緑鬼の王、再び 29
「メア、こちらはいつでも行けます!」
「わかりました。カウントしますので0になるのと同時に穴を開けて下さい」
「はい!」
ヴィサス様は目を閉じ、さらに集中力を上げる。
「行きますよ。3…2…1…0!」
「はい!」
障壁に穴が開く。
それと同時に私は障壁の穴から外に出た。
ゴブリンオーガが入ってこないように障壁の穴はすぐに閉じる。
そして、周りの視線が一斉にこちらを向く。
障壁のせいで入ることができず、破壊衝動を満たすことができなくてストレスが溜まっているその時、急に目の前にエサが現れたのだ。
当然、目の前のエサに飛びつく。
我先にと、周りを押しのけるほどに。
それは狂気となって、私に襲いかかった。
私は、スカートの両端を持ち上げると、貴族らしく少しお辞儀する。
「……ようこそ、おいでませ。全員蹂躙してあげましょう」
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
ヴィサス・カサンドラ 視点
「おーい!大丈夫かー!」
その時、遠くから声とともに誰かが近づいてくる。
プレシさんとレセプさんだ。
「こっちは何とか終わったぞ!そっちは……って、ゴブリンオーガがいないな?もう倒しちゃったか?」
辺りを見回すプレシさん。
ゴブリンオーガは殴られて障壁の外にまで飛んでいってしまったのでここにはいない。
「こちらは終わりました。プレシさんとレセプさんもご無事で何よりです」
「ああ、ありがとう。それじゃあ、次行こうか。またさっきみたいにしてもらってもいいか?」
「……いえ、その必要はもうなさそうですよ?」
「ん?どういうことだ?」
私の言葉にプレシさんは不思議そうな表情をする。
レセプさんも、私の言葉を聞いていたのか、同じように訝しげな表情をしていた。
「障壁の外を見て下さい」
「外?」
それに対して、私は二人を障壁の外を見るように誘導する。
プレシさんは不思議そうな表情のまま、私に言われた通り障壁の外を見る。
それにつられてレセプさんも障壁の外を見た。
「……な、なんじゃこりゃあっ!」
「っ!」
思わず叫び声を上げるプレシさん。
レセプさんは驚きすぎて声も上げられない様子。
何故なら、そこは二人にとって信じられない光景が広がっていたからだ。
「ほらほら、どうしたんですか?そんなに数がいて私に傷一つつけられないなんて情けないですね」
そこにいたのは、一方的にゴブリンオーガの軍勢を蹂躙する、私の親友だった。