緑鬼の王、再び 60
「__どうですか?唐揚げは期待通りでしたか?」
「はい。期待以上でした。これならまた来てもいいかもですね」
ヴィサス様の問いに私は満足げに答える。
あれから店に入ると、店員が出てきて案内してくれた。
そのとき、たまたまテーブル席が空いていたので三人全員でテーブル席に座る。
そして私は、何よりもまず唐揚げ定食を頼んだ。
ちなみにイーリスはチキンドリア。
ヴィサス様は鶏肉を使ったペペロンチーノを注文していた。
「特別な香辛料を使っているのかもしれませんね。こう、食べれば食べるだけ身体がポカポカしてくる気がします」
唐揚げは全部で四つあるのだが、すでに二つ食べ終え、今は三つ目に箸を伸ばしている。
食べ始めは特に何も感じなかったのだが、今は体温が上昇しているのか少し暖かい。
心拍も少し上がっている気がする。
何でしょう…なんかドキドキしているような感じが…
まあ、美味しい唐揚げを食べれて高揚しているだけでしょう。
私は気にせず箸を動かす。
「へぇー!アタシも食べてみたいです!メアリー様、一口くださ_」
「ダメです」
「_い……へ?」
イーリスが一口欲しいと言い切る前に、私は却下する。
「ダメです。これは私のものです」
「一口だけ!一口だけでいいですから〜」
「ダメなものはダメです」
私は守るように唐揚げ定食を乗せたトレイの周りを自身の両手で囲い込む。
「むー、メアリー様のケチンボ〜」
「……何か?」
私はキッとイーリスを睨みつける。
「いえ、何もありません!」
敬礼するイーリス。
「そんなに食べたいなら唐揚げ単品で頼んだらいいではないですか?二つから頼めるみたいですよ」
「メアリー様が食べてるやつが欲しかったのにー!残念…」
ガックリと項垂れるイーリス。
私の唐揚げになんの価値があるというのか。
食べたいなら大人しく注文しなさい。