イーリスは思い通りにならない
「何よ……何がどうなってるのよ…っ!」
アタシは今、寮の自室に帰ってきていた。
校舎裏での出来事がショックで、しばらくの間呆然としていたら、いつの間にか2人がいなくなっていたのだ。
なので、仕方なく自分の部屋に帰ってきて今に至る。
「アタシが知っている二人じゃない…!本当なら、レオン殿下をめぐって争ってるはずなのに…!」
校舎裏にあの女…メアリーを呼び出したかと思えば、何故かヴィサスまでついてきた。
しかも、ヴィサスがメアリーのこと大好きで、争うどころか守っている始末。
アタシが知っているストーリーでは、二人はレオン殿下の事が好きで、事あるごとに衝突を繰り返すような、間違っても親友などではなかったはずだ。
そこに、ヒロインであるアタシが入ってきて、二人の争いに巻き込まれて疲れたレオン殿下のことを癒し、アタシも二人から襲われるところを守ってもらったりして恋を育み、最終的にお互いに惹かれ合ってハッピーエンドになるはず。
「はぁ…それにしても、レオン殿下とのファーストコンタクトは失敗しちゃった……まあ、よく考えたらまだこの世界に来て初めての出会いだった訳だし、最初から馴れ馴れしくしすぎたよね……」
向こうの世界の知識に影響されすぎていた。
こっちではまだ始まったばかりなのだ。
初対面なのにあんなに馴れ馴れしく話しかければ、少し怒られても仕方ない。
それもあって今は少し距離があるかもしれないが、これからいくらでも挽回できるはず。
「それよりも、アタシが知らないストーリーが他にもないか、調べる必要があるみたいね」
すでに、メアリーとヴィサスが仲良しなどという、向こうの世界ではあり得ない事が起きている。
他にも、何かおかしな事がある可能性は十分にあり得る。
「こっちに転生したときに、もっと調べとけばよかったなぁ」
一応、ストーリーが始まる少し前に転生していることに気づいたので、いろいろコネを使って学校に一度来ていたのだ。
そのときは、レオン殿下やメアリーなど、一通りは見ていたのだが、それぞれの人間関係までは気にしてなかった。
どうせ、向こうの世界で知った知識と同じだろうと高をくくってよく確認しなかったのだ。
「今思えば、メアリーとヴィサスが校舎裏で会話しているのを見たとき、なんか仲良さそうな気がしたわね……」
そうやって、よくアタシは思い込みで行動して周りが見えなくなってしまう。
悪い癖だ。
次からは、その辺もちゃんと確認しよう。




