激情 5
「__止めてください!あの人に手を出さないで!」
急に口が勝手に動き、さらに構えてない方の左腕が、雷を放とうとした右腕を押さえる。
バチバチッ!ドゴォッ!
「くっ!」
「うわぁっ!」
そのせいで狙いが逸れ、男の右上の天井に当たってしまう。
天井が崩れ、男の隣に瓦礫が落ちてきてまた男が驚きながら飛び退いた。
「な、何故邪魔をする…?」
妾の右腕を、妾自身の左腕が押さえて邪魔をする。
こんなことが出来るのは一人しかいない。
「メアリー嬢か!」
男が声を上げる。
その通り、妾がこの男を攻撃しようとするとメアリーが内側から邪魔をしてくる。
本来なら肉体はどちらか一方しか動かせないはずなのだが、メアリーの意思が強いのか、妾が表に出てきているのに一部ではあるが身体を動かされている。
そのおかげで狙いを定めることができない。
「よし!メアリー嬢には効いているようだな!今のうちに…!」
メアリーからの妨害で妾がモタモタしている間に、男は部屋の扉へと走る。
おそらく、ここから逃げ出すつもりだ。
「させるか!」
「ダメ!」
妾が男に手を向けると、それをメアリーが押さえるの繰り返し。
その間にも男は扉にたどり着き、扉を開け放つ。
妾は思わず歯噛みする。
「くっ!お前…メアリーに一体何をした!」
「何を…?そんなの、メアリー嬢が僕のことを愛してくれているから守ってくれているに決まっているだろう?」
「何をたわけたことを!メアリーがお前ごときを好きになるはずが……まさかお前…!」
「あ、気づいた?でももう遅い。僕は先に行かせてもらうね」
そう言って、男は扉から外に出てそのまま走り去ってしまう。
「この…!待て!」
妾はとにかく雷を無差別に放った。
狙いを定めることはできないが、魔法を撃つこと自体はできる。
ここは城の中の一室か?
ならば城ごとあの男を葬ってやる。
妾の生まれ変わりでもあるメアリーに手を出しておいて、生きて帰れると思うなよ…!