6話 言うなれば荒野…。
そこは言うなれば荒野…。
特撮ヒーローものの戦闘シーンを彷彿とさせるような場所に、タケルは立っていた…。
「え?ここはどこだ?」
タケルはうろたえる。
「危ないっ!」
タケルは、誰かに背中を押され、その人物と一緒に地面を2、3回転する。
ズドッ!
タケルのいた場所に何かが突き刺さる。
それは、異常に長いメリーさんの腕。その先にあるこれまた長く鋭い爪が、地面に刺さっている。
「あっぶね!」
タケルのこめかみに冷や汗が伝う。
「なぜ来たのですかタケル!」
先に立ち上がり、タケルを覗き込んでそう言ったのは黒反モクメ。
タケルを助けたのは、モクメだった。モクメは、手を差しのべてタケルを立たせる。
「え?」
タケルは頭が追いつかない。
「しっかりしなさいタケル!命を失いますよ!」
モクメはタケルを叱りつける。
「…あ、ああ。すまねぇ!」
タケルは自らの両頬を叩く。
「よしっ!どういう事か説明してくれよ!モクメ!」
タケルは、どんな事でも受け入れようと決めた。
「…私はあの時、都市伝説の気配を感じ、あなたの部屋を出てあの少女の家に向かいました。そして、少女を襲うメリーさんを見つけたのです。私は、メリーさんを異世界へ封じ込めるために能力を使い、タケルはそれに巻き込まれてこの異世界について来てしまった…という事です。」
モクメは足早に説明する。
「危ないっ!」
タケルはそう叫んで、モクメに迫っていたメリーさんの足のスネを都市伝説事典の角で殴りつける。
「ギャー!」
悲鳴をあげるメリーさん。
「都市伝説事典チョップ!」
決めゼリフのようにタケルは言った。
メリーさんは足を押さえてうずくまっている。
「ここが異世界なのはわかった!で、これからどうするんだ?」
タケルはモクメに言った。
「元の世界に帰るだけです。あのメリーさんをこの世界に置き去りにしてね。」
そう言ったモクメに、タケルは言い返す。
「ち、ちょっと待ってくれよモクメ!じゃあ、もしこの世界に住んでいる人間がいたらどうなるんだ?」
「ここには人間はいません。それは調べてあります!」
その時。
チュウチュウ…。
ネズミのような生き物が、岩陰から姿を現わす。タケルはその生き物を見つける。
「…人間はいねーかも知れねぇけどさ、あいつらはここに生きてるみてーだ。もしメリーさんを置いて帰ったら、あいつらはどうなる?」
「…御堂タケル。あなたを連れて来れば、こうなる事は想像出来ました。だから、来るなと言ったでしょう…?」
「でも、来ちまった…。」
「…仕方ありません。他の方法を探しましょう。」
モクメは笑った。
「…なにをのんきに話をしているの…!」
それはメリーさんの声。
メリーさんは怒りに震えながら、手を空高く掲げ、今にも振り下ろそうとしていた。
「え?まさか!」
タケルは何かに気づく。
「ジンタン、こいつもしかして?」
肩に乗るジンタンを見る。ジンタンは答える。
「ああ。こいつは暴走していない。」
それを聞いて、タケルは一か八かメリーさんに話しかけてみることにする。
「ちょ、ちょっと待ってくれよメリーさんっ!俺だよ。さっきの!」
「え?…あっ!あなたは?」
メリーさんは反応する。
もしかしたら、話し合いで解決できるかも…?
と、タケルは考えていた。




