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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章前編 交易都市ベルシュテット

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全て奪われる

「ターナっ‥‥‥?」


 そう呟く銀髪ツインテ少女の声は、空耳と疑うほどに小さい。


「ニーナっ!! 私の許可なく勝手に引き込むんじゃないわよ!!」


「‥‥‥申し訳ございません。ですがこれが最善かと」


 言い合っている吸血鬼2人の声は、絶望に支配された銀髪少女(カンナ)の耳には入らない。彼女の目には、無機質に自分を見下ろす小柄の暗殺者しか映っていない。


「‥‥‥」


 大切な仲間である少女と見つめ合っている。だが、何も感じない‥‥‥これまでの絆が、感じられない。


「うそ‥‥‥だよね? ねえ、返事してよターナ‥‥‥」


 カンナは藁にも縋り付く思いで立ち上がり、ターナと呼ぶ少女の肩を揺する。


「‥‥‥」


 縋り付くカンナへ現実を突きつけるように、少女は何も反応しない。真っ赤に塗りつぶされたような目は虚空を見つめ続け、まるで作り物のよう。

 彼女の腹から溢れていた血は止まり、少女の透き通ったお腹が見えている。まるで何も無かったかのように、元に戻っていた。


「ーーーッ」


 そう‥‥‥外見だけは。


「‥‥‥ヴぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」


 カンナは狂ったように叫ぶ。心から何かが弾け、無意識に叫んでしまう。そしてカンナが至近距離で絶叫しているのに、少女は全く反応しない。

 まるで、精密に作られた人形のよう。その様子を見た女吸血鬼アローラは、舌打ちをしながら口を開く。


「ま、苦しそうな顔が見えたから今回は許してあげる。ただし次は無いわよ。いいわね、ニーナ」


「寛大な御心遣い、感謝します」


 そんな2人の会話は、虚ろな目から涙をこぼすカンナの耳を通り抜ける。そんな彼女を見て嬉しそうに笑うのは、アローラ。


「‥‥‥あははははっ!! ホンットに傑作だわ!? たかが人間の信頼関係なんて、こんなものよ!! 吸血鬼(私たち)の血の因果には逆らえない!」


「そんな、ターナ‥‥‥」


「ま、あんたが()()()逃げたから巡り巡って今こうなってるのよ、カンナぁ?」


 アローラは赤い髪を靡かせながら、絶望しているカンナに顔を近づけた。カンナ自身、思い出したくもない過去を思い出さずにはいられない。怪しい宗教集団の次期教祖として育てられていた、幼い時からの過去を。


「次逃げたら、こいつがどうなるか分かるわよね?」


 アローラはそう言うと、呆然と立ち尽くす少女ターナの頭を撫でる。


「ーーーターナに触らないでッッ!!!」


 するとカンナが叫んで、無意識にアローラを止めるべく手を伸ばす。


「私に向かってその態度は何っ!?」


 だがその手が届く前に、眉を顰めたアローラがカンナの鳩尾を蹴り飛ばした。


「がッ‥‥‥!?」


 地面に背中から倒れ、腹を押さえて悶えるカンナ。彼女を見下ろしていたアローラは、小さな声で従者の女吸血鬼ニーナに指示を飛ばす。


「失礼しますね」


 そう呟いたニーナは、蹲って動けないカンナの身体を弄っていく。そしてポケットに入っていた‥‥‥小さな青い結晶を抜き取る。

 アローラはニーナから結晶を受け取ると、見下ろしながら口を開いた。


「これは都市を出る際にも必要なもの。だからあんたはもうこの都市から出られない。力づくで逃げようとしたって無駄」


「アローラっ‥‥‥!!」


「ま、あんたならこの子を放って逃げ出したりしないわよねっ? あんたのせいでこうなってるんだから」


 そう呟き、挑発するように笑うアローラ。カンナは腹を押さえながら懸命に立ち上がる。


「‥‥‥私が、ついて行けばいいんでしょっ!! だからターナは解放してよッ!!!」


「ふっ、相変わらず立場がわかってないわねぇ? その要求に対する答えは、明日の夜に聞くわ」


「なんで、明日なの‥‥‥?」


 相手の言っている意味が分からず、睨みながら戸惑うカンナ。それを見てアローラは嘲笑いながらゆっくり歩き出す。そして、すれ違いざまにカンナの耳元で呟いた。


「ーーーこの都市の人間、全て配下にしてからねぇ?」


 カンナは寒気を超越したものを感じ取り、一歩も動けない。アローラが高笑いしながら去っていくにも関わらず。


「もうわかると思いますが、逃げないでくださいね。あなたが逃げた時点で、全て奪われるのは確実です」


 その後、意識があるかもわからないカンナの耳元で囁いたニーナは、アローラの後を追う。


「‥‥‥」


 そして、ターナ()()()者は何も言わずに2人の後を追って歩いていく。


「‥‥‥ッ、ゔぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」


 忘れたい過去から逃げられない事を突き付けられ、四つん這い状態で叫ぶカンナだけを残して。


 ◆◇◆◇


 同時刻、東地区。


「‥‥‥ん?」


「どうした、ディスローグ」


 突然歩くのをやめて振り返ったアイトに対し、ジェイクは疑問を感じて話しかける。口には出していないが、それは他の同行者である3人も同じだった。


「‥‥‥いや、聞き覚えのある声が聞こえた気がして」


 アイトはどこか胸騒ぎを覚えていた。明らかに確証は無く、空耳の可能性の方が高いはずなのに。


「はあ? 私には聞こえなかったけど?」


「剣バカ女の肩を持つようで嫌だけど私も聞こえなかったわ、アイトくん」


 同級生である少女2人にそう言われるが、黒髪少年は納得できない。


「は? お前の魔法が誤爆したんじゃないの? あ〜こんな遅いのに近所迷惑。さすが爆弾女」


「はぁ!? だったら今すぐ答え合わせする!? この前の試験みたいに、情けなく吹っ飛べ!!」


「上等っ、今すぐそのうるさい口に剣を突っ込んでやる!!!」


 そんな空気を読まずに、気の強い少女2人は口喧嘩を繰り広げていたが。仲裁に入った同級生の男も巻き添えになり、全く話を聞いていない。


「‥‥‥別に今からの行動は自由だ。じゃあ後輩くん、()()()()な」


 だがその中でただ1人‥‥‥ホワイトブロンドの長い髪を靡かせたスカーレットが、気を利かせたように呟く。


「ーーーはい」


 次の瞬間、アイトはそれ以上何も言わずに駆け出していた。

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