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危険なのは、あんたの方



 胸騒ぎと、謎の声で不安になった俺は、全速力で宿に戻りポメラの部屋の前まで来ると、扉をたたいた。


「ポメラ!いるか!お願いだ、ここを開けてくれ!」

「うるさい!話しかけてこないでって言ったでしょ!」

「・・・いるのか。」

 ポメラの声を聞いたとたん、不安も焦りも消えてただほっとした。


「全く何なのよ・・・ひっ!?」

 扉を開けたポメラは、俺の背後を見て慌てて部屋に引っ込んだ。扉も閉められ、鍵をかける音までした。


「ポメラ?」

「・・・あんた、後ろの人は誰よ。他にも人がいるなら教えてよ、驚いたじゃない。」

「後ろ?」

 俺は振り返ったが、もちろんそこには誰もいない。宿には一人で帰ってきたので、ソーセージ屋もいないし、俺一人だ。


「誰もいないが?」

「・・・気のせいだって言いたいの?」

「いや、だって誰もいないぞ?」

「・・・」

 鍵を開ける音がしたので、俺は扉を大きく開けた。すると、ノブを持っていたポメラが引っ張られるようにして外に出る。その顔は青ざめていた。


「どうした、体調が悪いのか?だから顔を見せてくれなかったのか・・・」

「・・・う、後ろ。」

「?」

 もう一度後ろを振り返るが、もちろん誰もいない。


「本当に大丈夫か?今からでも遅くないから、医者に診てもらおう。」

「・・・わかったわ。でも、行くのは教会よ。」


 ひっ


「ん?」

 背後から声が聞こえた気がしたので、もう一度振り返ったがやはり誰もいなかった。


「よかった。教会で大丈夫そうね。さ、行くわよ。」

「よくわからないが、それでポメラの体調がよくなるなら行くか。」

「・・・」



 教会は、町の中心部に立派なものが建っていた。ウチの町よりも大きく凝った作りをしているので、この町の人たちは信心深いのだろう。俺は、幽霊と一緒で信じていない。


「あ、シスター!」

 教会の中に入り、椅子を拭いているシスターにポメラは駆け寄って話をした。ポメラがここまで信心深いとは思わなかった。将来はシスターにでもなるのだろうか?

 2人が話している間することが無かったので、近くの椅子に腰を掛けてステンドグラスを眺めた。きれいだとは思うがそれだけで、別に何かを感じることはない。

 あ、でも肩は軽くなったかもしれない。疲労回復の効果があるのか?


「こんにちは。ステンドグラスがお気に召しましたか?」

「え、あぁ。」

 俺の隣に立った神父が、突然声を掛けてきたので曖昧に返した。


「神父様!」

 嬉しそうに神父に駆け寄るポメラを見て、少しもやっとした。

 神父はポメラにうなづいて、俺の方を見た。いや、俺の背後を見ているようだ。


「さて、目の前から消えるか、存在を消されるか。好きな方をお選びください。」

 にっこりと笑う神父の目は笑っておらず、ぞっと寒気のする目だ。神父の顔を訳が分からず見るが、やはり神父は俺の背後を見ている。先ほどの言葉も俺に向けたものではないようだ。


「俺の背後には誰もいないぜ?」

「・・・そうですね。では、消しましょうか。居ないものを消しても、誰も悲しみません。」

「いや、居ないものは消すことはできないだろ・・・」

「ハム、神父様に従って。あんたの背後には何かいるのよ・・・」

「・・・ポメラ、俺はそういうのは信じない。でも、ポメラがそれで安心するなら・・・その何かを消して欲しい。」

 最後は神父を見て言った。神父は俺の方に視線を移し、慈愛に満ちた微笑みを浮かべ何事かつぶやいた。それは、魔法を使った様子で、次の瞬間に背後から悲鳴が聞こえて、辺りが光に包まれた。


「まぶしっ!?」

「すぐに収まります。」

 光がおさまり、神父とポメラは俺の背後を見て、安心した表情をした。まるで、悪い何かが消えたかのように。



「あの森を通ったのですか・・・なら、そこでついてきたのでしょう。」

 神父にここまで来た道のりを話せば、そう返ってきた。あの森とは、ポメラがでると言っていた森の事だろう。


「あの霊は危険なものなのですか?」

「そうですね、あの時点ではそれほど危険ではありませんでしたが、力をためるとそれは危険な存在です。とりつかれている方も、今回はハムさんの事ですね、生命力を吸われるので危ないです。」

「俺は元気だぞ。」

「それはポメラさんのおかげでしょう。」

「え、私?」

「はい。ポメラさんは、聖魔法の才能がありますね。漏れ出る魔力に少しですが聖なる魔力を感じます。それが、霊たちの力を弱めるのですよ。人には癒しを与えるものですから、近くにいる人間はその恩恵を得られます。」

「私にそんな才能が・・・信じられないです。」

 なんだか心配になってきたな。今までの流れが、俺にとっては悪徳商法の流れとしか思えないんだが。変な教材とか買わされないよな?


「よろしければ、少し学んでみませんか?私も聖魔法は扱えますので、あなたさえよければ喜んでお教えしますよ。」

「本当ですか!」

「ちょっと待った!」

 俺は乗り気のポメラが返事をする前に会話に割り込む。


「何よ。少しくらいいでしょう?」

「確かに、ポメラが強くなることは良いことだ。だが、問題は金だ。いくら竜を売ったからと言って、高く売れたわけじゃない。結構安めに買いたたかれたからな、余裕がないんだ。装備にも使ったし。」

「・・・そうなの?なんで高く売らなかったのよ?」

「大金を動かすのには時間がかかるし、俺たちに必要なのはすぐに用意できる金だと思ったからだ。後は、この町の人間に確実に買ってもらうためだな。高くて誰も手を出せなかったら、それこそ無駄だからな。」

 俺がポメラに説明していると、神父が手を挙げた。


「いいですか?今の話を聞く限り、あなたは、いえあなた様は、勇者様なのでしょうか?」

「・・・一応な。」

「やはり。勇者様が竜を倒し、その恩恵を町に与えてくださったことは聞いております。町を代表して、私からお礼申し上げます。ありがとうございました。」

「あーいいよ。聞いていただろ?俺たちも金が必要だったから、お互いに良い取引だったってことだよ。」

「では、私ともいい取引と行きませんか?」

「え、神父が?」

 俺は、微笑みを浮かべる神父をまじまじと見て、とりあえず話を聞くだけ聞くことにした。



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