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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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未来を左右する選択肢

 アイトは今、間違いなく窮地に立たされていた。


「君が天帝レスタなんでしょ?」


 ルーク・グロッサが、意識の無いカンナに剣を向けて呟く。まるで人質と言わんばかりに、剣先を彼女の白い頬へ向けている。


「‥‥‥え? 天帝レスタって、あの? 急に何を言ってるんですかルーク先輩」


 アイトは呆れたような声色で返事をする。どんな声色で言っても疑われてる以上、正解なんて存在しない。


「そもそもその少女は誰なんですか。いきなり剣を向けるなんて、温厚な先輩らしくないですよ」


 そしてアイトはカンナとは無関係であることを流れるように宣言する。だが、この言葉は誤りだった。


「君が僕の何を知ってるのかな?」


 ルークは僅かに剣先を近づける。カンナの頬に触れ、少しでも動けば鮮血は避けられない。アイトは額から汗を流す。

 対してルークは勝ち誇ったように笑い、語り出す。


「君のことはこの子から聞いた。君を始めとする構成員の詳細や潜伏拠点、それにこれまでの暗躍していた裏側をね」


(嘘だ。カンナがそう簡単に話すわけがない。もしそうだったら俺とカンナをすぐに殺さないのは不自然だ。おそらく俺が失言するのを待ってるんだ‥‥‥)


 アイトは慎重に思考を巡らせる。少しでも間違えれば取り返しがつかない事態になる。そして、言葉を返した。


「本当に何言ってるんですか? 訳わからないこと話され続けて頭が追いつかないんですけど‥‥‥」


「じゃあ少し話を変えよっか。さっき、僕の剣を躱したよね? あれはただの1年生に躱せるものじゃない」


 ルークが別視点から追及を始める。それはアイト自身が今の今まで、どう返事をしようか考えていた事だった。突然の不意打ちに身体が反応し、不自然な事実を残してしまったのだ。


「‥‥‥自分でいうのもあれですけど、俺は『同盟国交流戦』の1年代表候補に選ばれたんですよ? 多少優れた点くらいあると思います」


「言い直そうか。あれは1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。剣の才女システィアさんも躱せないだろうし、隊員のシロアも躱せないだろう」


「いや、そんなの実際にやってみなきゃ分からないと思いますけど」


「ああ、もちろん以前にやったことがあるよーーー君の姉さんにね」


 アイトは僅かに息を呑む。姉のマリアと比べられると、あまり強く言い返すと自身の実力詐欺がバレてしまう。アイトがそう意識している間にも、ルークは話を続けた。


「ちなみにマリアはね‥‥‥急に背中を打たれて怒ったよ。訓練の合間だから木剣だったけど、顔を真っ赤にしてね」


「‥‥‥」


 アイトは何も言い返すことが出来ない。黙っても怪しまれるが、適当に何か喋っても怪しまれる。なら、必死に頭で考える事ができる前者を選ぶ。


「少なくとも君は意図的に実力を隠してる節がある。魔闘祭の競技でも見てて違和感を感じたし、入学直後の武術大会もだ。けっこう前だけど覚えてるかい?」


「‥‥‥大会?」


 アイトは覚えているが聞き返す。ルークから少しでも言葉を引き出したいからだ。


「君は同じクラスのギルバート・カルス君と戦い、剣を弾き飛ばされて負けた。でもあの時、君が攻撃を防いだ位置は明らかに変だった。咄嗟に胸元まで剣を引き寄せた反射神経と技術は、明らかに並じゃない」


 アイトは内心で、やはりあれは失敗したと再認識していた。武術大会直後(注:2章の最初の方)も同じように後悔していたが。


「客観的に見ても、君は充分に怪しいよ。だから答えてくれるかな、全て」


「‥‥‥‥‥‥」


 アイトは思わず沈黙してしまう。これからどう行動するか、決めかねているのだ。今、目前には未来を左右する選択肢がいくつか広がっている。


 ①、最後までとぼける。

 秘密は明かさずに済むが、ルークが納得する可能性はまず無い。疑惑の目を向けられ続け、これまでの平穏は無い。そしていつか、破滅の時を待つことになる。それに、カンナの身も危うくなる。


 ②、全てを明かして交渉を試みる。

 秘密を全て明かすことで、ルークから恩赦を測ってもらえる可能性が僅かにある。だが自白する上にカンナを人質に取られているため、かなり不利。姉のマリアや学生にも知れ渡り、どんな展開になるか読めない。


 ③、逃げる。

 逃げることができれば、自分の身は助かる。だがカンナは間違いなく無事では済まない。それに自分がレスタだと自白してるのと同じで、家族や知人にも知れ渡る。そして、組織『エルジュ』からの信頼は地に落ちる。組織と国そのものを敵に回すことになる。


 ④、口封じのためにルークを殺す。

 一か八かで王国最強に本気で戦いを挑む。文字通りの死闘を制し、ルークの命ごと闇に葬る。だが王国の情勢が大きく揺れ動くことになる。そもそも勝算は分からないし、負ければ死ぬ。


 今のアイトが思いついた方向性が大きく異なる案はこの4つ。どれも生半可な覚悟では出来ない選択肢だ。


(やっぱり俺1人だと選べる行動に限りがある‥‥‥)


「どうしたのかな? やっぱり君がレスタってことで良いんだね? でもマリアには君のこと、なんて話せばいいんだろうね」


 ルークは沈黙するアイトへ話すことを促すように語りかけていた。心なしか彼が持つ剣の先端が僅かにカンナの頬に触れる。もう、迷っている時間は無い。


「‥‥‥わかりましたよ。白状します」


 アイトは、しっかりと見据えて呟いた。ルークが興味津々と目が見開かれている。次の言葉で、2人の行動方針が決まる。アイトは、ゆっくりと口を開けた。


「姉さんに色々期待されるから身体能力の事は隠してました。それについては申し訳ないです」


 その言葉に、ルークは少し眉を顰める。不機嫌である事を隠さず、少しぶっきらぼうに言葉を返した。


「‥‥‥わかってるよ。それよりも、早く続きを」


「続きって、何ですか? 隠してたことは全部話したんですけど‥‥‥」


 アイトは、はっきりと言った。そして、決意した。


「ーーーはぁ? まさかここまで来てレスタであることを拒否するのかい?」


「拒否? だからレスタが俺ってどういうことなんですか。さっきから何を言ってるんですか??」


 自分にできる4つの選択ではない、()()()()()()()()新たな選択肢を選ぶことを。だがそれは‥‥‥実行するには、どうしても時間がかかるのだ。


(これで後には引けなくなった。失敗すれば俺もカンナも、いや全て終わる。後は‥‥‥頼む、()()()


 そしてこんな窮地で()()()()()()()()()()()()。今どこにいるか、何をしているかも分からない仲間を。


 ◆◇◆◇


 同時刻。ユニカ、リゼッタ、ミストの3人は森の中を必死に走り続けていた。


「なんで彼は連絡に出ないの!?」


 ユニカは魔結晶を握り締めて眉を顰めるが、足は止めない。その隣を並走するミストが無愛想に理由を話す。


「あの人は()()()()()を最後に、『天帝』レスタに関係する物は全て【異空間】に収納すると言ってました。自分がレスタだと怪しまれる可能性を少しでも下げるために」


「‥‥‥なんて事なの。じゃあ今のローグくんは愛用の剣すら持ってないじゃない」


「やば」


 ユニカが顔を青ざめて呟くと、事の重大さを理解したリゼッタも短く反応する。ただ1人、()()()()()()()()()()ミストを除いて。




「あ、あのぉぉ!! 緊急事態ですっ、私のせいでカンナがルーク・グロッサの手に‥‥‥ぎゃぁぁ!!?」


『なんだって!? 奴の目的は!? ていうか悲鳴が聞こえるけど、そっちは大丈夫なのか!?』


 ミストはふと、坂を滑っていた時に行った連絡を思い出していた。


「ただ私は坂を滑ってるだけですので気にせずにぃぃ!!?」


『わ、わかった。それで奴の目的は?』


「奴の喋ってた内容から、目的は恐らく天帝レスタの正体かとぉぉ!!?」


『‥‥‥そうか。だったら、まだ助けられる可能性はある』


 その言葉は、今もミストの心に残っている。


「ぇ‥‥‥」


『ルーク王子は何となく勘づいているんだ。今回の試験の誰かがレスタだってことを。だから関係ない試験にわざわざ同行した』


「ぇぇ!!!?」


『もしかしたら、俺だと勘づいてる可能性すらある』


「そ、そんなぁぁ!! じゃあどうするんですぅぅ!!?」


 この時は坂を滑っていたが、ミストは会話の内容を全て記憶している。特に、ここからの話は印象的だった。


『‥‥‥策がある。この策は俺1人じゃ絶対にできない。ミストたちの力が必要不可欠だ』


「そんなのもちろんやりますよっ!! その策、教えてください!!」


『先に言っておくけど、その策っていうのはそっちの負担が大きすぎる』


「なんでもやってやりますよっ!! 私たちを舐めないでください!!」


 ミストが即座に言い返す事で、アイトは受け入れる。策を話すことをーーー。


『‥‥‥わかった。それはーーー』




「まずはちかづいて、それから‥‥‥」


 ミストはその策を、絶対に忘れないよう頭の中で反芻していた。


「剣を持たずに丸腰。しかもカンナを人質に取られてる‥‥‥そんな窮地を、彼は乗り越えられるの?」


 ユニカは呼吸すら忘れて、息を乱しながら絶望の感情を吐露する。リゼッタも心配そうに顔を下げる。


「‥‥‥あぁもう気が散る!! 愛しの天帝さまが心配だからって迷いを見せてどうするんですか!!?」


 痺れを切らしたミストは策の反芻を中断し、煽るように2人を叱咤する。


「はぁ!? 別に好きとかじゃないわよ!! ただ純粋に心配なだけで!」


 ユニカは心外と言わんばかりに声を荒げて反論する。特に恥ずかしがってる様子もなく、怒っている。


「りーは、すき」


 するとリゼッタは素直に気持ちを呟いた。声を荒げていたユニカも唖然とし、微妙な空気が流れる。それをミストがぶった斬った。


「ちなみに私はあの人大っ嫌いですよっ!! でも今はカンナが危ないから動いてるんです!! だから今は悩まず集中することが大事でしょう!?」


 ミストはしっかりと伝えたいことを叫んだ事で、2人にも届いた。


「‥‥‥その通りね。ミストさんがそれを言うかとは思ったけど」


「後半っ!! 何か言いましたか!!?」


「りょ。すこしだけ、おとな」


「元々リゼッタよりは大人ですけどぉ!!?」


 ‥‥‥少し小言を言われることになったが、ユニカとリゼッタの叱咤に成功する。ミストはため息をつきながらも、自身も集中力を高めていく。


(‥‥‥大嫌いですけど、実力だけは評価してます。だから絶対、あの王子相手に乗り切ってくださいよ)


 ミストは内心で祈りながら、アイトの元へ移動を続けるのだった。

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