無理なんてない2
前校2年のとき転校してきたポメラは、最悪なお嬢様だった。でも、俺は意地でも友達になろうとして、話しかけた。だが、返ってくるのはひどい言葉ばかりで、正直心が折れそうだった。
「貧乏貧乏って・・・確かに、俺ん家はしがないソーセージ屋で、利益度外視の商売してるけどよ、そんなに言う事ねーだろ、あのお嬢様・・・」
気づけばため息をついていた俺は、声を上げて憂鬱な気分を吹き飛ばした。
「こんな時は、ソーセージだ!もうおやつの時間だし、今日は外で食べるかな。」
俺は家のソーセージを一本取って、外へ出た。公園の木に登って食べようと思い、俺は公園に行くために商店街を通った。串焼き屋なんかもあるので、辺りはお腹がすくようなにおいがする。
「いやいや。俺にはこのソーセージがあるからな。金はないけど、ソーセージはある。」
串焼きの誘惑を断ち切って歩く俺の前に、誘惑に負けそうな少女が目に入った。白いワンピースを着た少女は、一目でいいところのお嬢さんとわかる。つまり、ポメラだった。
「ポメラ?」
「っ!何よ庶民。」
名前を呼ばれびくついたポメラだったが、俺だとわかり腕を組んで威圧的な態度になる。しかし、そのあとすぐにきゅうっと可愛い音が鳴って、顔を真っ赤にさせた。
「なんだ、腹減ってんのか?」
「ち、違う・・・うぅ。」
もう一度鳴った腹の音に、涙を浮かべるポメラ。俺はその手を取って、走り出した。
後ろで文句を言われたが、無視して走る。
連れてきたのは、もちろん公園だ。
「ポメラは、木登りはしたことあるのか?」
「そんな下賤な事、するわけないでしょう。」
「ふーん。なら木の上から見る景色を見たことがないのか。もったいないな。」
「・・・そんなもの、見たくないわ。」
「もしかして、怖いのか。木登り。」
「こ、怖くなんてないわ。そんなに言うなら登ってあげてもいいわよ。」
「なら来いよ。」
俺はさっさと登り始めて、ポメラを見下ろした。
「・・・わかったわよ!」
慣れない動きで木に登るポメラを、俺はお気に入りの場所で待った。そして、たどり着いたポメラに手を伸ばす。
「俺、ここの景色が好きなんだ。」
木の枝の上に座って、足を投げ出している俺と同じように足を投げ出すポメラだが、やはり怖いようで俺に抱き着いていた。
「た、高いわ。」
「ポメラ、前を見ろよ。」
ポメラは顔を上げたが、その目は俺を見ていた。
「俺じゃなくて、あっち。いつも下から見える景色を上から見るって、新鮮で面白いよな。」
「・・・」
なんと言っても、ポメラは俺か木の下を見るだけで、俺が好きな景色を見なかった。そのことにちょっと怒ったが、ポメラがお腹がすいてることを思い出し、俺は懐からソーセージを出した。
「あげる。」
「・・・これって。」
「俺のところのソーセージだよ。おやつに持ってきたんだけど、あげる。」
「あなたのは?」
「俺は家に帰ればたくさん食べれるから。金はないけど、ソーセージはたくさんあるんだ。ソーセージはすごいんだぞ。お腹を膨らませてくれる。お腹が膨らむってのは、幸せな事なんだ!」
「・・・それって、私を幸せにしたいってこと?」
「?」
「仕方がないわね。食べてあげるわ!」
「なんでそんなに偉そうなんだ?」
「それは、私が偉いからよ?でも、そうね。あなたとは今から友達だから、対等に見てあげるわ。感謝しなさい!」
「・・・?ありがとう?」
「どういたしまして。」
満面の笑みを浮かべて、彼女はソーセージを食べ始めた。
つまり、ポメラは餌付けすると友達になれるお嬢様だったのだ。
「そうか・・・」
俺はポメラとの出会いを思い出して、気づいた。
「早速、とりかかろう。」
するべきことを見つけた俺は、立ち上がって研究室に向かった。手始めに親父のボディにこぶしをめり込ませた。
夕刻。
「できた・・・完成だ。」
「いや、まだだハム。更に白いコーティングをするべきだ!」
「黙れ、クソ親父!」
「くはっ」
俺の作品を台無しにしようとするカビ男をのして、俺は作品に手を伸ばした。掴んだ感じが驚くほど手になじみ、思わずため息がこぼれた。
「ハム、いる?」
「ポメラっ!良いところに来たな!」
研究室の扉を開けて顔をのぞかせるポメラに近づいて、その体を抱きしめた。
「え、ちょちょえ?」
「ポメラ、お前のおかげだ、ありがとう。」
「いや、まだ渡してないけど?」
「何の話だ?いや、まずはこれを見てほしい。」
俺はポメラに作品を披露した。ポメラは口を開けて驚いている。
「あんた、その馬鹿でかいソーセージをどうするつもりよ。」
「馬鹿・・・とは聞き捨てならないな。この素晴らしい作品に対して失礼だろう?ま、ポメラだから許すけど。」
「わ、私だから・・・そ、そう。そうね、馬鹿は失礼だったわ。でも、その素晴らしい作品を馬鹿にしたわけではないの。私が馬鹿にでもなったのかと思ってしまうくらい、素敵な作品という事よ。」
「ははっ。ポメラは面白いな!」
ポメラは最初から馬鹿だろうに。
「ポメラ、俺はこのソーセージを相棒に戦うことにした。ソーセージ屋の息子らしくていいだろ?」
「え!?・・・あ、まー・・・そうね。」
なぜか遠い目をするポメラが心配になったが、それより気になるものを見つけた。
「その白い布が巻いてあるのって、もしかして剣か?早速おじさんに借りてきてくれたんだな、ありがとう。でも、俺の相棒はこれだから・・・ごめんな。」
「・・・いいのよ。もう、仕方がないわね。」
こちらに微笑みを浮かべたポメラは、ものすごく可愛かった。
(まさか、ソーセージで魔王に挑もうとか、本気で思うなんてね。でも、そんなハムも・・・)
「いいわね。」
「何が?」
「もちろん、その素晴らしいソーセージの話よ。」
「ポメラは話の分かるやつだな!」




