9話 33,3パーセント
連日投稿9日目です。
「はあぁぁああぁっ。気持ちいいですわぁ……!今、私のグーがあなたのチョキの2本の指を狩り取ったというわけですね。とてもゾクゾクしてしまいますわっ!!早くっ!早く次を始めてしまいましょう?御堂タケルさんっ!!!」
蛇子はハァハァと息を上げて興奮気味にまくし立てるように一気に喋る。
狂気……。
タケルは、後退りする。が、蛇子はぬらりと動き、同じ距離だけ詰め寄って来る。まるで蛇のようだった……。
「わ、わかった!次やろうっ!」
慌ててタケルが言うと蛇子はニヤリと笑い、それ以上近づいて来る様子はなくなった。
……でも、どうする?蛇子さんはグーを出した。もう一度最初はグーで始めたとしても、何を出すかはわからないぞ……。
タケルは悩む……。
「は・や・く!」
蛇子はタケルを急かす!
こんな状態じゃ勝てる気がしない……。
しかし、このまま先伸ばししていれば……喰われる!!
タケルは本気で危険を感じていた。タケルには目の前の女子高校生、ウワバミ蛇子が大蛇のように思えた……。
気を抜けば丸呑みにされる……!
「待っテ待っテ!待つヨロシ!」
その時、珍さんが二人の間に割って入る。
「……あら、どうしたんですの?」
蛇子は抑揚のない声で単調に言った。その目は、蛇がカエルを見るように珍さんをギラリと睨みつけていた。
蛇子の目が珍さんに向いた事で、タケルは一安心する……。
「モー、そんナニ睨まないデヨ、ウワバミさン。私、雰囲気出るようニ作っテ来たモノあルネ!多分、ウワバミさンも気に入ルハズね……。」
珍さんがそう言って取り出したのは、2つの黒い指サックと…………2本の指だった。
「うげぇ……。」
タケルは気分が悪くなる。
「大丈夫アルヨ、御堂タケル。コレ、指型のロウソクネ。ホラ悪趣味でショ?」
珍さんはニヤニヤ笑いながら言った。
「…………なんだよ。」
即座に平静を装うタケル。しかし実際は……
ビックリした……。本物だと思った……。
タケルの心臓はまだバクバクしている。
「……こノ悪趣味ナ指型ロウソク2本は、ウワバミさんニ……。」
珍さんは、指型ロウソクを蛇子に手渡す。
「うわぁっ!嬉しいですわ!」
蛇子はそれを両手で受け取り、キャッキャと喜んでいる。
「デ、コレは御堂タケルの分ヨ……。」
珍さんは、シブい顔をして黒い指サックをタケルに投げつける。
「え?えっ?」
タケルは焦りながらも、投げつけられた黒い指サックを落とさないように胸で受け止める。そして、手のひらの上に乗せて眺める。
「何だこれ?」
どこから見ても色が黒いだけの指サックだ……。
「早く付けるね。どの指でも良いよ。」
珍さんはゴミを見るようにタケルに言った。タケルは思うところはあったが、言われるままに指サックを左手の人差し指と中指に付けた。
「ほラ、こレで指を狩ったようニ見えルデショ?ウワバミさん?」
「ほんとですわ!」
珍さんと蛇子はタケルを置き去りして、2人の世界に入ってしまっている。
……あ、なるほどな。
とタケルは思った。黒い指サックを付けた2本の指は、狩られて無くなったように見えなくもない。
そして、狩られた指本体があの悪趣味な指型ロウソクというわけだ。
「ねぇ珍さん。このロウソク、持って帰ってよろしいんですの?」
蛇子が上機嫌で珍さんに聞く。
「良いヨ良いヨー!」
珍さんも上機嫌で、頬っぺたの横に右手でOKサインを作って笑う。右目でパチパチとウインクする姿が気持ち悪い……。
「私、もうすぐ誕生日ですの。誕生日ケーキに飾りたいですわ……。でも、私の年齢分集めるには、御堂タケルくんの指だけじゃあ足りないみたいですわね。フフフ……。」
そう言って笑う蛇子をタケルは眺めている。先程までの痛いほどの狂気が心無しか和らいだような気がする。
……珍さん、さっきからの態度はどうあれ、……ナイスだぜ!
少し生まれた余裕が、タケルに都市伝説事典から情報を引き出させる。
……ジャンケン必勝法
……なんだ?やけにそのまんまなタイトルの都市伝説だな。
……同じ相手と何度かジャンケンをする場合、連続で同じ手はまず出さない。
……え?ホントか?
……その証拠に、グー、チョキ、パーの確率はどれも33,3パーセントである。
……なるほど!
読者の皆さんはすぐにこの考えの間違いに気付くだろう。そもそも確率なんて何千回何万回やった上での結果だ。
しかし、タケルはこの都市伝説を信じてしまう……。
「……蛇子さんはさっき、確か……グーを出したよな?なら、次の手はチョキかパーだ!俺が出すのはチョキ!間違いねーっ!次は勝てるぜっ!!」
タケルは、はしゃぐ2人に気づかれないよう笑いを噛み殺した…。
33.3パーセントって当たり前ですよね。笑
次回もお楽しみください。




