↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/30

最終章《最後の一カ月の地球で》

今日は2026年10月5日月曜日。

隕石衝突当日。

みんなで徹夜をしたのでとても眠かった。

「あっ、あれ!」

「日の出だねー。」

「最後の日の出だ。」

「あと、三、四時間だな。」

「もう、終わっちゃうのか……。」

「そうだな。」

私たちはただ見つめていた。

大きな太陽を。

あと少しで終わりを迎えることなんて嘘のようだった。

「本当に隕石って来るの?」

「うーん。」

「スマホで速報見てみる?」

「うん。」

〔速報です。隕石衝突まで残りわずかとなってしまいました。当たり前が終わりを迎えようとしています。それでも最後まで笑顔を忘れないでください。〕

「本当に終わっちゃうんだね……。」

「うん。」

「そんな悲しいことばっかいうなって。」

「そうだ!」

「ひーちゃん、どうしたの?」

私はカバンから最後の一カ月ノートを取り出した。

「じゃじゃーん!」

「おお!それで何するの?」

「今までの思いを書く。」

「いいね。」

私たちは海辺に座って、最後の一カ月ノートを開いた。

最初のページには、一カ月前の私の字が残っている。

『隕石衝突まであと一カ月。』

あの頃は、まだ一カ月もあると思っていた。

でも、気づけば今日が最後の日。

「まず、何書く?」

「やっぱり最初は海じゃない?」

「海?」

「うん。最初にみんなで行った場所だから。」

「確かに!」

私はペンを握った。

そして、ゆっくりと書き始める。

『一番最初に、みんなで海に行った。』

その下に、みんなで少しずつ言葉を足していった。

『花火を見た。』

『学校でいっぱい遊んだ。』

『林間学校に行った。』

『付き合った。』

「月斗、それ書くの?」

「大事な思い出だろ。」

「……まあ、そうだけど。」

「ひーちゃん、顔赤いよ!」

「もう……。」

『タイムカプセルを埋めた。』

『隣町を探検した。』

『展望台で星を見た。』

『葵の誕生日を祝った。』

ページが少しずつ埋まっていく。

「……いっぱい書いたね。」

「うん。」

「一カ月しかなかったのに。」

「一カ月だったからこそ、いっぱい遊んだんだよ。」

茜音が笑った。

「ねえ、最後に一人ずつ書こうよ。」

「何を?」

「未来の自分へ。」

「未来の自分?」

「うん。」

私は少し考えてから、ノートに書いた。

『もし、この先も生きていたら。

また、この海に来たい。』

茜音は、

『またみんなで遊びたい!』

月斗は、

『来年を迎えたい。』

葵は、

『また星を見たい。』

それぞれの言葉を見て、私たちは笑った。

「……みんな、同じようなこと書いてるね。」

「だって、また会いたいから。」

「うん。」

そのときだった。

空の彼方から、かすかな光が見えた。

「……あれ?」

「どうした?」

「見て。」

私たちは空を見上げた。

遠くの空に、小さな光が浮かんでいる。

それは、少しずつ大きくなっていた。

「……来た。」

「……うん。」

誰も逃げなかった。

怖くないわけじゃない。

悲しくないわけでもない。

それでも、私たちは手をつないだ。

「最後まで、一緒にいよう。」

「うん。」

「もちろん。」

「約束。」

私は海を見た。

一カ月前と同じ海。

太陽も、空も、波も。

何も変わっていないように見える。

でも、私たちは変わった。

一カ月前より、ずっと大切なものが増えた。

「……楽しかったね。」

「うん。」

「本当に、楽しかった。」

「じゃあ……。」

私は笑った。

そして、みんなに言った。

「また、明日。」

「うん。」

「また明日!」

「また、明日。」

「また明日。」

最後まで、私たちは笑っていた。

――こうして、私たちの最後の一カ月は幕を閉じた。

― 完 ―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。