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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章後編 崩壊都市ベルシュテット

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彼女にとっての希望

 同時刻、北地区。

 北地区内で最も大きい商業施設の2階は、もはや戦場となりつつある。


「あらあらぁ♪ 2人とも隠れちゃってぇ〜♪ もっと良い顔見せてくださいよぉ〜♡」


 店員に扮装していた女吸血鬼リベルアは血の鞭を振り乱し、店内の棚や内装をズタズタに傷付ける。

 その裏に隠れているナナとシスティアを炙り出すために。


「すぐに終わるって言ってなかった?」


「黙れ! だったらお前が片付けろ!!」


 ナナとシスティアは血の鞭を回避しながら言い合っていた。両者、近くの商品を上手く利用して血の鞭を対処する。


「蚊帳の外にしないでくださいよぉ〜」


 そんな2人を見て、リベルアは頬を膨らませながら血の鞭の軌道を変えた。


「ゔっ‥‥‥!」


「なにしてんの!!?」


 システィアは反転跳躍して回避したが、ナナは対応が追いつかず、胸元に鞭を受ける。


「ぐぁっ‥‥‥」


 そして、吹き飛んだ先にある商品棚に背中から激突した。


「あら、味気ないですね」


 リベルアは残念そうに呟きながら、倒れるナナに血の鞭を振るう。


「早く起きろっ!!」


 飛び込んだシスティアが左足の裏で血の鞭を蹴り返した。


「はぁ!!」


 その後、システィアはリベルアに接近して素手で殴りかかる。

 それをリベルアは首を傾げながら回避し続けた。その膠着状態が、しばらく続く。


「もう野蛮なお嬢さんですね〜。でも見ていれば分かりますよ」


「なにがっ!?」


 システィアが睨みながら拳を振るうも、リベルアに全て見切られてしまう。


「あなた、素手での戦闘経験が乏しいですね? 剣が折れて動揺してましたよね??」


「いちいちウザいっての!!」


 声を荒げるシスティアだが、剣で攻撃する時よりも数段キレがない。それに狙う箇所も曖昧。


「ふふん♪」


 リベルアは余裕を持って躱し続ける。対して攻撃を繰り出すシスティアは徐々に顔が険しくなっていた。


「あははっ、良い顔です!! クールな女性が見せる必死な顔っ!!! 私、大好物なんですよぉ〜♡」


「気持ち悪いっての!!!」


 そう言ってシスティアが繰り出した右足の蹴りを、リベルアは手で受け止めて恍惚としていた。


「ああっ、キツい口調も堪りません♡ もっと、もっとお願いしますぅぅ!!!」


「死ねよっ!!!」


 憤ったシスティアは右足を下ろそうとするが、何かが絡まって動かない。それはリベルアが扱っていた血の鞭だった。


「っーーーこのっ!?」


「あら怖い♪」


 リベルアはわざとらしい声を出すと、血の鞭を縦横無尽に振り回す。当然、足が絡まっているシスティアも振り回される。


「くそがッ‥‥‥!!」


 上下左右が反転し、視界に映る床がどこか分からない状態で、近くの商品棚に身体中がぶつかる。

 足に鞭が絡まっている状態では、どう足掻いても相手の思う壺だった。


「ーーーあら」


 すると、リベルアが自分の左手が床に落ちるのを見届ける。背後に回っていたナナが切り落としたのだ。


「いったッ!」


 左手が持っていた鞭も同様に床に落ち、振り回されていたシスティアも床に落ちる。


「っ!!」


 すぐさま反撃を試みるリベルアだったが、ナナが左手に持っていた数枚の衣服が宙を舞い、視界を遮る。

 その間に、ナナのナイフがリベルアの左足と右手首を捉えていた。


「あー」


 そして今までの戦闘の中で初めて、リベルアが膝を曲げて体勢を崩す。


「はぁ。あなたの容姿と度胸は大好きですが、その戦い方にはあまり惹かれませんね」


 リベルアがそう呟く間にも、ナナは懸命にナイフで首を切ろうと試みる。


「ーーーその弱者のような戦い方には」


 ナナがそんな言葉を聞き取った瞬間。


「っ‥‥‥?」


 飛び散った赤い血で自身の視界が埋め尽くされる。だがその血は、操られて飛んでいたものではない。

 自分の腹部から溢れ出した血だと、感覚で気付く。 

「がっ‥‥‥」


 そう気付いた瞬間、身体は激痛を訴えながら勢いよく離れていく。そして背中が何かに衝突し、そのまま突き抜ける。

 いや、ナナが音を立てて突き破ったそれは窓ガラスだった。身体の重心が後ろに傾き、視界に空が入り込む。


「しまっ‥‥‥」


「っ、探偵ぇぇぇっ‥‥‥!!」


 蹲るシスティアの声は、もはや意味を為さない。


「あら、落ちちゃいましたか」


 僅かに動く左手を伸ばしたナナは、2階から外に投げ出されたのだった。


 ◆◇◆◇


 中央地区、噴水広場。

 交易都市ベルシュテットで、待ち合わせ場所として使われる人気エリア。交易都市のど真ん中に作られた大きな噴水を目印にして、行動する者も少なくない。

 そんな場所が、たった数十分で恐怖の対象へと移り変わっていた。次々と噴き出る水が、まるで血のように赤く染まっている。

 その光景を楽しんでいたのは、上空から降りてきた赤い髪の吸血鬼。


「ふふ、美しいものね」


 いまの惨劇を生み出した元凶、アローラである。彼女は赤く染まった噴水に手を伸ばし、感触を確かめるように握り締める。そして、嬉しそうに口角を上げた。


「答えは出たの、カンナぁ?」


 視界に入っていないにも関わらず、アローラは背中に感じ取った視線の相手に話しかけた。


「‥‥‥なんで、こんなことするの」


 カンナは必死に睨みながら、アローラに尋ねる。それが強がりということを、アローラは既に理解していた。


人間(あんた)吸血鬼(わたし)の考えが理解できるのぉ? 少なくとも私は人間のこと全く分からないわ。なんで群れたがるのか、弱いくせに欲深いのか。力に見合わない願望を抱えて、哀れよねぇ」


 アローラの問いかけに、カンナは反応せず睨み続ける。それが煩わしく感じたのか、アローラはため息をついて視線を向けた。


「はぁ、まあいいわ。もう一度聞くわよ? 私のしもべになる答えは出たの?」


「‥‥‥ならない」


「はあ?」


 よく聞こえなかったのか、それとも聞き間違いかと思ったのか。アローラは文句混じりに煽る。


「しもべなんかにならない!!! 私はもう迷わない、絶対に!!」


 そう言い切ったカンナの目には、確かな意思が宿っていた。


「私はレスタくんのことを信じてる。私とターナを助けてくれると言ってくれたレスタくんのことを信じてるっ!!!」


「はあ?? レスタって、ああ。最近話題になってる『天帝』ってやつ? たかが人間如きが調子に乗ってーーー」


「そう思ってればいい。別に何も知らなくていい。ずっと人を見下してればいい。レスタくんの度量は絶対に測れないんだから」


「ほんっとグズね。なんであんたなんかが‥‥‥」


 アローラが侮蔑の目を向けた後、右手を掲げる。


「‥‥‥はあ、もういいわ。やっぱりボロボロに壊すしかないわね」


「ーーー何をする気っ!?」


 カンナが叫ぶと、アローラは口角を上げて嘲笑する。


「いつまでその態度が続くかしらねぇ!?」


 右手を掲げるアローラの引き寄せられるように、2人の少女が姿を見せる。


「お呼びでしょうか、アローラ様」


 1人はアローラの従者である黒髪メガネの女メイド吸血鬼、ニーナ。


「用があるのはあんたの人形よ」


「‥‥‥」


 そしてもう1人は、完全に意思を失っている暗殺者(ターナ)


「ターナっ!!」


 カンナが叫んだ直後、彼女の喉元に暗殺者(ターナ)のナイフが迫る。


「くっ!?」


 懸命に腰を落として回避したカンナは、操られた人形のように動くターナに反撃ができない。


「見なさいよほら、躱すことしかできてない。やっぱり人間なんて価値のない下等種族よ。あんたは()()()()()幸運だったわね?」


「‥‥‥あの、アローラ様」


 アローラの言葉に対し、ニーナは肯定を示さずに別のことを話した。


「私も戦います。早く済ませた方がーーー」


「あんたは何もしないでちょうだい。これは念入りな仕込みなんだから」


 そう言ったアローラは、我慢しきれないのか笑みをこぼす。


「お仲間同士で傷つけ合うのよ、心を。そして絶望の淵へ突き落として、二度と反抗する気が起きないようにね」


 交易都市は、まさに蹂躙されようとしていた。


(レスタくんっ‥‥‥レスタくんっ‥‥‥!!)


 カンナは必死にナイフを躱しながら、心の中で叫んでいた。


(私は信じてるっ、信じてるからね‥‥‥)


 だが彼女にとっての希望は、現れる気配が無かった。

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