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「ごめんな」と男はもう一度言うと、のっそりと立ち上がる。もう肩で息はしていなかった。崩壊しかけている核との繋がりがなくなったからかもしれない。
それでも生気の感じられない後ろ姿で、のそのそと部屋の出口へと向かっていく男の背中を呼び止める。
「待って。あなたはこれからどうなるの?」
「さっきマザー・ソルが言っていただろ。私は、ルナとなるのさ」
僕の呼び止めに、男は振り返って答えた。
「そう言えば、先生がさっきそんな事を言っていた様な。ルナと言うのは?」
「Earthに付き従うようにして光っていた金色の光がルナだ。歴代の世話役は皆、役目を終えた後は、ルナになっているんだよ」
「みんな? みんながルナに? これからは、ルナの世話役になるということ?」
「いや、ルナに世話役はいない。ルナは、マザー・ソルのお力で光り輝いているだけだ」
「じゃあ、ルナになるとは、どういうことなの?」
「さぁな。私もルナになるのは初めてだから、よくは分からないけれど、世話役とは違って、直接箱庭に力を使うことは出来ないけれど、近くで見守り続ける事が出来るのだと聞いている」
「そうなんだね」
「ああ。だから、私も歴代の世話役たちも、皆が、キミとキミの箱庭を見守っているからね。地球を、Earthを頼んだよ」
それだけ言うと、男はまたのそのそと歩いて、外へと繋がる扉を開けた。去り際、顔だけをクルリとこちらに向けると、思い出したと言うように、口を開く。
「そう言えば、キミは箱庭の核を受け継いで、世話役になったんだ。これからは、先生のことは、『マザー・ソル』とお呼びするんだぞ。もう、彼女の配下に入ったのだから」
「マザー・ソル……」
僕がボソリと、先生の呼び名を口にしている間に、男は、パタンと扉を閉じた。部屋には、静寂だけが残されていた。
僕は、階段を上り、箱庭を覗き見る。
僕と繋がった『地球』は、先ほどよりも少しだけ青い光を強め、輝いている。
やはり、きれいだ。まさに今、内側から崩壊しているなんて思えないくらい美しい。
そんな事を思いながら、青い光に目を奪われていると、隣の金色の球が、一瞬だけ白く輝いた。
あの人が、ルナになったのだろうか。
白い光は、本当に一瞬のことだった。その後は、相変わらず淡い金色の光を放ちながら、青の光のそばを、つかず離れず、そっと寄り添っている。
それは、去り際にあの人が言っていたように、優しく青の球を見守っているように見える。




