降臨 12
「し、しかし…!責務を放棄して自分だけ安全なところに逃げるなど…!」
「案ずるな。妾がそなたたちを戦わせたくないだけ。いわば、無理矢理戦えないように妾がしているのだから責任を感じる必要はない」
「だ、だが…!」
「あー、うるさいな。そなたは一旦口を閉じておれ」
「え、ちょっ!ムーッ!ムーッ!」
魔法で口を開けなくしてやった。
とても不満そうな顔をしているが、文句を言われなくなったので良しとしよう。
「さて、ヴィサス」
「え、あ、はい。なんでしょう…?」
「そなたには魔法の才能がある。極めれば、そなたも魔法の頂点に到れるだろう」
「え、本当…ですか?でも、私は誰も守れませんでしたし…そんな私が魔法の頂点になんか…」
ヴィサスとやらは、相当に自信を失っている様子だ。
よほど、目の前で自身の身代わりに人がやられるのを見るのは堪えたらしい。
「本当だとも。だが、今のままではたどり着くのは難しいのも事実。魔法とはいわば【イメージを形にする】技術のことだ。イメージ出来なければ実現することは出来ない。逆に言えば、イメージさえ出来れば大抵のことは出来る。己を疑っては、出来ることも出来なくなるぞ?」
「で、ですが…っ!」
「ああ、言いたいことはわかる。いきなりイメージしろと言われても難しいだろう。まずは一つ、魔法の頂点を見せよう。そうすれば、イメージもしやすいだろうしな」
そう言って、妾はキングゴブリンに向かって下降し始める。
「あ、あのっ!」
「そこで見ておれ!妾のかっこいいところをな!」
ヴィサスの言うことを最後まで聞かずに、キングゴブリンに突撃する。
「キングゴブリン。元気してたか?」
「あ!お前は!すっかり忘れておったわ!」
キングゴブリンの少し上で話しかける。
すると、やっとキングゴブリンもこちらの存在に気づいたらしい。
もうここまで近寄っても気配を感じないまでに知能が低下してしまったようだ。
「本当、嘆かわしいものよ。昔のそなたのほうがもっと可愛げがあったぞ?」
「可愛げだと?そんなものは我には不要!まずはお前から血祭りにあげてやろう!」
その剛腕が、音を置き去りにしてこちらに向かってくる。
___バチバチッ!!ブワァッ!!
しかし、妾の目の前で見えない何かに阻まれるように止まる。
そして、その一瞬後に辺りに衝撃波が広がっていった。
木々が薙ぎ倒され、ホルンピッグが何匹か吹き飛ばされているのが見える。




