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神父なんて誰が言いました?



「お金がないとおっしゃっていましたね。なら、私がスポンサーになりましょう。」

「旅の間金に困らなくしてくれるってわけか?」

「はい。」

「ちなみに、その金はどこから?まさかお布施じゃないよな?」

「違いますよ。あぁ、この格好だと勘違いしますよね。私は、とある貴族の3男です。」

「え?貴族?」

「でも、その恰好は・・・神父ですよね?」

「私は雇われ神父というものでして、神父ではないのです。雇われている期間だけ神父として教会にいます。聖魔法を使えるおかげで、仕事には事欠きませんね。」

「ポメラ、よくわからないんだが、こいつは神父なのか?」

「・・・今は神父なのよ。でも、神父じゃない日もあるの。」

 ポメラとこそこそ話していれば、神父は面白そうにこちらを見ていた。


「お前のことはよくわからないから、とりあえず考えないことにしておく。」

「私の事なんて、ただの聖魔法の使い手だという認識で十分です。」

「そうか。それで、俺のスポンサー?になって、お前は何を望むんだ?」

「ポメラさんを。」

「はっ!?」

「え!?」

 思わず立ち上がって、神父を睨みつけた。


「あー、落ち着いてください。言葉が足りませんでしたね。別にポメラさんをお嫁さんにしたいというわけではありません。もちろん、ポメラさんがよろしければ迎え入れる用意はしますが。」

「紛らわしいな。」

「・・・そ、それで?私に何を望むのかしら?」

「聖女になっていただきたいのです。」

「聖女?」

「お前、聖女って・・・ははっ。」

「何がおかしいのよ!」

「ポメラはこんな感じの、残念お嬢様だぞ?聖女って柄じゃねーよ。」

「それでもいいのですよ。私が求める聖女は、慈悲深い人格者などではなく、闇を光に変えるような能力のある者ですから。つまり、聖魔法を極めてほしいのです。」

「それならポメラにもできそうだな。良かったな。」

「あんた、覚えておきなさいよ。それで、なんで私なの?別にあなたが極めればいいと思うけど。」

「私の能力では、もう限界が見えてしまったのですよ。だが、私は更なる高みを見てみたいのです。ですから、才能のある方を探していました。つい3日ほど前から。」

「3日!?それは・・・よかったな、早く見つかって。」

「えぇ。」


「それで、ポメラさん。どうでしょうか?私の下で聖魔法を学んでいただけますか?」

「わかったわ。むしろこっちからお願いしたいくらいだし・・・こほん。ご指導のほどよろしくお願いします。」

「かしこまらないでください。私は、人にかしこまられるのが苦手でして・・・それに、自然体のあなたは魅力的です。」

「口説くんじゃねー。」

「何?妬いてるの、ハム?」

「誰が妬くか!」

「ふふっ。」

「笑うなー!」

「仲がよろしいですね。ハムさんの隣にいるあなたが、一番輝いています。さて、本当はこの町で学んでいただければと思いますが、お2人は旅を続けるのですよね?」

「あぁ。あと2、3日でこの町を出るつもりだ。」

「この町でのご予定は?」

「私は特にないわ。早速明日からでも始められるわよ。」

「俺も、明後日相棒を取りに行くだけだ。」

「あ、ハムさんは別にいいですよ。ポメラさんだけ来ていただければ結構です。」

 俺はお呼びではないようだ。


「そうですね。明日も教会にいますので、声を掛けてください。朝食を取った後に来ていただければ、ちょうどいいかと思います。私も神父の仕事がありますからね・・・」

「わかったわ。」

「送り迎えは俺がするからな。帰りはどれくらいになる?」

「いらないわよ。教会を往復するくらいできるわ。」

「帰りは私が送りましょう。」

「俺がするって言ってんだろ?」

「おやおや。では、夕食時にお願いします。」

「わかった。」

「あんたたち、私の話を聞きなさいよ・・・」

 ほほを膨らませて抗議するポメラに、神父は微笑んだ。


「ポメラさん、今日は暇な時でいいので自分の中にある魔力と向き合ってみてください。」

「魔力と向き合う?」

「はい。自分の中にある魔力を感じとり、どのような魔力なのか・・・意外と知らない人は多いですからね。だいたい残りの魔力はこれくらいと感じることはあるでしょうが、もっと他にもわかることはあると思いますよ。」

「具体的に何をすればいいの?」

「それは人それぞれですね。残りの魔力を感じる要領でとりあえずやってみてください。」

「わかったわ。」

「それって、なんのためにやるんだ?」

「自分の魔力の特性を理解する為です。魔力は魔法の源ですが、魔法に種類があるように魔力にも種類があり、適性なんて言われ方もしますが・・・火の魔法の適性があると言われた人は、魔力は火の魔法向けということです。」

「適性は聞いたことがあるな。適性があるやつは、他の奴より強い魔法になるとか。」

「そんな感じです。逆に適性のない魔法だと、魔力を普通より多く消費し、威力も弱いものになるのですよ。」

「ふーん。」

「なんだかハムも神父様に講義してもらった方がいい気がしてきたわ。」

「いや、俺はいいよ。これ以上話されると寝そうだし。」

「魔法には興味がありませんか?」

「俺は、ソーセージにしか興味が無くてな、悪いな。」

「ソーセージですか・・・」

「あんた、そこは剣とか言っときなさいよ。いきなりソーセージとか言われたって、普通の人は驚いて言葉も出ないわよ。」

「お前はそんなことないよな?」

「あんたとの付き合いは長いからね。神父様、今日はありがとうございました。明日からよろしくお願いします。」

「えぇ。こちらこそ、よろしくお願いします。私に更なる高みを見せてくださいね。」

「・・・頑張ります。」


 俺たちは教会を後にした。


「あ、そういえば神父の名前ってなんだ?」

「聞いてなかったわね。明日聞きましょうか。」



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