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ソーセージを片手に、出発



 夏休みまで残り1か月もないので、俺は魔王城へ向かうため、町を出た。

 メンバーはもちろん、俺とポメラの2人だ。俺は、ソーセージと革の胸当てを装備して、剣士風の格好だ。ポメラもなぜか剣を背負っているが、着ているものはローブで、魔法使い風だ。実際、俺もポメラも護身程度には剣をつかえるし、簡単な魔法も使うことができる。


「ポメラは剣より魔法の方が得意だったよな?その剣は邪魔じゃないか?」

「なら、あんたが持ちなさいよ。あんたの装備がソーセージだから・・・そんな装備、盗賊に襲ってくださいって言ってるものだわ。だから、私が剣を持っているのよ。」

「お前、相棒を馬鹿にするな!いいか、このソーセージはすごいんだぞ!食べられるんぞ!」

「それは・・・普通よ。ソーセージは食べ物ですもの。」

「いや。俺は知っている。世の中には、食べられないソーセージもあるんだ。そう、ブルーソーセージ・・・悲劇の発明だ。」

「何言ってんのよ。アホなこと言ってないで、少しは周りを警戒してくれる?ここら辺出るらしいから。」

「盗賊か?確かに、こんだけ暗いと闇に紛れて襲い掛かってきそうだな。」

 俺たちが今通っている場所は森の細道だ。昼間だというのに、背の高い木のせいか、辺りは薄暗くて気味が悪い。


「盗賊なら私が焼き殺すけど、違うのよ。ここら辺は、幽霊が出るらしくって。」

「焼き殺す!?それはやめないか。友達が人を焼き殺すところなんて見たくねーよ。焼くならソーセージにしてくれ、いい匂いだし。それで、幽霊って、魔物か?剣で倒せないのか?」

「幽霊は幽霊よ。死んだ人間の魂的な何かよ。魔物ではないと思うわ。」

「・・・悪いなポメラ。俺は、そういう非科学的なものは信じないんだ。盗賊の方を警戒するよ。」

「魔法を使うくせに、何言ってるわけ。」

「お前こそ何を言っているのか。魔法は、科学だぞ?」

「魔法はファンタジーよ。むしろ、ファンタジーの代表と言ってもいいわ。」

「魔法なんて、魔力というエネルギーを変換させて、様々な現象を起こしているだけだ。ほら、科学だろ。」

「そういわれてみれば・・・て、騙されないわよ。もうこの話はいいわ。どれだけ主張したって、お互い一歩も引かない者同士ですもの、無駄だわ。」

「同感だな。ま、俺にとって魔法も科学も変わらないってことだ。だって、科学とかさっぱりなわけだし。蒸気機関車の仕組みとかわけわかんねーし。」

「そうね、私もわからないわ!でも、それでいいと思うわ。だって、仕組みが分からなくたって、蒸気機関車は利用できるもの!」

「だよな!」

 俺たちは満足げに微笑んで、先に進んだ。



 盗賊にも幽霊にも襲われることなく、今日の目的地である村に到着した。

 すでに日が暮れていて、泊まる場所を急いで探さなければと、速足でそれらしき建物に入った。それほど急ぐ必要はなかったかもしれないが、初日ということもあり不安だったのだ。


「よかったわね、部屋が空いていて。」

 夕食を宿の食堂でとって、俺たちは用意された部屋に入った。


「あぁ。せっかく村に来たって泊まれなければ野宿だからな。本当に良かった。」

「・・・ねぇ、なめてるの?」

「いや、だって・・・この部屋しか空いてなかったんだよ。」

 少し狭い部屋に不釣り合いな大きなベッド。ダブルベッドというやつが、俺たちの前に鎮座している。


「別に文句はないわ。ただ、あんたが馬小屋で寝てくれればね。」

「俺は馬じゃないんでね。それに、この宿に馬小屋はないぞ。」

「村の入り口の民家にあったわ。今から頼んできたらどうかしら?」

「嫌だ。あのな、わがまま言うなよ。どうせこれから野宿したりする時には、そばで寝ることになるんだ。別にいいだろ?」

「あんた、私を何だと思っているの?」

「町一番のお金持ちのお嬢様。」

「・・・否定はしないけど、そう、お嬢様ってことは、私は女の子なのよ?それで、あんたも女の子なの?」

「お前、俺が女に見えるのか?よし、いいもの見せてやるからちょっと来い。」

「嫌に決まってるでしょ。だいたいあんたが男なのは分かっているのよ。つまり、そういうことなの。年頃の男女が一つ屋根の下にいるのはよろしくないのよ。」

「なら、同じ宿にも泊まれないな。」

「屁理屈を言わないの。ほら、出ていって。」

「・・・せめて、床に・・・」

「いいわよ。」

「やっぱダメか・・・って、いいのか!?」

「ただし、ベッドに一歩でも踏み込んできたら・・・つぶすわ。」

「ごくっ・・・何をかは聞かないぞ。」

 少々もめたが、最後は同じ部屋で寝ることになった。

 本当はふかふかのベッドで寝たかったが、さすがに一緒に寝るわけにもいかないし、つぶされたくはない。


 固い床に寝ころべば、寝つきがいいポメラの寝息がもう聞こえてきた。いくらなんでも早すぎだ。俺を試しているのか?寝込みにベッドへと侵入すると思っているのだろうか?




 そっとベッドをのぞいてみると、こちらに背を向けているポメラがいた。ここからだと起きているのかどうかはわからないが、おそらく寝ているのではないかと思う。


「信用されていると喜べばいいのか、警戒心がないさ過ぎると叱ればいいのかわからないな。だが、喜んでおこう。部屋を追い出されても嫌だからな。」

 俺はそのまま床に横になって、身体が痛くなりそうだとため息をついて眠った。



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