異世界人は突然に 8
「と、とにかく!その人は魔王なんだから倒さなきゃならないの!そこをどいてくれない!?」
「嫌ですが。私のメアに指一本触れさせませんよ」
横を通り抜けて私の方に来ようとするイーリスを、ヴィサス様がガードする。
「くっ!アンタたちなんでそんなに仲いいのよ!普通ならいがみ合っているはずでしょ!?」
へー、こいつの中ではそうなのか。
なんか、こいつの中の私たちに興味湧いてきたな。
「もう!邪魔なのよ!今回はレオン……殿下はいないんだからアナタが拘る理由もないでしょ!?」
「それこそ何を言っているんですか。私にはメアが全てであり、人生そのものです」
「え、ええぇぇ…………」
さすがのイーリスも、ヴィサス様のこの発言にドン引きのようだ。
そして、私も絶賛ドン引き中である。
いくら親友とはいえ、さすがに愛が重いよ、ヴィサス様……
「ア、アナタ…レオン殿下が好きだったんじゃないの…?」
「レオン殿下のことは尊敬していますよ。でも、それはそれ。恋愛と尊敬は違いますよ」
「え…な、なんで……何もかも違うじゃない……」
随分とショックを受けているようだ。
そんなに、自身が知る私たちとは違うのか。
「さて、話も終わったようですね。帰りましょうか、メア」
「え?ちょっ、ヴィサス様!?」
「ヴィー、ですよ?メア」
「ヴィ、ヴィー!ちょっと強引ですよ!?」
私の背中をグイグイと押して、校舎裏の出入口に向かうヴィサス様。
「…ちょっと待ちなさい!アンタたち!」
「……まだ何か?」
出入口に向かう私たちを呼び止めるイーリス。
ヴィサス様は、うんざりした表情で振り返った。
「あのねぇ、アナタは知らないかもだけど、アナタがさっきから庇っているその女、魔王の転生者なのよ!」
おー!転生者のところまで言い当てるなんて、これはいよいよ情報漏洩を疑わないといけませんね。
「……その女?」
……おやおや?なんだか雲行きが怪しいですね?
「え、なに…?なんなの…?」
「…その女じゃない。メアリー様。わかりましたか?」
「え…そこ!?そんなことよりもっと気になるところあるでしょ!?」
「メアリー様。わかりましたか?」
「あ……はい、わかりました……」
ヴィサス様の鬼気迫る勢いに、イーリスも思わず敬語になる。
「って、そうじゃない!その…メアリー様は魔王なの!殺さなきゃまた人類滅亡の危機に__」
「そんなの関係ありません」
「…え……今、なんて…?」
「そんなの関係ありませんと言いました」
「え、嘘……信じないとかじゃなくて関係ない…?」
「はい。メアはメアなので。それ以上でも以下でもありません」
「え、あ…はい……」
まあ、ヴィサス様は私の秘密を知っているからそうなるのだろう。
しかし、ヴィサス様が私の秘密を知っていることをイーリスは知らない。
ヴィサス様の返答に呆然としている。
「……さて、今度こそ話は終わりましたね。それでは行きましょうか」
「え?あ、そうですね…」
イーリスに背を向け、改めて校舎裏の出入口に向かう。
「嘘…信じないじゃなくて関係ない……魔王が復活してもいいっていうの…?そんなのあり得る…?」
イーリスは、呆然と立ち尽くしたまま、何やらブツブツと呟いている。
なんだか見ていて可哀想になってきた。
「メア、気にしなくていいですよ。もう行きましょう」
「ヴィー……」
それから、私たちは振り返ることもせずそのまま校舎裏を出ていった。




