食べてるのを、お腹すいたよつ葉が見てるのもなんだから、
「お姉ちゃん、そろそろ帰るね」
「うん。2日間ありがとうね。明日からは学校行きなね」
「うん。わかった」
「ちゃんと国家試験受かりなさいよ」
「頑張る」
「気をつけて帰りなさいよ」
「はぁーい」
夜、病院の正面が明るく照らされているのを初めて見ました。試験で来たときは昼間だったから。
(大きい病院だなぁ……よつ葉ちゃんとできるのかな?)
まじまじと病院見上げたことなかったけど、何だろう初めて足を止めて自分が働くであろう病院全体を見上げて弱気なよつ葉がいました。今は私服。戦闘服(ナース服)を着ると切り替わるのでしょうね。白衣にはそんな魔力があると思う。今回、患者の家族として見た病院を綴ってみました。
近い将来、この病院の廊下をお揃いの白衣を着て颯爽と歩いていたい。
姉の入院で家族側から見た病院の風景や看護師さんとの関わりを記してみました。
姉の入院はまだしばらく続きましたが、大変な時期は過ぎたので大学に戻るよう言われました。確かに、明日から居ても何もすることはないと思う。と言うことで、よつ葉は自分の今居るべき場所に戻りました。
救急外来と入院&手術、そして術後の離床までを付き添い色々と学ばせていただきました。
拙い作品を読んでくださり
本当にありがとうございました。