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【50万PV突破!】いつ、この地位から離れよう。〜勇者の末裔を筆頭に、凄い人たちで構成された組織の代表です〜  作者: とい
9章 交流戦代表選抜試験

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1人は危険だよ

「〜〜〜〜〜ァァ!!!!」


 突然変異の魔物が絶叫し、必死に暴れ回る。かろうじて着地したジェイクとアヤメは、魔物の胸元を見続けるーーー魔物の胸元に剣を突き立てているシスティアを。


「ねぇ痛い? 痛いでしょ!? でもね、因果応報よ!? 誰かを傷付けたらその代償を払う!!」


 システィアは煽るような笑みを浮かべながら剣をぐりぐりと掻き回す。


「その自然の摂理から逃れられなかった、お前の力不足よっ!!!」


 そう言い放ち、勢いよく剣を引き抜く。魔物の黒い血飛沫がシスティアを染め上げる。


「ガ‥‥‥ァ」


 魔物は最期の瞬間までシスティアを叩き潰そうとして拳を振り下ろす。だが彼女の身体に拳が届く前に‥‥‥生き絶えた。


「相打ちにすら持っていけない時点で、底が見えてるっつうの」


 システィアは少し眉を下げながら呟くと、力尽きたように大の字に倒れ込んだ。


「さすがに心臓が止まると死ぬらしいわね‥‥‥」


 太陽の眩しい光に眉を顰めながら、仰向けのまま深呼吸する。僅かの間、システィアは勝利を噛み締めていた。


「まったく‥‥‥君は無茶ばかりするな」


 そんな彼女の気持ちに水を指すように、歩き寄ってきたジェイクは小言を呟く。彼の隣にはアヤメもいた。彼女は負傷した右手を隠しながらシスティアを見下ろす。


「こんなこと、今回限りだからね」


 そしてアヤメは忠告とばかりに呟いた。それを見たシスティアは鼻で笑い、小言を吐く。


「よく言うわよ。2回分の魔力を残してたくせに」


「ええ。手を組んだのが信用できない相手だったからね」


 まさに売り言葉に買い言葉。魔物を倒した後でもシスティアとアヤメは一向に仲が悪い。だが意外にもシスティアは余計な口を挟まずに上体を起こして、手を伸ばす。


「ヴァルダンくん手伝って。早くクラリッサを何とかしないと」


「そうだったな。急ぎ向かおう」


 ジェイクは即答し、システィアの手を掴んで立ち上がらせた。どちらも()()()()()行動だが、クラリッサを助ける事が最優先であるためお互いに何も言わない。


「‥‥‥なんで私には言わないの???」


 アヤメの怒りが籠った反応を無視し、システィアとジェイクは足早に重傷のクラリッサの元へ駆け寄る。


「ーーーあれって」


 するとシスティアは少し驚いた様子で声を漏らしながらも、必死に歩いて近づいて行く。木にもたれるクラリッサの他にも、2人の人影が見えるからだ。


「あれはっ‥‥‥ユリア王女と、『金剛』エルリカ・アルリフォンさんだ!!」


 するとジェイクが突然大声を出しながら走り出す。彼は明らかに後者に対して興奮しているようだった。 そこには重傷で動けないクラリッサの患部に触れて、何かを唱えているユリア。それを近くで見届けているエルリカ。


「ユリア王女、エルリカ先輩!! クラリッサ・リーセルは大丈夫なんでしょうか!?」


 真っ先に近くへ辿り着いたジェイクが声を出すと、ユリアとエルリカが気付いたように視線を合わせる。システィアとアヤメもやがて彼女たちの前にたどり着いた。


「あなたたちも無事そうで良かった」


 エルリカが立ち上がって3人と目を合わせると、アヤメが控えめな様子で尋ねる。


「あの、どうしてここに」


「さっきあなたたちが上空から落ちてくるのが見えたから。そしたら途中で重傷のこの子を見つけたの」


「そ、そうです!! リーセルは大丈夫なんですか!?」


 ジェイクがハッと思い出したかのように声を出す。するとエルリカは僅かに微笑みながら呟いた。


「この子は大丈夫よ。ユリアがついてるから‥‥‥だって、治癒魔法を使えるもの」


 そしてその理由を明かすと、システィアたちはそれぞれ声を出して驚きの反応を見せた。治癒魔法というのはそれほどまでに希少価値の高い魔法なのだ。


「だからこの事は他言無用よ。治癒魔法の存在が明るみになればユリアは危険に晒される。ユリアはただでさえ王女なのにあんな目立つ兄がいる‥‥‥とにかく絶対に人に話しちゃダメだからね」


 エルリカがしっかり口止めを促すと、ジェイクとアヤメは即座に頷く。王国最強部隊に所属するエルリカに言われれば従うのは至極当然。そもそも逆らう理由も無い。


「あのルーク王子の妹だけあって凄いですね。ということはステラ王女も何か隠してる事が?」


 だがシスティアはどこか探るように聞き返す。不遜極まりない態度に、エルリカは僅かに眉を顰める。


「もしそうだとしても、話す必要があるのかしら」


「いえ、無いですね。別に興味も無いですし」


「‥‥‥ほんとスカーレットの妹ってよく分かるわ」


 エルリカのため息混じりの言葉に、今度はシスティアが眉を顰める。


「あ、あの‥‥‥これでクラリッサさんは大丈夫だと思います」


 するとユリアが控えめな様子で呟いたことで、気まずい空気は流れていく。システィアがしゃがみ込んで容態を確認すると、安堵の息を吐いた。


「助かったわ、ユリア王女」


「いえ、とんでもないです。あの、同級生ですし王女呼びは止めていただけると」


「そう? だったらユリア、この爆弾女の右手も見てあげて。加減できずに自爆したらしいし」


「なっ、あんたに心配される筋合いなんて無いわよ!!?」


 アヤメが不服と言わんばかりに声を荒げると、システィアはしらけたように視線を逸らして息を吐く。ユリアは苦笑いを浮かべながらアヤメの右手に治癒魔法を施し始める。

 するとエルリカは少しハッとした様子で3人に話しかけた。


「ところでマリアの弟くん‥‥‥じゃなかった、アイトくんは一緒じゃないの? てっきり1年生たち全員が集まってると思ったんだけど」


「あっーーーそうだった!! 早くアイトくんに合流しないと!!」


 その言葉を聞いたアヤメが突然身体を震わせて走り出そうとする。だが治癒中であるユリアと近くのジェイクが引き止める。


「あ、アイトくんとは戦いの最中にはぐれてしまって‥‥‥追いかけたい気持ちは分かりますが、今は治療が優先です!」


「そうだぞクジョウ。少しでも万全を期すべきだ」


 ユリアは治癒魔法を継続しながら必死に訴える。ジェイクもそれに賛同した。


「っ‥‥‥」


 治してもらっている立場であるアヤメは、言い返せない。今は一刻も早く右手が治るよう祈る事しかできない。そして治り次第すぐに動き出す決意をアヤメは固めていた。


(ユリア・グロッサ‥‥‥何か隠してるわね)


 だがただ1人、システィアだけは訝しげにユリアを注視している。疑う理由はいくつかある。


 『アイトとユリア王女が別の魔物と戦ってる』。クラリッサとジェイクが合流した際に聞いた言葉だ。

 つまり少なからずユリアはアイトと行動を共にしていた。それと近くに魔物の気配を感じないということは倒したという事。そんな状況ではぐれたというのは少し違和感を感じる。

 そして何より、ユリアの目元。少し赤くなっており、何度も擦ったような跡がある。


(王女を泣かせるなんて、ほんと癪に障る奴)


 システィアは内心で愚痴を漏らすと、1人で行動を続けるアイトに腹を立てた。まるで常に自分の先を行っているような感覚に陥り、苛つく。

 すると突然‥‥‥どこかで爆発したような音が発生し、システィアたちの所まで響き渡る。


「もしかしてアイトくんの身に何かっ!!?」


 真っ先に反応して声を出すアヤメを無視し、システィアはますます苛つきを覚える。ユリアは少し顔を下げて俯き、ジェイクは溜め息をついている。


(あの男の力を見損ねたっ‥‥‥!!!)


 システィアはさぞ悔しそうに唇を噛み、音がした方角を睨み付けるのだった。


 ◆◇◆◇


 同時刻、ヴェルノ森の端部分。縦に真っ二つに切られた魔物が崩れ落ちるように倒れ込む。


「はぁ、はぁ、散々暴れるし。やっぱ温存してて正解だった」


 少し息を切らしたアイトが黒く染まる剣を振って、魔力と血を落とす。彼の必殺剣【ブラックソード】により、魔物は既に生き絶えていた。

 とは言っても一撃では到底斬ることはできなかった。黒く染まった剣で何度も傷を付けていき、やがて剣の攻撃力が魔物の皮膚の硬さを上回ったということである。実際、疲れを感じる程度に魔力を消耗していた。


(とりあえず謎の魔物は倒した。あとはクラリッサたちが相手してるはずの魔物だけ。もう倒してるのか、それとも苦戦してるのか‥‥‥)


 アイトは聖銀の剣を鞘に納めると、空間魔法【異空間】に収納する。自分が『天帝』レスタであると示す重要な証拠になるからだ。現在、アイトは秘密組織『エルジュ』に関係する物は何も持っていない。

 そしてアイトは息が整い次第、走り出す。1年生たちが無事か早く知りたいのと、魔物を倒した現在地から離れたいからだ。彼の場合は特に後者である。『天帝』の顔を持つ自分は、疑われたら厄介なことになると分かっているから。


(それに、まだ問題が‥‥‥)


 アイトは浮かない顔をしながら暫く移動を続けていると、人の気配を感じ取って立ち止まる。やがて木の裏に隠れていたその人物が、少し溜めを作ってから出て来た。


「やあ。こんな所で1人は危険だよ、アイトくん」


 その人物はいつも見る笑顔を作りながら、アイトへ話しかける。アイトは少し困惑しながらも、声色を変えずに言葉を返す。


「ルーク王子こそ、何やってるんですか?」


 そう聞き返されたルーク・グロッサは、目を合わせて笑い続けるのだった。

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