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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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特別会議

 アイト・ディスローグが天帝レスタだと知る者は組織内でもかなり限られている。

 序列10位以内の精鋭『黄昏トワイライト』に教官のラルド、そして‥‥‥ユニカ・ラペンシア。

 特殊な経緯と彼の正体を知っていることから、ユニカは『監視対象』という複雑な立場にある。

 地位が高いと言われれば違う。しかし秘密組織エルジュの重要な情報を知ってしまっている。そして今回、1年選抜試験での問題に立ち会った。


「‥‥‥」


 その事からユニカは、レスタと『黄昏』と教官ラルドしか入る事が許されてない本拠地の特別会議室へ通されていた。

 気まずそうに立つユニカの周囲には大きな楕円形の机を囲うように、『黄昏』のメンバーが指定の椅子に座っている。

 現在、座っているのはターナ、カンナ、アクア、ミア、リゼッタ、ミスト。カイルとオリバーはギルドの任務で欠席、メリナも諸事情で欠席。

 そしてエリスは修行のため長い期間いない。そのため半分近くの椅子が空いている。


(ローグくん、あそこに座ったことあるのかしら)


 その中でも1番奥の豪華な椅子は代表専用だとユニカはすぐに理解した。そしてその左隣の1席も空いている。それが話に聞く序列第1位、勇者の末裔エリス・アルデナだと分かった。


「急遽集まってもらって申し訳ない。こんな夜遅くに集まってもらったのには理由がある」


 教官のラルドが話を切り出して立ち上がる。ちなみに彼の席は代表であるレスタの右隣。


「店の片付け終わった後だから大変なんだけどぉ? お兄ちゃんの話だから来てあげたんだけど? ていうかお兄ちゃんは?」


「眠い〜。カンナぁ、おんぶしてくれるって言ったのは罠だったなぁ〜」


 ミアとアクアが不機嫌そうに口を挟む。するとカンナが手を合わせて謝る素振りを見せる。


「ほんとにごめんね! でもどうしても私からみんなに話をするべきだと思ったの」


 カンナが話を切り出そうとすると、ミストとリゼッタがほぼ同時に立ち上がる。


「カンナっ、別にあなただけの責任じゃーーー」


「まちなされ」


 2人が止めるように忠告する。ミストは少し不安そうに、ミストは僅かに眉を下げて。

 だがカンナは、目を瞑って首を横に振る。


「ううん。私から話させて。そうじゃないと気が収まらないの」


 彼女の言葉に、ミストもリゼッタも息を呑んで黙り込んだ。そしてユニカも、この後の展開を予想して顔を下げる。


「私のせいで、レスタくんが重傷を負ったの」


 カンナは躊躇なく本題を呟く。どうやら事前に知っていたらしいラルドは目を閉じて深く息を吐く。


「ーーーは??? おにいちゃんが、重傷?? ちょっとそれどういう事なの銀髪女ッ!!!」


 1秒にも満たない間で立ち上がり、勢いよく掴みかかったのはミアだった。カンナは胸ぐらを掴まれて立たされると、続きを話し出す。


「今日の昼、ギルドの任務で突然変異の魔物討伐に行ってたの。そしたら突然ルーク王子が現れて‥‥‥ミストを逃がすだけで精一杯で、私は捕まって」


「あんたの言い訳なんかどうでもいいっ!!! おにいちゃんは!? お兄ちゃんは今どこっ!?」


 ミアは凄まじい眼圧で叫ぶ。その反応でどれだけ慕っているのか見て取れる。それを分かっているからこそ、カンナは少し声を震わせながらも話を続けた。


「ユリア姫の治癒魔法を受けて、今は学園の医務室で眠ってる‥‥‥はず」


「はぁ!? 『はず』ってどういう事!? まさかどうなってるか分かんないとか言わないよねっ!!?」


 ミアは必死に両腕を振り乱しながら問いかけるが、カンナは気軽に返事をできなかった。ただ視線を合わせて、唇を噛む。


「ーーーこのっっ、クソ女がッ!!!」


 カンナの反応は、ミアを激昂させるには充分だった。叫びながらカンナを机に叩き付け、足早に会議室を出ようとする。


「待てミアっ、何をするつもりだ!!」


 痺れを切らしたラルドが大声で訊ねると、振り向いたミアは汚物を見るような視線を向ける。


「馴れ馴れしく呼ばないでくれる?? 今から王都に行って、おにいちゃんを探してくるだけだし」


「お主ではそれだけで済まんだろう!?」


 ラルドが持ち前の身体能力で、ミアの前に回り込む。睨むミアは舌打ちをしながらラルドを見上げていた。


「ミアの邪魔するなら誰だろうと消すから。それが王都にいる警備兵だろうが王子だろうが、目の前にいるおじさんだろうが変わらないからね???」


 今にもミアは暴れそうな空気を放っている。心なしか室内が少し揺れているように錯覚する。


「ーーーその言い分だったら、あなたは私から狙うべきだと思います」


 するとミストが意を決して立ち上がり、ミアに向かって呟く。室内の空気が一変する。彼女の発言にミアは僅かに顔をずらし、睨むように視線を合わせた。


「わざわざ言わなくてもっ、ゔっ!?」


 カンナが慌てながら駆け寄ろうとするも、ミアの呪力【クロ】で押さえ込まれる。


「どういうこと?? ねえ水色女、まさかこの期に及んで何か隠してるの?」


 そして凄みを放つミアの問いかけに対し、ミストは泣き出しそうになる。だが自分を奮い立たせ、告げた。


「‥‥‥レスタ()()の指示により、私があの人を撃ちました。あの時に起こっていた問題の全てを打開するために」


 事前に知らない者が聞けば、間違いなく困惑するような一言を。


「ーーーは?????」


 それは怒り狂っていたミアも同様だった。だが僅かな空白を作っただけで、ますます彼女の憎悪が膨れ上がる。ミアは全身から呪力を溢れさせ、室内に不穏な空気が溢れ出す。


「何度でも言います。あの人に指示をされたので私が銃で撃ちました。カンナを助け出せましたし、あの人の容疑もある程度は晴れたと思います。全て、あの人の考えた通りに事が進みました」


 だが、それでもミストは引かなかった。自分の行いは正しかったと、胸を張って発言する。当然、それを見たミアは過敏に反応する。


「じゃあお兄ちゃんが痛い思いをしたのも全部、あんたの仕業なんだ???」


「いえ、ルーク・グロッサも関与してます。彼があの人の首筋から剣を斬り込みました」


 ミストの言葉に、ミアはその構図を連想して眉を歪ませる。だが、暗殺者であるミストは微塵も気にした様子もなく、淡々と話を続ける。


「それと私の銃弾が胸の中央を貫通しました。その痛みによる精神的な負荷が、あの人が倒れた要因だと思いまーーー」


「なに冷静に呟いてんのよ水色女がッ!!!?」


 その態度が、ミアの逆鱗を撫でた。紫色の呪力が手の平から飛び出し、ミストへ迫る。それはミアの通常呪力、【ムラサキ】。


「ミスト!!!」


 反対側に立っていたラルドに、その呪力を止める術は無かった。無意識に声を出すことしか出来ず、紫色の呪力を傍観することになる。

 そして数秒後、僅かな悲鳴が漏れる。


「っづぅ‥‥‥やっぱり呪力の重みが違うわね」


 それは、ミストの()()()()()()()()()ユニカだった。両腕を交差して呪力を受け止めたため、少し鬱血して肌が黒くなっている。


「このっ、邪魔すんな灰色女がっ!!!」


 冷静さを欠くミアはもう一度手を伸ばし、【ムラサキ】を飛ばそうとする。だがすぐに、自分の首元に触れる冷たい感触に気付いた。


「ーーー相変わらず動きが鈍いな」


 背後に回り込んだターナが短剣をミアの首に押し付けている。これ以上何かすれば切ると言わんばかりの体勢だった。


「背伸びしないとミアの首に届かないくせに生意気なんだけど? 今も足ぷるぷるしてんじゃないの??」


「口が悪いのも相変わらずだな」


「こんな胡散臭い新入りの肩持つっての?」


 ミアは心底どうでもよさそうにユニカを一暼する。するとターナはため息を吐き、話し出した。


「ただ勝手に暴れ出そうしたのを止めただけだ。まずカンナとミストの話を最後まで聞け」


 ターナはそう呟き、短剣を少し首へ押し込む。まるで脅しでもしているようだった。だが、ミアは全く動揺しない。


「はぁ、うっざ‥‥‥はいはい、黒髪おチビの度胸に免じて話だけ聞いてあげる。でもその上で悪いと分かったら問答無用で消し飛ばすから」


「それでいい。ボクが首を落とす前にお前が動けたらの話だけどな」


 ターナは嫌味っぽく忠告してから短剣を離すと、ミアは目を細めながら挑発するように舌を出す。だがこれで、最悪の事態は回避された。

 満を辞して、カンナはミストの横に並んで話し出す。


「私がわざわざみんなを集めて話したかったのは、私なりの誠意を見せて理解して欲しかったからなの。もし今回の一件を伏せたとして、その上で知られれば間違いなくミストが悪者になっちゃうから」


「カンナ‥‥‥」


 ミストは小声で呟きながらも、負けじと声を出す。


「わ、私がここで話したのも別のところから今回の騒動を知って勘違いして欲しくなかったからです! 確かに私は指示の通り、あの人を撃ちました‥‥‥でも、決して殺すつもりで撃ったわけではありません!!」


 ミストの真意を聞き、室内に少しの間だけ沈黙が訪れる。


「信じられないなぁ? だって水色女、おにいちゃんのこと嫌ってるの分かってるよぉ?」


 だが、ミアが口出しして反論する。ミストが声を出す前に、ミアが言葉を続ける。


「おにいちゃんの指示っていう証拠はぁ? そもそもあんた以外には誰も事前に策を聞かされてたのぉ?」


「それはっ、口止めされてたんです‥‥‥策の内容的に、他の人には話すなって」


 ミストがかろうじて言葉を返すも、ミアは全く納得しない。


「そんなの嘘かもしれないじゃん。それにもし本当だったとしたら、口止めされてたとしても教えるべきだったんじゃない〜?」


 もはやミアには全く認めるつもりがなかった。恨みの感情が募っている彼女は、完全にミストを悪と意識しているのだ。


「そ、それはそうかもしれませんがっ‥‥‥でも絶対に話すなと口止めされててーーー」


「だ〜か〜らぁ〜!! 結局は嘘なんでしょ!? あんたがおにいちゃんの事を恨んでるからどさくさに紛れて撃ったんでしょ!?」


「そんなっ‥‥‥」


 ミストはミアの凄みに当てられ、必死に言い返そうとしても口が止まってしまう。

 確かにミストは、アイトを嫌っていた。だからといって銃で撃ったという行為の理由にされるのは、嫌だった。でも実際に撃ったという罪悪感から、徐々に反論の意思が無くなっていく。

 このままではミストは悪と認識され、相当な罰を与えられることになる。それは、組織としての秩序崩壊を意味していた。


「ーーーちがうっ!!」


 突然、全く別の声が室内に響き渡る。ミアとミストは同時に声がした方を向く。ミストは、涙を溢れさせていた。


「ミスト、後悔してた。あの時、後悔してた!」


 声の主はリゼッタだった。自分の意見を言う事が苦手な彼女が椅子から立ち上がり、真っ直ぐミアを見つめて声を出している。


「泣いてたっ、子どもだった! ミスト、指示の通り撃っただけ!!」


「へぇ〜? そんな大声出せたんだ紫女。ただ庇ってるだけなんじゃないの?」


「違うっ!!」


 ミアに煽られても、リゼッタは屈しない。いつもは大声を聞くと怯えている彼女の今の姿に、ミアは苛立っていた。


「なんなの? なんでおにいちゃんを撃った奴を庇うの? なんでミアが責められないといけないの??」


 ミアは不機嫌そうに言い捨て、全身から呪力を立ち昇らせる。その不穏な気配に室内の皆が身構える。


「ーーーあなたがそんなんだからでしょ?」


 だがそんな中、ミアに真正面から言い告げる者がいた。彼女は灰色髪を靡かせながら、堂々と近づいていく。ミアが額に青筋を作ってもお構いなしに。


「はぁ??」


「あなたに言ってるの。序列第6位の『黒薔薇』さん」


 ユニカは刺し殺すような視線を受けながらも、堂々と発言を続けるのだった。

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