降臨 5
「す、すまん!大丈夫か?」
「…っ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁ……」
「あ…圧力が消えた…」
なんとか、女は息を吹き返してくれた。
危うく、自身の手で約束を破るところだった。
男の方も、汗を垂れ流し肩で息をしていたが、今は楽になったのか安堵の表情を浮かべている。
「ほう、やはりその二人は大事なやつか。ならば、その二人を安全に外に逃がしたいならどうすればいいか、わかるな?」
ニヤニヤと、気持ち悪い顔でこちらを見てくるキングゴブリン。
ムカつくが仕方ない。
「…いいだろう、挑発に乗ってやる。後悔するなよ?」
キングゴブリンに向き直る。
そして、殺気は抑えながら静かに魔力を練り上げる。
「…そうだ。そなたらにはこれを」
二人に向かって手をかざす。
すると、二人は半透明の障壁に包まれた。
「妾たちの戦いに巻き込まれては敵わんからな。その中で大人しくしとんだぞ?」
返事も聞かず、キングゴブリンの方に歩き出す。
「一撃で終わるなんてことはさすがにないよな?」
「安心しろ。あのときの我とは違うことを証明してやろう」
妾は、手のひらを上にして右手を胸の前に出した。
すると、そこに光の筋のようなものが集まりだした。
バチバチと何かが弾けるような音が響き渡り、光の筋が通った地面は、焼け焦げたような溝ができる。
「面白い。まずは小手調べといこう」
その光の筋が、そのままキングゴブリンに襲いかかる。
「この程度!我には効かぬ!」
キングゴブリンは、自身の左右に右手と左手を突き出す。
すると、そこの空間が割れ、その中に両手を突っ込んだ。
引き抜くと、そこには銀色のガントレットが装着されていた。
そのまま、襲いかかってきた光の筋を両手で薙ぎ払っていく。
「フフフ…そらそら、どんどん行くぞ」
妾は空中に浮かぶと、キングゴブリンを見下ろしながら左手からも光の筋を放つ。
まるで、空から雷が降ってきているかのようだ。




