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ベルダーシュの勇者  作者: らんた
あとがき
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あとがき

いかがでしたでしょうか?


 ベルダーシュ制度というのは現代社会がLGBTと言う概念が生まれるはるか以前から男であっても女として生きていい、女であっても男として生きていいという大変先進的な概念を持った社会システムです。特に病弱な子に試練の洞窟に行かせたり弓矢とおもちゃを並ばせてどちらを選ぶかということをさせたようです(例えばある部族では弓矢を選ぶと男として、おもちゃを選ぶと半男つまりベルダーシュとしての人生を選びます。女の子の場合は逆になります)。狩猟も出来ない男の子を「落ちこぼれ」とせず、逆に高位魔術師としての身分を与えたネイティブアメリカンの社会は称賛に値します。もちろん女なのに男顔負けの屈強な戦士も「女のくせに」とせずに男の世界に容易に入ることが出来たのです。つまり通常人よりも生活が困難な人にチャンスを与える制度だから「ベルダーシュの勇者」というタイトルなんですね。このタイトルの真の意味は。単に戦勝者だから「ベルダーシュの勇者」ではありません。敗北者だろうがベルダーシュになった時点でもう既に「勇者」なのです。


 それどころか「やっぱベルダーシュやーめた」と言って元の男や女に戻ることまで許されていました。部族にもよるみたいですが。その代わり、この場合は「勇者失格」とされます。


 本当は白人社会よりもはるかに優れた思想だったということに気が付くのに我々は二一世紀まで時間がかかったのです。別に「私・僕……もしかして……入れ替わってる~!?」と叫ばなくてもネイティブアメリカン諸部族はいつでも性別を入れ替えることが出来たのです。


 しかもベルダーシュに限らずですが結婚しても男色あるいは「百合」が公然と許されていました。特にベルダーシュには許されていました。そんな同性愛行為を白人は徹底的に汚わらしいものとして差別します。そもそもベルダーシュ(Berdache)とはフランス語で「少年性奴隷」という意味です。修道院に売られていった慰み者だったのです。男色というのはキリスト教では厳禁のはずですが。そんな屈辱的な名前を与えたのです。しかし、当のネイティブアメリカン諸部族のほとんどは「ベルダーシュ」を屈辱や侮辱とは捉えていないので本作品は「ベルダーシュ」の名前をタイトルを含めて採用しました。もっとも「トゥー・スピリット」を使用せよという声も三五年ほど前にネイティブアメリカン=ファーストネーション部族間ゲイ・レズビアン会議で出されましたが「二つの魂」ではなんのこっちゃということになります。今更「ベルダーシュ」の名前を変えろと言われてもそれは無理です。ですので本作品のタイトルは「ベルダーシュの勇者」で通します。ご了承ください。念のために言いますが我々は侮辱として「ベルダーシュ」の名前を使っているわけではないのです。むしろ尊称として「ベルダーシュ」の名前を使っているのです。元の語源の意味はネイティブアメリカンの「ベルダーシュ」を語る際、消失しているとここで主張したいと思います。


 魔女狩りもフランス語に合わせて「エタンドル」(電気を「消す」などの消す: éteindre)ではなく「消去」あるいは抹殺という言葉に近い「ラディア」(radier)という語を使用しました。魔女狩り=「ラディア」は筆者の造語です。英語に相当する語は「イレイザー」です。第二外国語選択をドイツ語にした筆者にとってフランス語は英語で中一レベルに相当する語でも滅茶苦茶苦労しました。


 そんな文字通りの女体化・男体化を「エロ」ではなく純粋な冒険譚としてライトノベル化出来ないか。しかも高位魔術師の物語として……。


 苦しむこと五年。プロットを書き続けてようやくこの物語は完成しました。非常に珍しい場所を舞台としたファンタジー作品でジャンルはローファンタジーとなります。


 ネイティブアメリカンに飲酒の習慣がないため宿屋に酒場が無いなど歴史的背景に反しないように配慮も心掛けました。このため本作品は「酒場」ではなく「食堂」になります。大人であってもネイティブアメリカン諸部族が飲むものはジュースなのです。


 ネイティブアメリカンはプレブロ遺跡やカホキヤ遺跡に代表されるように実は都市文明も持っております。原始生活をしていたというのは偏見であり、差別です。この作品を通じて真のネイティブアメリカンの姿を知ることが出来たら幸いです。


 さらにこの物語はヴィンランドつまりヴァイキングとの交流も描いております。こうすることによって歴史ファンタジーとしても読めるように工夫しました。


 ちなみにエスキモーやベーリング海峡の部族、カムチャッカ半島や千島列島北部の部族にもベルダーシュ制度があります。ということは……もしかしたら古代日本にももしかしたら北方の部族を中心に「とりかえばや物語」があったのかもしれないのです。凄い事じゃないですか。


 私は、このベルダーシュという概念に触れて物語化出来たことに幸せを感じます。


 そしてこの場を与えてくださった読者の皆様に感謝の念をあたらめてここに表します。また二〇一九年版と違うのは文芸作法の基本を身に着けたうえでの再アップとなってます。なのでもし二〇一九年版をご覧になった方は見比べていただけると幸いです。


 ベルダーシュに興味を持たれた方は参考文献をここに載せますのでご参考になれば幸いです。


らんた


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