緑鬼の王、再び 32
「貴方は倒されたのではないのですか?」
確かに、ルナの魔法を受け消滅したはず。
というか、地形を変えるほどの魔法を受けて生きている方がおかしい。
でも、実際にキングゴブリンは生きて目の前にいる。
その上、見た目も何故かゴブリンたちを吸収して凶暴化する前の状態に戻っているみたいだ。
「我か?我はあの魔法を受ける直前、謎の光に包み込まれ、気づいたら向こうの洞穴の中に倒れていた。見た目も元通りだ」
「謎の光?なんですかそれ?」
「さあ?我は知らん」
よくわからないが、誰かが助けたということだろうか?
でも、あの状況で助けられる人なんてこの世に存在するのだろうか?
『……なるほど、あいつか…相変わらずムカつく奴だ』
「……ルナ?」
ずっとここまで静かだったルナが反応する。
最近はやる事もなくて私の中で寝ていることが多くなってきていたのだが、ときおりこうして表に出てきては私に話しかけてくる。
そして、何やらルナはキングゴブリンを助けたのが誰か知っているらしい。
「ルナ?キングゴブリンを助けたのが誰か知って__」
「おーい!大丈夫かー?」
「何かあったんですか?」
「メア!無事ですか!?」
「メアリー様!アタシが来たからにはもう安心ですよ!」
そのとき、こちらの事を心配しながら駆け寄ってくる人影が四つ。
プレシさんにレセプさん。
それにヴィサス様にイーリスだった。
「みなさん、下がっていてください。アレは一筋縄ではいきません」
私はこちらに近寄ってくる四人を手で制し、それ以上こちらに近づいてこないようにする。
「あ、貴方は…!?」
ヴィサス様はさすがに気づいた様子。
キングゴブリンとの戦いはついこの間のことなのだ。
あれだけの目に遭って、むしろトラウマになっていてもおかしくないはず。
「ヴィサスさん…?あのゴブリンは…?」
プレシさんとレセプさんは、キングゴブリンを確認すると一瞬で臨戦態勢に入る。
キングゴブリンのことは機密情報なので、王族など一部の者しか知らされておらず一般人は知らないはずなのだが、プレシさんとレセプさんはキングゴブリンの雰囲気だけでその危険度を察知した様子。
元Aランク冒険者なだけあって、危険察知能力も高い。
その上で、周りの反応を見て相手の正体を知ってそうなヴィサス様に正体を聞くなど、視野の広さも併せ持っている。
「え、なんでここでこいつが出るの?もっと先の話じゃなくて?」
イーリスの方は、よく分からないが何やら意味深な事を呟いている。