緑鬼の王、再び 36
「まだまだぁ!プレシハンマー強化っ!」
大地が盛り上がり、すでに出来上がっているハンマーにさらにまとわりつく。
そして、一瞬の内に今までのハンマーより二回りも大きなハンマーが完成していた。
「我々を舐めるのは早いんじゃねぇのー?まだまだこれからだぜ!」
巨大化したハンマーを肩に担いで、意気揚々と前に出るプレシさん。
「なんだ?お前は」
「おうおう!わたしを知らないたぁふてぇ野郎だ!わたしの名前はプレシ!今からお前をボコボコにする者だ!よく覚えときな!」
「おお…?」
戦闘中は性格が変わるのだろうか?
普段は陽気でありながらも、いざというときにはクールさも兼ね備えたイケオジのような人だったが、今は陽気一辺倒のただの調子づいたオジさんのようになっている。
その勢いに、キングゴブリンもどう扱っていいか分からず、困惑した表情を浮かべている。
「メアリーさん!わたしにいい作戦がある!」
名乗りを上げて満足したのか、困惑しているキングゴブリンを無視してプレシさんは巨大ハンマーを肩に担いだまま、私に近づいてきて耳打ちする。
ずいぶんとマイペースな人だ。
「作戦、ですか?」
「そう!まずは__」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
「__で、どうだ?」
「わかりました。それでいきましょう」
プレシさんの作戦を聞き、納得したように頷く私。
「すまない。君を一番危険にさらしてしまうのは心苦しいのだが…」
「いいんですよ。私が一番適役なのは作戦を聞いていてわかりましたから」
「本当にすまない!それじゃあ、他の三人にも作戦を伝えてくる!」
申し訳なさそうに両手を合わせて私に謝るプレシさん。
私はそれを気にしていないと伝えると、プレシさんは申し訳なさそうな表情のまま、とりあえず納得して他の三人に作戦を伝えに行った。
「……作戦会議とやらは終わったか?」
キングゴブリンが、待ちくたびれたという顔で立っている。
私たちが話をしている間、キングゴブリン何もせずに待っていてくれた。
圧倒的な、強者としての自信と余裕。
それが、私たちが作戦会議をしている中わざと見逃した理由だろう。
私たちの作戦を正面から堂々と打ち破った上で、完璧に勝利する。
そうすることで自身の強さをより誇示できる上に、私たちがいくら策を弄したところで意味のない、いかに無力でちっぽけな存在か示したいのだろう。
…その余裕が敗因になるということを、教えてあげます。