緑鬼の王、再び 35
「__その程度か?」
「なっ!」
キングゴブリンの両腕はみるみるうちに治っていく。
「なるほど。これがお前の言う本気を出さない理由か?だが、この程度の力では我を傷つけることはできぬぞ」
そう言って、私に放った拳のパワーを上げる。
私はさらに、地面にめり込むように下がってしまう。
「このっ!メアリー様を離せ!」
「くっ!」
イーリスとヴィサス様はさらに追加で魔法を放つが、キングゴブリンは気にする素振りも見せない。
先に私を潰すつもりだ。
「まだわたしたちがいるぞ!」
そのとき、わたしの後ろからプレシさんとレセプさんが飛び出してきた。
「大地よ、我を守護し我に力を!ウェポン・アース!」
プレシさんの足元の地面が盛り上がり、一つの形を形成していく。
それは、先ほどプレシさんたちがゴブリンオーガとの戦いで見せた、巨大なハンマーだった。
それを、思いきり振りかぶる。
「くらえ!プレシハンマー!」
よくわからない掛け声とともに、キングゴブリンの左腕の肘の部分をハンマーで思いきり叩く。
「うっ!?」
急に肘を殴られ、力の方向がズレる。
「ぐっ!」
その隙に、力を左にそらして私は右に逃げる。
キングゴブリンの左腕は、そのまま地面に突き刺さった。
ドゴォッ!!
凄まじい衝撃とともに、大地に亀裂が走っていく。
「そこです!」
そこにレセプさんが空中に飛び上がり、小刀を二本キングゴブリンの頭に向かって投擲する。
しかし、小刀はキングゴブリンの頭に当たると、甲高い音を響かせて刺さることなく落ちてしまった。
「くっ!この程度では刺さりもしませんか…」
小刀が刺さらないことに不愉快そうな表情になると、レセプさんは空中で身を翻して地面に着地する。
「どうした?これで終わりか?」
以前、余裕の表情のキングゴブリン。
地面に刺さった左腕を引き抜くと、右手に持った大剣を肩に担ぐ。
このままでは火力不足が否めない。
やはり、私が全力を出すしかないのだろうか?