表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウェアウェポン  作者: シャルロッテ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/6

煌めきの出会い

良く晴れた、けれど暑くは無い快適な日。波打つように柔らかな草が揺れて、時折花びらが宙を舞う。そんなのどかで寝心地の良さそうな草原のど真ん中で、俺は目が覚めた。


「ふうぅっ....あぁぁ....今回は、結構眠ってたみてえだな」


俺は両手を上へ伸ばし、首を曲げて骨を鳴らす。いつになっても、この瞬間の開放感はたまんないね。


「さーて、今回は誰が俺を起こしてくれたのかなー....おっと、こりゃびっくり」


「…」


俺の足元、腰ほどまでの高さ。肩まで伸びた真っ白で傷んだ髪に、透き通った紫色の大きな瞳。質素な服はかなり破損しており、汚れも随分と目立っている。背丈に見合う幼い顔立ちをしており、しかし儚さは微塵も感じられなかった。


「よう嬢ちゃん、俺はシェルツ。嬢ちゃんの名前はなんて言うんだ?」


俺は屈んで、真っ白な女の子と同じ目線に立つ。ただでさえデカい図体だし、怯えられて逃げられたんじゃあ今後に響く。相手からすりゃ、突然現れたおっさんだしな。


「…」ふるふる


しかし、女の子は首を横に振った。そして、口を大きく開けると掠れた息の音が聞こえた。....こりゃ、びっくりだな。


「口がきけねえのか」


「…」うんうん


「あー…」


さーて、どうするかねえ。


~~~


事の発端は、あたしがおばあちゃんの遺品であった指輪を触ったところから。


あたしを育ててくれたおばあちゃんが死んじゃって、その遺品の引き取り手としてあたしが選ばれた。面倒な事は全て業者に頼み、あたしは遺言状に掛かれたごく一部の遺品を貰いに、町はずれの草原までやって来た。


するとどう? 帰り道に遺品の入った箱を開けて、その中にあった珍しそうな指輪を手に取ったら急に光り始めた!! 水色の眩い光。そして、その光の中からこいつが現れた。


「…」じーっ


「何から言った方がいいか....」


あたしは、光の中から出て来たおっさんを見る。

中年でザラザラとした短い髭を生やしたおっさん。髪は黒と茶色が混ざった短髪で、うす赤色のくたびれた目をしていた。服装は…なんか、炭鉱夫みたいながっしりとした青い服を着ている。厚着のように見えるけど、本人はこの日差しでも平気そう。


「....」ちょんちょん


あたしはおっさん....シェルツとか言う奴の袖を引っ張って、とりあえず怯えてないアピールをする。こういう善人っぽそうな奴は、あたしに妙な距離を作ってしまう。面倒でしかたがない!! だから、平気そうな奴にはこうしてこっちから触れに行く。そうしないと、話が全然進まないからね。


「あー、おーけー。とりあえず、俺の言葉は分かるか?」


「…」うん


言葉は聞けるし読める。ただ、声が出ない。あと文字も書けない。今のあたしは、死ぬ程ほど面倒な状態になってしまっている。


「字は書けるか?」


「…」ふるふる


無理なのよねー。字を書こうとすると、手が震えてヘタな絵になってしまう。


「じゃあ....まずは俺の事から話そうか」


意志疎通の手段が無いと察したのか、シェルツは近場の低木まで移動して、木を背もたれに腰を下ろす。あたしもシェルツについて行き、隣に胡坐をかいて座る。ふー、一休み。


「....はしたねえぞ嬢ちゃん。その服装で胡坐は色々と見えるぞ?」


「…」ふるふる


気にしないわよ。それかあれ? あたしに欲情する小児性愛者? やめた方が良いわよ、その性癖は。


「おーけー、意味が分かってるならいいさ」


「....」うんうん


物分かりが良くて助かるわ。さあ、シェルツの話を聞かせてもらおうかしら? 何故指輪から出て来たのか、そもそもシェルツは何者なのか、何であたしに関わるのか。....どうやって伝えようかしら?


「まずは....嬢ちゃんの触れた指輪から話して行こう」


お前の話じゃないの!? まあ、それも気になってたから良いかしら。


「....」うんうん


「あれは分体結晶ウェルっていう鉱物だ。大結晶サザナミから削れて落ちた、宝石に似た石ころだ」


大結晶サザナミ。誰もが知る、実際にあったとされる創造神からの返礼品。何か物凄い力を持った石だって聞いてるけど、今はその在処を誰も知らない。....だからなんだって話なんだけど....


「そんで、ウェルってのはサザナミと同じ力が入ってる。力の量は格段に落ちてるが、所持するだけで誰でも魔法が使えるくらいにはなれるぜ」


「....」ふーん


才能至上主義とか言われる魔法をねえ。じゃあ、シェルツも魔法使えるのかしら? とてもそのようには見えないけれど。


「それで、ごく一部の者がウェルに触れた時....多種多様な容姿、人格、種族を持った結晶生命体フレッチャーが現れる。それが俺」


「....」


つまりなに? おばあちゃんの遺品の指輪がウェルとか言う力を持った鉱物で、さっきそれにあたしが触れたからフレッチャーとか言うこいつが出て来たって訳? …まあ、原理がどうとかは分からないけど、納得は出来たわね。


「分かるか?」


「....」うんうん


「ホントか? 適当に流してるんじゃないだろうな?」


「....」うんうん


信じてよそこは。あたし、今まで嘘付いた事なんてないし! ホントホント、うそじゃない。


「…まあ、そこはもう嬢ちゃんを信じるしかねえな」


「....」うんうん


話が早くて助かる。それで....なんでシェルツはあたしに構うの? あたしがシェルツを出したから?


「それで、ここから本題だ。フレッチャーはフレッチャーの召喚者と、ウェアリンクと呼ばれる契約を結ぶことができる。そうすりゃ、俺達はお互いを武具として装備する事ができるようになる」


「....」ふーん


へー、そんな話聞いたことがないけど。まさか詐欺じゃないでしょうね? …まあ、実際光りの中から出てきたわけだから、もう信じるしかないのだけれど。


「契約をして、寿命が削れたり痛覚を共有するって事は無い。契約自体はやるだけ得だが....あー....」


シェルツは渋い顔をして、目を閉じて首を傾げる。....。ああ、さてはウェルを巡って悪党に付け狙われるとか、そういう話ね? 確かに、誰でも魔法使いになれる鉱石なんて、誰だって欲しがる戦争の元。契約者になるなら、そういうリスクを背負う事になるって訳ね。


「....」ちょんちょん


「ん? どうした?」


「....」指差し


あたしはシェルツの服を引っ張り、目が合ったところで自分を指差した。


「....その意味、分かってるのか嬢ちゃん?」


「....」うんうん


力が手に入るならけっこう、仕事もしやすくなる。それに、じゃあ嫌ですって言ってシェルツを見捨てたくはない。あたしは善人じゃ無い。でも、寝起きの奴を草原に置き去りにするほど外道でも無い。どんとこい、遠慮しないで。


「....」


シェルツは目を閉じて、一頻り唸り声を上げる。....さてはこいつ、迷ってるわね? 図体の割には心配性な奴。仕方ないわね、ここはあたしができる奴だって事をアピールしようかしら!


「....」ちょんちょん


「ん? どうした?」


「…」どやっ


ほれ見なさい! この背中に背負った錆び付いた剣を!! この体と武器で相手から舐められまくって、不意打ちでぶっ飛ばすには十分な耐久をした我が愛剣を!! まあ、その辺で拾っただけだけどね!


「…ぷふっ! あはははは! いやー、こりゃびっくりだ! 嬢ちゃん、意外と逞しいんだな」


「…」ふんす!


そうよ! カスみたいな両親が蒸発して、倒れたおばあちゃんを死ぬまで支えた戦士なのだから! そこらの魔物やチンピラには負けないわよ!!


「あははは! あーあ....よし、じゃあやるか」


「…」うんうん


シェルツは一頻り笑い、涙を拭って真っすぐあたしに体を向けた。あたしも剣を背中に戻し、お互い胡坐をかいて向き合った。....腕も組んじゃお。


「手順は簡単だ。今から俺が渡す光を、体のどこでもいいから受け止めてくれ。そこに、契約の印が浮かぶ」


「…」うんうん


刺青ってこと? うーん、じゃあ後悔の無い場所に入れたいわね。....いや、変なのだったら嫌だし、あんまり人から見えない位置にしよう。


「…フレッチャーのシェルツの名の元に、ウェアリンクの申請を行う。…受け取ってくれ嬢ちゃん、これが…俺達の運命だ」


「…」うん


決められたかのような前口上をシェルツは唱え、同時に差し出された右手から水色の光りが飛び出した。とても綺麗で、暖かな光。おっさんから出て来たとは思えないわね。


「…」


あたしはその光を、両足で挟んで受け止めた。どうよ! これなら誰にも印がバレないわ!!


「…」どやっ


「....あー....おーけー。こりゃ、教育が必要そうだな」


シェルツは、とんでもなく呆れた顔をしていた。なによ、別にいいでしょ?


水色の光りは徐々に消えて行き、そして右足の裏には黒い印が浮かび上がった。立体的にも見える、四角の模様。…おばあちゃんの指輪の宝石を、紙に描いたらこんな形になるのかしら?


『聞こえるか嬢ちゃん?』


「…!」びっくり!


頭の中で声がした。シェルツの声。けれど目の前のシェルツは口を開いておらず、真っすぐにあたしを見つめていた。


「まあ、あり大抵に言えば通信魔法だ。これなら、言葉も字も使わなくても、心の声で会話ができるはずだ」


「…」


シェルツの魔法かしら? 便利なものがあるのね。じゃあ....自己紹介と行きましょうか。


『あたしはベルグラノ。よろしくね、シェルツのおじさん』

「…」どやっ


声が話せるなら、舐められないようにしなくちゃね!! 胸を張って、飛び切りの笑顔を見せてあげる!


「....おーけー。その態度に似合う、いい性格してんな、お前」


『ふふん! それはどうも!』

「…」ふんす


それが、あたしとシェルツの初めての出会いと会話だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ