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ふたりと、もうひとり?

「つまり――

『一号の兄弟型を持っているプリコット博士は、一号の背景と通じている。兄弟型を使用人として公表しつつ、片割れの一号を探している』…っていう、

事実があるわけだ。

ツァンは憶測でものを言ったりすることは絶対にしないからな。

優しい奴なんだけど…回りくどいよなー」


へぇと目を丸くする一号。兄弟がいたことにわくわくしているらしい。

しかし…それはありえないはずだ。

こいつは俺が夢遊病で勝手に造ったのだと思っていたのだが、少し事情が違うらしい。一号の記録を改竄してあるのも、無意識の功績だろうが…俺は本当に眠っていたのだろうか?

もはやその経緯も疑わしい。ただそうさせる…あるいは、そうした意図はわからないが。


「でも機械のボクに家族が居て、人間の博士に家族が居ないのは不思議だね」


無邪気な子供らしい、容赦無い指摘。

家族がいないのは仕方がない。なぜなら、俺は記憶喪失で孤児だから。風邪をこじらせて重い病気にかかり、すっかり疲れた両親から孤児院に投げ出されたらしい。何度目かの峠を越えて意識を取り戻した朝には、すでに記憶が無かったという。…よくある話だ。

それでも微かに残る記憶の断片は、膨大な知識が詰まった父の書物。俺の脳髄はだいぶ優秀らしい。


「とはいえ…会いに行く理由もないしな…来るなら別だし。俺が何かやらかしてお前を拾ったとしたら、あちらに返すのが筋だ」


「えーいやだ!ボクは博士の近くにいたいっ」


無防備で、策略の無い笑顔。

考えてみれば、こいつの事を俺は何も知らないでいる。造り手なのに痕跡もない。

プログラミングは?

データソースは?

だいたい夢遊病でやってのける俺も非常識だが…。





「見つけたぜ、ゼロキ」


昼の太陽がようやく優しく照り始めた頃、庭の花に一号と一緒に水をやっていたら、そいつはあらわれた。

青と緑の混じったような、長い髪は一つにくくられている。どこかで見覚えがあるような、幼い瞳。一号を『ゼロキ』と呼ぶ見知らぬ少年。

だが、そいつは――


「オレは子型機械人形のレプシナ。兄弟型のゼロキから『あんた』を取り返しにきた」


そう強い口調で、そいつはびし、と俺に向かって指を差した。


「…あ。え、俺?」


一瞬遅れる。これは予想してなかった。

レプシナと名乗ったそいつは、呆ける俺に近寄る。


「博士、危ない感じがするよ…」


妨げるように、一号が俺の前に仁王立ちになった。

睨み合う二体。

レプシナは髪をくくっていた布をしゅるしゅるとひっぱる。腕の構えからしても戦士レベルの性能はありそうな雰囲気。

一方の一号には、ある程度の自衛性能は付いているはず…だが『戦える』程ではない。そんなプログラミングは構成してないはずだ。


「ボク、博士を護るよ!」


でも、俺の前に立つ一号は、不思議とたくましく見えた。

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