降臨 3
「入れ替わるって言っても、どうするんですか?やり方なんて分かりませんけど」
「それは簡単だ。そなたが入れ替わろうと心の中で念じながら妾と額を合わせれば良い。簡単だろう?」
自身の額を指さしながら説明してくれる魔王。
…よし、少し怖いが覚悟は決まった。
「…わかりました。それじゃあ、いきます…!」
「ああ、いつでも来い」
魔王は、私と額を合わせやすいように少し頭を下げてくれる。
私は、意を決して魔王の額に私の額を合わせた。
すると、私たちを中心に光が溢れ出し、辺りを包みこんでいく。
それからすぐに、私の意識はなくなった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
「___見せてもらおう」
明確な殺気と共に、拳が落ちてきた。
パシッ!
「……なに?」
その拳が最後まで落ちてくることはなかった。
何故なら、妾が片手で受けとめていたから。
真っ黒に染まった目と、中心にある藤紫の瞳が妖しく光る。
「この程度か?昔のそなたはもっと強かったように思うが」
「メアリー様…っ!」
首だけ後ろに振り返ると、そこには目を見開き、驚きに言葉を失って固まっている男と、妾を見て嬉しそうな悲しそうな、なんだか複雑な表情をしている女がいる。
「…ほう、この感じ…やはりお前はあのお前だったのか」
キングゴブリンは、どうやら妾のことに気づいたらしい。
「覚えておったか。まあ、あれだけ叩きのめしてやれば嫌でも忘れぬか?」
ククッ、と小馬鹿にしたように笑う。
「当たり前だ。負けたのに見逃されたあの屈辱を忘れることはない。今こそ、決着をつけようではないか!」
そう言って拳を引っ込め、腕組みをするキングゴブリン。
「メアリー様!傷っ!その身体で動いたら…っ!」
さっきの女が妾の心配をしたのか、近くでアワアワと慌てている。
「…ああ、そういえば傷がそのままだったな」
自身の傷に手をかざす。
すると、袈裟懸けに斬られていた傷口が、みるみる内に塞がっていく。
そして、傷だけでなく今着ている制服まで完全に元の状態に戻った。
「え?これ、どうなって…」
「これでよいのだろう?ついでに、そなたたちも回復してやろう」
「え?え?」
妾が女と男にそれぞれ手を向けた。
すると、傷だらけだった身体が一瞬で治っていく。
女は傷が急に治ったことに驚いて、言葉が上手く出てこないようだ。
そして、チラッとキングゴブリンの方を見る。
「…さて、帰るか」
「おい、ちょっと待て」
妾が帰ろうとすると、間髪入れずキングゴブリンが引き止めてくる。




