ウェンズ共和国
研究施設を通り過ぎ、国境をまたぎウェンズ共和国の首都マラノクスに到着したシン達ラピス王国の使者団。
途中魔獣に襲われたりもしたが、王族専用車両が頑丈だったので、リリアナに怪我などなく、戦闘においてもナナの活躍で対して苦戦することなく辿り着くことが出来た。
「ここがマラノクスか、思ったより活気がないな」
シンの言葉通り、マラノクスは何か重い空気に包まれている。
「水不足が相当深刻なようだな、これは早く同盟を結ぼう、これではここに住む人達が危ない」
エルリックがマラノクスの現状に顔をしかめる。
確かにこの国の人達は皆痩せ細っている、これでは長く持たないだろう。
「私は、マラノクス城に向かいます、シン様は宿を取っておいて下さい。交渉は私とエルリックの仕事です」
俺来た意味なくね?と思ったが大人しく指示に従う事にする。
リリアナとエルリックは俺より頭がいいし、俺は王族との謁見などの時の礼儀を知らないかえっていない方がいいだろう。
「わかった、なら先に宿に向かっておく、交渉は任せたぞ」
ナナを連れ歩き出す、宿は高そうなところならリリアナも問題ないだろう。
というかメイドさんが案内してくれる見たいだ。
「ではエルリック、行きますよ」
エルリックを連れ、マラノクス城に向かうリリアナ達、緊張しているんだろう。ちょっと動きが硬い。
「まあ、なんとかするだろ」
ここでは俺がする事は少なそうだ。
観光でもしてるか、そう考え宿に向かう。
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「明日デウメス王との謁見が出来るようです。今日は明日に備え体を休めましょう」
先に宿で休んでいたシン達にリリアナが言った。
さすがに王とはいきなりは会えないようだ。
だが明日には会えるのでさすがは王女様と言うことだろう、しかし何日滞在するのだろうか?
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王との謁見の為エルリックを連れリリアナはマラノクス城に入っていた。
さすがは王城と言ったところだろう、謁見の間は王国よりも豪華ではなかったがそれでも立派なものだった。
「そなたがラピス王国第2王女リリアナであるな、儂がウェンズ共和国国王デウメスである」
中央の玉座に座り、初老の男性が言う、彼がウェンズ共和国国王デウメスだ。
貫禄を感じさせる威圧感を放っている。
「お初にお目にかかります、ラピス王国第2王女リリアナでございます、こちらに控えるのはラピス王国軍小隊長エルリック・ニールセンです」
自己紹介と少し後ろに控えているエルリックの紹介をするリリアナ。
エルリックは名前を呼ばれると敬礼を行う。
「ほう、噂に聞く王国の兵士ではないか、そなたの活躍は聞き及んでおるぞ」
エルリックの活躍はすでにデウメス王の耳にも入っていたようだ。
「光栄にございます、しかし私はまだまだの未熟者です。自分の至らなさは常々感じております」
「若いのに部をわきまえておるな、気に入ったおぬし共和国に来ないか?」
謙虚なエルリックに好感を持ったデウメス王はエルリックの引き抜きを考えていた。
だがそんな事はリリアナが許さない。
「デウメス王、エルリックは我が王国の宝です。ご冗談はおやめ下さい」
「はっはっ、リリアナ王女はなかなか冗談が効かないようだ、そう本気にするでない。こちらにそんなつもりはない」
口ではそう言うが共和国は戦力をほとんど傭兵に頼っている。
本音はエルリックのような有能な人材を確保したいのだ。
「それでリリアナ王女よただ話をしに来たわけではあるまい、何かあるんだろう?」
デウメス王はリリアナに早く話に入るよう催促する。
リリアナとしても早く同盟を結びたいので話をする。
「はい、此度は我がラピス王国とウェンズ共和国の同盟を求めて、王城より参った次第でございます」
「同盟とな、何を求めるのだ」
本題に入ったので顔をいっそう引き締めたデウメス王が問いかける、リリアナも真剣に答えを言う。
「現在、我がラピス王国とミリス皇国は戦争をしております。戦争は長年続いているのでご存知の事だと思うのですが、現在我が王国は皇国に対し少々不利な立場におります。そのためデウメス王との共和国と同盟を結び、共和国には戦争の際王国に手を貸して頂ければと思いこのマラノクス城まで参りました」
言い切ったリリアナは他にわからないように息を吐く、初めての交渉なのでやはり緊張が取れないのだ。
「ふむ、では王国はウェンズ共和国に何をしてくれるのだ?戦力を貸すのだそれなりのものでなければ同盟は結べんな」
用意していたようにデウメス王は言い放つ。
デウメス王もリリアナが来ると知り、目的が同盟であろう事はわかっていた。
「はい、現在共和国は深刻な水不足にあるご様子、ここに来るまで街を見て参りましたが民も苦しんでいる様です。王国からは水の提供をいたしましょう、悪い話ではないはずです」
リリアナは自信を持って宣言した。そう言い切れるほど共和国の水不足は深刻だった。
「それだけか、それでは話にならんなこの同盟は無しだ。せっかく来ていただいたがお引き取り願おうか」
だが自信を持って言った提案はすぐさまデウメス王に断れてしまった。
その事実が受け止められなかったリリアナだが、同盟をなんとしても結びたいのでここで引き下がる訳にはいけない。
「ですが、共和国の水不足は深刻です。こう言ってはなんですがこの同盟は共和国にとって必要なはずです!」
「いや、水の提供だけでは納得出来んな、同盟は無しだ」
「そんな!」
まだ諦められないリリアナを置いてデウメス王は立ち去ってしまう。
「また、明日参ります」
そう言ってマラノクス城を出るリリアナ、その顔は焦りと怒りが出ていた。
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リリアナが出ていき、マラノクス城の別の部屋に来たデウメス王の周りには共和国の重鎮たちが集まっていた。
「どうでしたか?」
重鎮の1人がデウメス王に問いかける。
「ダメだな、水だけでは王国と結ぶ訳にはいかん。皇国からも同じ条件が来ている、ならば皇国と同盟した方が有利になる」
実は皇国からも同じ同盟の話が来ていたのだ。
条件は同じ水の提供の代わりに戦力となる事だった。
皇国としては王国が赤姫を雇った事で軍事力の差が縮まり、さらにエルリックの活躍によって敗北した為、リリアナと同じように共和国と同盟を結ぼうとしたのだ。
王国としたら赤姫の雇用とエルリックの活躍がこの場面では裏目に出てしまった形である。
「では皇国との同盟を進めてよろしいでしょうか?」
「いやもう少し待ってみよう、皇国の使者もまだマラノクスにいる。より良い条件が引き出せるかもしれないからな」
少しでも条件が良い方を、そうやって秤にかける事を共和国は狙っている。当然の事だ
この共和国がついた方が勝つというふうにデウメス王は考えている。
「わかりました。リリアナ王女もまだ滞在するようですし、条件の吊り上げを狙いましょう」
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自分の事が秤にかけられているなど思ってもいないリリアナはただただ悔しさでいっぱいだった。
「なんなの!あの国王!自分の国の状況がわからないのかしら!」
皇国の事を知らないので当然リリアナは怒っている。
基本的にリリアナとエルリックは民の事が大事なのでその怒りは民を苦しみから救おうとしないデウメス王に向けていた。
「しかしなぜ断るのでしょうか?デウメス王も水不足はわかっているはずです」
エルリックもなぜダメなのかわからなかった。
2人で考えていも答えは出ない、絶対の自信があった為他に何を条件にするか考えていなかった事が悔やまれる。
「諦める訳にはいかないわ、この同盟は必ず結ばなければ」
王となる為リリアナにはこの同盟は必ず結ばなければならない。
そう意気込んで次の日もまたデウメス王と会合するのだが、次に出した貿易の活性化などの条件も断られてしまう。
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リリアナ達が一生懸命頑張っている頃、シンとナナは共和国を観光していた。
「王国と違ってスラムもかなり広いな、やっぱ王都の生活が良いのはリリアナ達が頑張ってたんだな」
この2日でマラノクスのだいたいのところを行き尽くした2人はマラノクスの状況を見てそんな事を話していた。
今現在もリリアナ達は頑張っているのだが知らんぷりしていた。
「リリアナ、おこってた」
宿でのリリアナの様子を心配するナナ、最初はリリアナがナナに突っかかっていたがこの旅でリリアナとナナは仲良くなっていた。
「あっちは2人とも優秀なんだ大丈夫さ、俺たちにできる事はない」
まったくリリアナ達の事を心配しないシン。
自分達が遊んでいる間もリリアナ達は意見を言い合ったりしているのだが知らなかった、リリアナとしてはシンにも参加して欲しかったのだが
「今日はあっち側行ってみようぜ!」
そう言ってナナを連れ歩き出すシン。
(そういやノアの気になった事ってなんなんだ?まあいいか、面倒なのはゴメンだ)
ここに来る前にノアの言っていた事を思い出したが、嫌な事だと面倒なので考えないようにした。
そんなシン達が向かったのはマラノクスの隣にあったオアシスである。
「なんだ?本当に水が少ないな、何か理由があると思うんだけどな」
オアシスには水が本来の半分も溜まっていない、こんな事はほとんど起こらないのだが実際に起こっている。
「なんか変な感じ」
隣にいるナナが異変を感じる。
「確かになんか変だな、なんかよくわからんが」
シンも同様におかしな気配を感じる。
異変の感じる方向に向かっていくと兵士達が集まっている駐屯地があった。
そこはオアシスから違法に水を持ち出されない為警備をしている共和国軍の者達が普段から寝泊まりしている場所だ。
「なんだ?お前達怪しいものは捕らえるように言われている、こんなところをウロウロするな」
見た目兄妹のように見える為、ハゲ頭の歴戦の戦士のような男が注意してきた。
「はげ」
言ってはいけない事をナナが言ってしまう。
小さい声であったが、気にしていたのだろうハゲ頭の男は聞き取ってしまった。
「このガキ!ハゲじゃない!これは剃っているんだ!」
逃げ出したくなるほど恐ろしい顔で男が怒鳴るが、相手はあの赤姫副長で序列8位のナナだ。
見た目では恐れる事を知らない。
「じゃあなんでおこるの?」
ハゲ頭に言い返すナナだが、ハゲ頭の兵士は怒りを収めたようで、大人の対応をした。
「すまない、つい反応してしまった。君たちこの辺りには何もないぞ、子供が遊ぶ場所じゃない」
そう言ってシン達を追い出そうとするが、シン達は退かない。
「ちょっと気になるとこがあるんです。心配ならついてきても良いですよ、犯罪はしませんから」
違和感の正体を探りたい2人なのでここで引き下がりたくない。
他にやる事がないよでなんとしても原因を探りたいのだ。
「そうは言ってもな、ここには一般人は入れては行けないんだ、ん?おいお前達ちょっとこっち来い」
追い返そうとしてたのにいきなり駐屯地の中に引っ張られたシン達、意味がわからないでいると
「ここに隠れろ、今お前達がいるのが見つかったらまずいかもしれん」
そう言って物陰に2人を押し込む。視線の先には何やら4.5人の集団が歩いている。
「あの集団はなんなんです?それになんで隠れなきゃいけないんですか?」
疑問に思ったシンはハゲ頭の兵士に問いかける。
「あれは、変装しているがデウメス王だ。ああいう格好をしてる時は他に聞かれたくない事を話すんだろう、ここには兵士しかいないからな」
そう言ったハゲ頭は必死に2人の姿が見えないように隠す、
この兵士は子供に優しい人だった。2人がいるのがバレたらこの兵士も危ないのだが、それよりも2人の事を気にかけていたのだ。
「もういなくなったな、わかったろ、ここは子供が来て良い場所じゃない」
そう2人に言うが、こんな事では諦めないナナはどんどん駐屯地の奥に進んでしまう。
「おいっ!話を聞いてただろ!」
慌てて追いかけるハゲ頭の兵士だが、2人は気にせず進んでいく。
「ここ、この下が変」
ナナが指差すのはオアシスのすぐ近くの砂場だった。
そう言って掘り進める2人、そして掘り進めた先には何やら文字の刻まれた短剣が埋まっていた。
「なんだこれは?おい!わかるか?」
さすがに短剣があるのに違和感を覚えたハゲ頭は2人に問いかける。
「いや、わからないナナはわかるか?」
「わかんない、だけどこれから変な感じする」
2人も何かわからなかったが、この短剣から違和感を感じている。
「この文字は、魔法文字か?なんの効果なんだ?」
何やら怪しくなってきたが、なんの目的でこんなものが埋められているのかがわからない。
「他にもあると思う、これ1個からは力が感じない」
魔術師でもあるナナは何やら感じ取ったらしい。
「おじさん、これと他のがあるかもしれない。探すの手伝ってくれ」
「おじさんじゃない、まだ33だ。わかった何かありそうなのは俺にもわかる、よし他の兵士も探させる、お前ら先導できるか?」
異変に気付いた他の兵士も出てきたが、このハゲ頭はなかなか地位が高いようで、他の兵士も手伝ってくれ、捜索が始まった。
すると同じような短剣が5本見つかり、他に違和感をシンとユナが感じなかった為捜索は終わり短剣が集められた。
「何が目的でこんな事したんだ?誰か魔法に詳しい者はいないか?」
魔術師は滅多にいないのでこの場の誰もわからなかった。
ナナは魔術師であるが、特殊な存在なので一般的な魔術は知らなかった。
駐屯地の兵士が多く集まっていたが誰もわからなかった。
しかし見回りをしていた兵士達が走り混んできた
「大変です!ドナート将軍!」
ドナート?と疑問に思っていたがすぐに答えがわかる。
「なんだどうしたんだ?」
隣にいたハゲ頭が答えた。
ここで答えたという事はこの男がドナートだろう、しかも将軍だった。
「それが!ちょっと説明出来ません!とにかく来てください」
慌てる兵士が走って行ったので、駐屯地の者達は一斉に追いかける。
かなりの人数がいた為物凄い轟音が響いている。
先頭の兵士が見たのは、この共和国にとって非常に嬉しい光景だった。
「なんなんだ?」
一緒に走ったシンの目の前にはオアシスが見える砂浜だった。
そこには水が本来の半分も溜まっていないオアシスだが、先ほどは見えなかったものが見えた。
「オアシスから水が湧いているぞ!」
そう、オアシスの中心部から水が出ていたのだ。
水不足に陥っていた共和国にとってこれ以上ない朗報である。
「まさか、さっきの短剣は水を止めていたのか?」
ドナート将軍がそう言った。確かに短剣を抜いた後の出来事である、それは当然だろう。
「君たちのおかげだ!これで共和国は救われる!」
ドナートがシンとナナに向かって感謝を告げる。すると兵士達も一斉に感謝を告げる。
「ありがとう」
「君たちは共和国の英雄だ」
短剣を抜いただけで大袈裟な、とシンが思っていたが、感謝され悪い気はしない。
「おい!この短剣ミリスで取れる鉱石使ってないか?」
兵士の1人がそう言うと、鍛冶屋の男が近づいてくる。
「確かに!これは皇国でしか取れないミリス鉱だ!あれは独占されているから皇国でしかこの短剣は作れないぞ!」
しばらく鑑定した鍛冶屋の男はそう宣言する。
ミリス鉱は確かに皇国が独占しており他国には流通しない物だ
「では、この水不足は皇国の陰謀か?」
ドナートがそう告げるが異を唱える者はここにはいない。
兵士達が皇国に恨み言を言っていると騒ぎを聞きつけた先ほどの集団がこちらに向かってくる。
「何があった、説明しろ!」
変装しているがデウメス王である、すると1番地位の高いドナート将軍が答える。
「はっ!どうやらこの短剣が我が国のオアシスの水を塞き止めていたようです!先ほどの鍛冶屋の男が確認したのですがこの短剣はミリス鉱で出来ております、恐らく共和国の水不足は皇国の陰謀でしょう!」
「なっ!」
ドナートの言葉に驚いたのはデウメス王だけではなかった。
先ほどからデウメス王と一緒にいたのは共和国との同盟を持ちかけていた皇国の使者だったのだ。
「そんなはずはない!王国の策略だ!」
必死に言い訳する使者であったがそんな言い訳はデウメス王には通じない。
「白々しい!独占したのが仇となったな!皇国との独占は無しだ!貴様らとは敵対する」
怒りを露わにするデウメス王、宣言通り皇国との同盟を無しにするのだ。
「この短剣を見つけたのは誰だ?褒美をやらねば」
振り返ったデウメス王はドナートに問いかける。
「はっ!ここにいるこの子供達です。彼らが異変に気付き短剣を発見しました!彼らはこの国の英雄と呼べるでしょう」
ドナートがシン達を紹介する。
「子供?ドナート、また甘やかしたのだな。まあいいこの度はこの者達のおかげで共和国は救われた、礼を言う、後でマラノクス城まで連れて来てくれ、しかしお前の世話焼きも役にたったな」
ドナート将軍の子供に対する優しさを知っていたデウメス王はドナートに言いつつシン達に感謝した。
「お主ら名は何という?」
「お初にお目にかかります、私はシンと申します。こちらはナナ、王国からリリアナ王女の旅の同行をしていた者です」
デウメス王に名を聞かれたので2人の名を言う、そして王国の者あるとも言っておく。
「ほう、あの王女の連れだったか、決めたぞ我が共和国は王国と同盟を結ぼう!お主ら2人のおかげで共和国は救われた、皇国との争いに力を貸そう」
「なっ!」
またも皇国の使者は驚く、ばれたのは仕方ないと諦めていたがまさか王国と同盟をするとは思ってもいなかった。
共和国を水不足にし、それに手を貸す振りをして同盟を結び、王国を攻めようとほとんど話が出来かけていた所での、王国の者達による会心の一撃、自業自得なのだがシン達に怒りの矛先が向かう。
「貴様ら!何をしたかわかっているのか!」
もはや八つ当たりでしかないのだが言わずにはいられない。
「貴様らこそ何様のつもりじゃ!この者達は共和国の英雄であるのだぞ!さっさと共和国から出て行け!次に会うのは戦場だ!」
デウメス王に言われ場を離れる皇国の使者達、この場で殺されてもおかしくないのだから今の内に出て行くのが正解だ。
「貴様ら覚えていろ」
シン達に近いたところでそう言った皇国の使者。シンからしたら八つ当たりもいいところなので無視をした。
だがその使者のローブの内側、長袖に包まれた左の手首には4の数字、シンは知らないがこの砂の世界で最大の脅威になるであろう者がこの使者だった。
「さて、お主らにはあらためてお礼を言おう、共和国を救ってくれてありがとう。後で城に来てくれ同盟を祝して宴を開こう」
そう言って立ち去るデウメス王、残った兵士達は久々に開かれる宴を楽しみにし、シン達に感謝を述べていた。
「ではまた城でな!」
最後にドナートにそう言われ、ここを立ち去るシン達。あいつ将軍だったんだとあまり関係のない事をナナと言いながら宿に戻った。
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その後、マラノクス城ではこの事を知らないリリアナ達が王と謁見していた。
「えっ!同盟をしていただけるのですか?」
(一体何が?昨日まで頑なに諾かなかったのに、今日だって無理だと思ったのに、最終的には同盟になれるよう、策は練っていたのだけどどう考えても結論が早すぎる)
昨日まで不機嫌だったデウメス王からまさかの言葉に驚くリリアナ達、その顔は嬉しさを隠しきれていない。
「ああ、シンとナナだったか、優秀な人材がいる者だ。リリアナ王女よあの者達に感謝するのだな」
リリアナは自分の体が震えてしまうのを止められない、自分の考える策がことごとく拒絶されていた。
正直諦めの気持ちもあったのだ、それがあの代行者の男はたった1日でこのデウメス王を説得したのだ。
何と言うことか、自分が優秀な事はわかっていた。
そしてシンの役に立てる事も、だがこれはどういうことか、リリアナに任されたはずの仕事はシンが成し遂げてしまった。
出歩いているのはわかっていた、だがあれはナナと街を観光しているだけと言っていたではないか。
リリアナはシンのいる場所が遠くに感じた。
一緒に旅をしてきた中で少しはシンに近く事が出来たと思っていた。そしてその役に立てる事も、だが実際には自分の力などあの青年には遠く及ばない。
先ほどまでの自分を呪い殺したい、何を思い上がっていたのか、その偉大すぎる男にただただ尊敬の念がこみ上げる。
(シン様にとってデウメス王を説得する事など、片手間で出来てしまう事なのですね)
リリアナは自分の力のなさに絶望してしまう。そしてあのシンの計り知れない叡智に感動すら覚えてしまう。
(これで立ち止まってはダメよ、ノア様のためシン様のために、私も成長しなくては。シン様がわざわざ手を打たなくてもいいように、今回は私は与えられた仕事をこなしきれなかった。それを見かねたシン様はわざわざ私に気付かれぬよう裏で私を助けて下さったのね)
シンは本当に遊んでいただけだったとは知らず、リリアナはシンに感謝を、そしていつか役に立つ為さらに成長する事を誓ったのであった。




