降臨 11
「…すまない、できたら下ろしてもらえないだろうか?」
男が申し訳無さそうに妾に話しかけてくる。
何やら下ろしてほしいみたいだが…
「それだと、あのキングゴブリンに見つかるかもしれん。今はまだここにいたほうがいいぞ」
「それはわかっている。だが、あのキングゴブリンがこれから行く場所は俺たちの国なんだ。放ってはおけない」
裏で、女も何度も頷いている。
「…あいつを止めるつもりか?そなたたちの実力では確実に死ぬぞ?」
「百も承知だ。今、俺たちの仲間が援軍を呼んでいる。あれだけの音と山が一つ無くなったんだ。さすがに異変に気づいて実力者を集めてくれるだろう。だが、やつの速度次第では間に合わないかもしれない」
「…だから、時間稼ぎをしたい、と?」
「そうだ。仮にも俺は狙われている国の王族だ。ここで逃げる訳にはいかない。俺には、国の民を守る責任がある」
そう言う男の表情は真剣そのもの。
…妾にもわかる。
民のために自身を犠牲にするのは、以前自分もやったことだ。
そして、それにものすごく覚悟がいることも。
よく見ると、男の腕が小刻みに震えていた。
やはり怖いのだ。
それでも、国の民のために自身を犠牲にすることを選んだ。
「…いいだろう、気に入った。そなた、名は何という?」
「俺か?俺の名前はレオンだ」
「レオンか、覚えておこう。そなたはなんて名前だ?」
レオンの後ろにいた女に顔を向ける。
「え、私ですか…?私はヴィサスと申します」
「ヴィサスか、わかった。それでは下ろしてやろう__と、言いたいところだが…」
むしろ、今の場所よりもさらに高いところに上昇させる。
「なっ!どうして!」
「そなたたちが気に入った。本当はそなたたち以外はどうでもよかったが、その心意気に免じて、あいつは妾が代わりに処理しよう」
そもそも、あいつが暴走したのは妾に原因があると言われれば、そのような気もする。
決着も、つけたいかつけたくないかで言えばつけたかったし、ちょうどいいと言えばちょうど良かった。




