白黒ハッキリつけましょう 20
「身の程知らずにもメアリー嬢に決闘を申し込むなんて、とんだ恥知らずだな!」
「そうよ!傲慢な上にレオン殿下に色目まで使ってるじゃない!貴方みたいな下品な人が相手にされると思ってるの!?」
「もう消えろ!お前なんていないほうがマシだ!」
「そうだそうだ!」
「「「「「消ーえーろ!消ーえーろ!」」」」」
再び大合唱が始まった。
今度は、イーリスに対して消えろコールだ。
誰からともなく始まった消えろコールは、瞬く間に模擬戦用の広場を包み込む。
「うぅぅ………ごめんなさいぃ……」
イーリスは、恐怖で怯えすぎていて反論することなどできるはずもなく、周りからの声が少しでも小さくなるように両手で両耳を押さえて縮こまり、ひたすら震えながら謝り続けている。
それを見た私の顔から、表情が消えていく。
それでも、まだ追い打ちは続く。
「「「「「消ーえーろ!消ーえ___」」」」」
「…………黙りなさいっ!!!」
私の声が模擬戦用の広場に響き渡る。
私の声が響き渡った瞬間、シーンと辺りは一瞬で静まり返った。
それもそのはず。
今の私からは、ゴブリンキングと戦ったときと同じだけの威圧感が漏れていたから。
何故、私の決闘なのに貴方たちが糾弾する?
何故、関係ない生まれや聖女の資格を非難する?
何故、何も知らない貴方たちなんかに消えろと言われなければならない?
……全くもって気に入らない……
私は、全体をグルっと一瞥する。
すると、私が視線を向けた方から、ヒッ!といくつか悲鳴が聞こえた。
それを私は無視し、イーリスの方に向き直る。
「……貴方、私のメイドになりなさい」
「……メイド…ですか…?」
私の声に、ゆっくりと顔を上げるイーリス。
その顔は、涙や鼻水などでグチャグチャになっており、見るに堪えない状態だ。
そんな状態のイーリスを気にもとめず、話を続ける。
「ええ、そうです」
「え…でも、メアリー様にはすでにメイドが居られるのでは…?」
「私は、他の方と違ってメイドを連れてきておりません。なので、ちょうど私の身の回りを任せる人が欲しいと思っていたのです」
「で、では……」
「はい。なので、何も心配することはありません。安心して私に仕えなさい。それとも、何かご不満でも?」
「い、いえ!何もありません!…あ、でも、本当にいいんですか?アタシは元平民ですし、メアリー様に迷惑をかけてしまうんじゃ……?」
先ほど、周りの生徒たちに言われたことを気にしているのだろう。
周りに罵倒され、心を折られ、自らを貶めるような発言を聞いていると、なんだか無性にイライラしてくる。