緑鬼の王、再び 2
「め、メアリー様!聞いてください!この女がメアリー様と一緒にお風呂に入って、メアリー様の柔らかい所を隅々まで洗いたいなどと不埒な事を言っていました!」
「あ!それは!」
「…ヴィサス様?」
「いえ、その……えへへ」
可愛らしく舌を出して誤魔化すヴィサス様。
そのようなことで簡単に誤魔化せると思ったら大間違いです。
……私を除いて。
「…まあ、いいでしょう。ヴィサス様と一緒にお風呂に入らなければいいだけです。後イーリス。ヴィサス様のことをあの女とか言ったらいけません」
「はい!メアリー様!」
「そ、そんなぁ……」
イーリスが元気よく返事するのに対し、ヴィサス様はまるで、希望を失ったかのような顔で膝から崩れ落ちる。
「アハハ!ザマァ見ろ!」
「くっ!このっ!」
それをイーリスが馬鹿にした表情で笑う。
ヴィサス様もそれを見て頭にきたのか、瞬く間に絶望から回復し立ち上がると、イーリスに食ってかかろうとする。
「……もう、それ以上醜く争うなら二人とも嫌いになりますよ?」
「な、何を言ってるんですか!私たち仲良しですよ!ね?」
「そうですよ!アタシたち仲良し!」
私がそう言うと、一瞬でイーリスとヴィサス様はお互いの両手を重ね合わせ、私に仲良しアピールをしてくる。
それを見て私は、ため息をつきながら頭を左右に振った。
何故かイーリスは、私にすごく懐いている気がする。
本来なら元敵同士。
それなのに、嫌であろうメイドの仕事もきっちりこなし、それどころかむしろ嬉々として私のお世話をしている気がする。
何故そんなに私に懐いているのか直接本人に聞いてみたところ、「アタシは、周りの心無い言動から守ってくれた恩返しをしているだけで他意はない。勘違いしないでよね!」だそうだ。