緑鬼の王、再び
「今すぐ、とっとと、お帰りくださーい」
「うるさいです!いいからそこをどきなさい!」
「…………」
ごきげんよう。
私の名前は、メアリー・フェリシテ。
勇者が興したとされる国、シャーユ王国を代々支えてきたフェリシテ公爵家の長女。
そして、ただいま借金生活を楽しく謳歌している真っ最中である。
「アタシはメアリー様のお世話があるからどけませーん。というか、アナタは邪魔なので帰ってくださーい」
「このっ!たかがメイドの分際で!」
模擬戦用の広場の修繕費は、レオン殿下が肩代わりしてくれました。
その上、借金の形に何かを要求してくる事もなく、利息も返済の期日もなくしてくれました。
レオン殿下いわく、「返せるときに返せば良いんだ。それが信頼ってものだろう?」だそうです。
とても感謝しています。
「フンッ!私はメアに親友って言われたんですよ?唯一守りたいとも言われました。どうです、いいでしょう?」
「そ、それが何か?アタシはメイドなんだから、メアリー様のお世話を毎日しているのよ?」
「お世話?それってつまり…」
「そう…お風呂のお世話、朝起こすお世話まで、メイドならなんでも出来るということ」
「ま、まさか!?メアのあの柔肌を堪能するに飽き足らず!寝顔まで!?」
「そういうこと!アナタは知ってる?メアリー様のお肌はどこもスベスベのモチモチでシミ知らず!それに出るところは出て締まるところは締まっている、完璧なプロポーション!その上、あの天使の寝顔を見たら……アタシが天に召されそうに……!」
「な…ななななななんて羨ましいぃぃぃぃぃぃっ!」
「貴方たち!うるさいですよ!」
「「す、すみません!」」
本当にこの人たちは、毎日毎日飽きないですね。
イーリスをメイドにしてから数日経ったが、毎朝イーリスとヴィサス様の二人は、こうして言い争いをしている。
毎日、どちらが私により気に入られているかで勝負しているようだが、いい加減不毛なので止めてほしい。
というか、私の柔肌を堪能って何を言っているんですか。
ただ身体を洗うのを手伝ってもらっているだけで、何もやましいことはありません。
寝顔は……まあ、よくわかりませんが、私は朝が弱いので助かっています。




