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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
メリーさん編
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18話 相名勝馬の弱点と山崎マリ

「どうだ!ざまーみろ!クソポリ公っ!!」


 パトカーのボンネットから、ヌッと上半身だけを出し、ヤマキの骨に唾を吐きかける相名(そうな)勝馬(かつま)

 タケルから見えるパトカー内の若い警察官は目を閉じている。生死はわからない……。

 相名勝馬がギョロッとこちらを向く。


「……次はお前たちだっ!轢き殺してやるぜぇっ!ヒャハーッ!!」


 パトカーのスピーカーから相名勝馬の声がする。お前たちとは、もちろんタケル達の事だ。


 ブォン!ブォン!と何度もアクセルをふかす音が響く。

 ……下半身がパトカーのケンタウロスみたいだ。とタケルは相名勝馬を見てふと思った。


「こっちだよ!タケルッ!」


 タケルは、自分を呼ぶ声で、自分がボーっとしていた事に気づく。モクメの声だ。テレパシーではなく、いつもの肉声だった。

 タケルが振り向くと、人間の姿に戻ったモクメが、自動ドアを手でこじ開けている。


「ここから中に入れるよ!」


 そう言った後、モクメは素早くタケルの母ちゃんを肩に背負う。


「タケル!反対側頼む!」


「あ、ああ。」


 タケルも慌てて、モクメの反対側から母ちゃんを背負う。

 ミクちゃんとマリちゃんは、すでにAマートの中に入っている。タケルとモクメも、タケルの母ちゃんを背負いながらAマートの中へと入っていく。


「とりあえず奥へ行こう!」


 タケルの掛け声で奥へ向かう。

 入り口すぐが野菜売り場だ。まっすぐ奥に進めば、パトカーが入って来た時、そのまま轢き殺されてしまうかもしれない。そう判断したモクメが、


「こっちから行こう!」


 と、レジ前の通路を左に曲がる。

 更にお菓子売り場の棚の列を右。そのまま奥へと進んでいく……。


「よしっ!ここなら少しは時間を稼げるはずだよ。タケル、今のうちに都市伝説事典で相名勝馬の弱点を見つけてっ!」


 2人でタケルの母ちゃんを下ろしつつ、モクメは言った。


「ああっ!」


 タケルは、都市伝説事典に集中する。周りが見えなくなる……。



 その時を待っていたかのようにマリちゃんが口を開く。


「ミクちゃん、ついて来て……。」


 それは、ミクちゃんにしか聞こえない小さな声だった。

 マリちゃんは走り出し、側にあった店のバックヤードの入り口へと入っていく……。


「あ、待って…。」


 バックヤード入り口の上方にトイレの標識がある事にミクちゃんは気づく。


「そっか……。」


 タケルお兄ちゃん達に言うのが恥ずかしかったんだわ……。と、マリちゃんを気遣って一人でタケル達の元を離れるミクちゃん。



「マリちゃーん!」


 バックヤードに入り、マリちゃんの名前を呼ぶミクちゃん。

 バックヤード内は真っ暗で、トイレの場所どころか電気のスイッチすらわからない。

 勘だけを頼りに奥に進むミクちゃん。


「……ミクちゃん、私はここよ……。」


「きゃあっ!」


 背後からの声に驚くミクちゃん。

 振り向くとそこには、先程までとは何か雰囲気の違うマリちゃんが立っていた。

 少女は歯をむき出しにし、不気味な笑みを浮かべていた……。



 ガッシャーンッ!!ドルルンッ!!


 入り口のガラスを割り、パトカーがAマート内に突っ込んで来た!


「はっ!」


 集中を解くタケル。そして、その場にミクちゃんとマリちゃんがいないことに気づく。


「ミクちゃん!マリちゃーんっ!」


 タケルは、見える限りの全ての場所を凝視し、2人を探す。しかし、2人の姿はない。

 胸騒ぎがする。上手くは言えないが何か良くない事が起きそうな気がして、どうしてもミクちゃんを見つけなければいけないと焦るタケル。


「モクメ!少しだけ母ちゃんを頼む!」


 タケルはそう言って、一人で少女たちを探しに行こうとする。が、モクメはそれを制止する。


「待ってタケルッ!今、するべきは相名勝馬の弱点を探ること!ヤツを倒せば、結果全員が助かるんだからっ!」


「……わかった。」


 タケルは、「でも……。」と言いたい気持ちをグッと抑えた。胸騒ぎは続いているが、モクメの言うことも正しい。

 続いてモクメは問いかける。


「で、相名勝馬の弱点は書いてあったの?」


 タケルは気持ちを切り替えて答える。


「ああ。でも、謎かけみたいだ。名前を何度も言えば、弱点は見えるはずだ……ってんだけど……。」


 モクメも首をかしげる。が、考えていても仕方がないというように、


「……とにかく言ってみよう!相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬……。」


 と名前を連呼し始める。タケルもそれに続く。


「相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬…………。」


 ドルルンッ!バキッバキバキッ!!


「くっそ!通れねーじゃねーかっ!おい!ガキ共、どこ行きやがった?出てこいよクソがぁっ!!」


 相名勝馬に取り憑かれたパトカーは、棚に阻まれ、かなり苦戦しているようだ。


「しばらくは大丈夫そうだな。」


 タケルは少しホッとする。これでじっくり謎解きが出来る!と。

 しかし、今まで悪態をついていた相名勝馬の声が途切れる。急にAマート内が静かになる……。


「え?アイツ、どうしたんだ……?」


 肌がピリピリする。第六感が危険を察知して知らせている……。

 すると、タケル達のいる場所が、急に暗くなる。


「ん?なんだ!?」


 タケルは、恐る恐る頭上を見上げる……。


「……見つけたぜ!」


 それは、相名勝馬の声。タケル達の頭上には、胴体が蛇のように伸びた相名勝馬が、こちらを見て笑っていた……!

 相名勝馬はタケルに掴みかかろうと手を伸ばす……いや、さらに胴体を伸ばす!


「危ないっ!」


 モクメはタケルにタックルすると、タケルの代わりに相名勝馬の胴体に巻き付かれ捕まってしまう。モクメの体がミシミシときしんでいる。


「まずはお前から絞め殺してやるぜ!ヒャハハッ!」


「モクメッ!」


 飛ばされたタケルは叫ぶ。


「僕はいい!早く謎を解き明かして!!」


「くっ!」


 唇をかむタケル。モクメの願いに応えるためにも早く謎を解かなければ!

 タケルは再び目の前の都市伝説の名前を何度も繰り返す!


「相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬相名勝馬そうな かつま……………ん?まつか なうそ?」


 その名前を逆から読んでみて、タケルはその謎に気づく……。


「……そうか。そういう事か!」


 タケルは息を吸い込むと、名探偵が犯人を指し示すように相名勝馬を指差し全力で叫んだ!


「都市伝説・相名勝馬っ!お前の正体はわかったぞっ!お前の存在は、真っ赤な嘘だーーーーっ!!」


「ぐぅぅ……。謎を解きやがったな……。クソがーーーーーーーーっ!!!!」


 叫びとともに苦しみ出す相名勝馬。その姿にモザイクがかかる。


「……な、なんだ?モザイクって現実に存在する…?」


 奇妙な光景に混乱するタケル。相名勝馬が完全にモザイクに包まれる……。


「これで勝ったと思うなよ!誰かが俺の話に恐怖した時、再び現れるからなぁっ!!ぎゃあぁぁっ!」


 断末魔のような悲鳴の後、モザイクが段々と消えていく……。

 それが完全に無くなった時、相名勝馬の姿はその場から完全に消えていた……。

 そして、代わりなのかどうかはわからないが、ヤツのいた空間にはポッカリと暗い穴が開いている。タケルはその穴をのぞき込む。すると、穴の奥から何かがやって来るのが見える。


「な、なんだ?」


 タケルは身構える。が、その何かは想像以上に素早く、穴から飛び出すと、タケルには目もくれず、そのままバックヤードへと消えて行った……。


「今のはまさか……?」


 タケルはつぶやく。


「追いかけよう、タケルッ!」


 相名勝馬が消滅し、解放されたモクメが言った。


「……ほ、本当にマリちゃんなの?」


 バックヤードの暗闇の中、ミクちゃんは、マリちゃんに向かって少し怯えた声で言った。暗闇で良く見えなかったからではない。それどころか、ミクちゃんから見えるマリちゃんは、暗闇の中で発光する人形型の消しゴムのように、鈍く光って見える。

 さらに、マリちゃんから溢れる不気味な気配が、ミクちゃんを不安にさせる。今、ミクちゃんの目前で歯をむき出しにした笑顔を見せている少女は、今までのマリちゃんとは、まるで別人のようだった……。


「そうよ。私は山崎マリ。都市伝説よ。そして、…………連続殺人犯でもあるわ。あなたには犠牲者になってもらうわね!」


 山崎マリはそう言うと、背中から少女の背丈ほどもある巨大なノコギリを出す。


「え?マリちゃん、何言ってるの?連続幼女誘拐殺人犯は、マリちゃんを追いかけて来た男の人でしょ?」


「あー、あれは本当に私のお父さん……山崎悟よ。あの人もそう言ってたでしょ?」


 山崎マリはそう言って、ミクちゃんに笑いかける。一見、少女の笑顔は年相応な可愛い笑顔に見える。

 しかし、その目は、ミクちゃんを見るにはあまりにも冷たく……、ミクちゃんをモノとしか認識していないようだった。

 山崎マリが口を開く。


「ねぇ、ミクちゃん。あなたを生きたままバラバラにしても良い?」


 ミクちゃんの背筋を恐怖が貫く。ブルブルと震えが止まらない……。

 その時、何者かの声が聞こえる。


「……ガキを助けなかったヤツには、『あの時、助けていれば……。』っていう後悔を。逆にガキを助けたヤツには、『助けなければ良かった……。』っていう後悔を心に刻ませた上でバラバラに切り刻むって訳か……。ついに正体を現したな、都市伝説・真夜中の少女。まぁ、ワシにはハナからお前が本体だって事は分かってたんだがな……。」


 暗闇から現れたのは、人体模型の胃に取り憑いたツクモガミ・ジンタンだった。先ほどの相名勝馬との戦いの最中、姿の見えなかったジンタンだったが、タケル達のもとを離れ、ミクちゃんについて来ていたようだ。


「……小さなネズミがウロチョロしてたのは知っていたけど、邪魔するならアンタから切り刻むよ……!」


 山崎マリは語気を強め、言った。


「おいおい、ネズミとは、ワシも心穏やかじゃぁいられないなぁ……?だが、安心しろ。ワシは何もせんよ……。」


 ジンタンがそう言った直後、バックヤードの入り口から弾丸のような勢いで何かが山崎マリに襲いかかる!


「ワシは……な。」


 ジンタンはニヤリと笑う。


 ザシュッ!!


 山崎マリの眉間に何かが刺さる。それは棒状の何か……いや、腕だ!

 それは、異様に長く伸びた人形の左腕だった。その左腕は根元から折れている。そして、その二の腕を右手が掴む。

 それは人形だった。左腕の折れた人形が、右手に自らの折れた左腕を握り、それを山崎マリの眉間に突き刺さしていた。

 その左腕は、山崎マリの眉間に穴を開け、その後頭部からは親指を折り、残り4本の指を伸ばした状態の左手首が突き出ている。指先の鋭く長い爪から、ポタポタと少女の血が滴り落ちる……。

 弾丸のような勢いで山崎マリに襲いかかった何か……。

 それは、異世界でタケル達と戦った、ミクちゃんのメリーさん人形だった……。


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