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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
10章前編 交易都市ベルシュテット

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単なる偶然か、何かの因果か

 交易都市ベルシュテット、西地区。

 

「すまない、まだやっているかな?」


「はい、まだ受け付けております!」


 アイトとスカーレットは、闘技大会の受付に足を運んでいた。スカーレットの美貌に当てられた女性の受付は、赤くなった顔を振って口を開く。


「あのっ! 出場されるのは、そちらの方ですか?」


「いや、私も出る」


「えっ! あ、あなたのようなーーー」


「私のような、なにかな?」


 まるで自分のような()()()()()が戦う訳無いと思われていたと感じ取り、スカーレットは僅かに目を細める。


「いえ何でもありませんっ!! 2人分用意しますので、少しの間お待ちください!」


 失言してしまったと自覚した受付の女性は、急いだ様子で書くものを用意し始める。


(さっきレディだけに戦わせる気かとか言ってくせに‥‥‥やっぱり()()()()()()はされたくないわけね)


 アイトは内心でスカーレットへの愚痴をこぼす。今は少し、諸事情により機嫌が悪いのだ。


「あれ? 何も反応しないな。面白くなかったか」


「面白くないのは俺ですけどね???」



 それはーーー()()()()という、心当たりしかない格好を無理やりさせられているため。


「‥‥‥なんで俺が、こんな格好を???」


 偽の銀髪仮面ことアイトが不機嫌そうに尋ねると、スカーレットは不敵に笑った。


「君は素顔のままで出ると力を抑えるだろ? でも生半可な変装だとシスティアたちに気づかれる。だから分からないように変装しないとな?」


「‥‥‥よくこんなもの用意できましたね」


 アイトは自身の身体に目を向ける。そこには黒を基調した特殊戦闘服()の衣装が。


「謎の男『天帝』レスタの擬似コスプレセット。こんな物まで売ってるとはさすが交易都市」


「むしろ怖いですけど?」


「まあ微妙に仮面と服の外装を変えてるのは誤解されないようにするためだろうな。そして、本物のレスタに目をつけられないように」


本物おれが着てますけどね!?)


 単なる偶然か、何かの因果か。もしくはスカーレットの企みか。アイトは『天帝』レスタ()の変装を施されて受付に来ていたのだ。

 ちなみに受付はスカーレットに見惚れていて、アイトの目立つ格好に全く反応していない。


「お、お待ちしました! こちらにそれぞれお名前をどうぞ!!」


 ようやく準備を終えた受付が2人の前に登録用紙とペンを用意する。

 スカーレットはスラスラと書いていくが、アイトの手は全く動かない。それどころか小刻みに震え、冷や汗をかいている。


「ん? ああ、私に任せろ」


 その様子に気づいたスカーレットが紙を取ってスラスラと書き、受付に渡す。


「あ、はい! これで登録致します! 『スカーレット』さんと『レスタもどき』、さん‥‥‥? あの、登録名はこちらでよろしいですか?」


「ああ、頼む」


「‥‥‥ハイ」


 受付に返事したアイトの声は、やけに小さい。スカーレットが不敵に微笑む。


「よく似合ってるよ」


「アリガトゴザイマス」


 アイトはもはや、不機嫌な態度を隠すことなく言葉を返したのだった。


 ◆◇◆◇


 北地区の中央にそびえ立つ大きな商業施設。

 使用面積としてはかなり大きい、そんな建物の地下。建物内の案内図にも載っていない、その場所は商売にも使わないにも関わらず大きな面積を有していた。

 そんな広大な規模で設計された地下で、話し声が小さく響く。


「人は集まっているの?」


 そう言ったのは真紅のドレスに身を包んだ妖艶な女性。鮮やかな赤髪を靡かせ、ワイングラスを呷る。


「はい。珍しい物を求めてここに来る多くの観光客。魔道具に釣られた、腕に自信のある者たち。利益を求めて来る、他国からの商会や貴族。それらに比例するように宿や酒場、店舗にも多くの人が出入りしています」


 メイド服を着た黒髪おさげの眼鏡少女が、ワイングラスの中身を追加した。


「へえ? 今、どれくらいいるのかしら」


「普段と比べると、およそ1.4倍かと」


「‥‥‥ふっ、あははっ!! 予想よりも遥かに順調のようね?」


「はい。全てはアローラ様の仰せのままに」


 少女は主人の名を呼んで頭を下げ、言葉を付け加えた。


「ですが、一つ気になることが」


「‥‥‥なに? 言ってみなさい」


 アローラと呼ばれた女性は少し眉を動かしながらワイングラスを小さく揺らす。


「強大な魔力反応を感知しています。それも、こちらの許容量を上回るほどの」


「‥‥‥なんですって?」


 アローラは目を細めながら、ワイングラスを机に置く。


「ミーナ。それはいくつなの」


「はい、感知した数はーーー」


 ミーナと呼ばれたメイドが小さく告げると、アローラの眉間にはみるみるシワが寄っていく。


「‥‥‥計画通りにはいかないものね。いくら用意した()に釣られて来たからって、想定を超える奴は1人もいないと思ってたのに」


「不躾ですがアローラ様。強大な分、成功すれば戦力としては申し分なし。100の兵士を軽く凌駕する力を手中におさめーーー」


「黙りなさいッ!!!」


 アローラが声を荒げると、ミーナは深々と頭を下げた。


「申し訳ありません。分を弁えない発言、どうかお許しください」


「‥‥‥いいわ。ミーナの言うことは最もだから。でも、欲を欠いて失敗するわけにはいかないのよ」


「理解しております。それでは、予定通りで」


「ええ、ゆめゆめ準備を怠らないように」


「承知しました」


 何かを計画している2人の会話は、地上の交易都市には届かない。

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