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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
メリーさん編
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5話 ミクちゃんとメリーさん

「なんなんだよあいつっ!」


 タケルは怒っている。


「まぁ、被害はねぇんだし、良いじゃねーか。」


 ジンタンは、再び漫画を読む体勢に入る。彼にとっては、他人事だった。


「だってよ!話があるって言ったくせに、なんも言わずに帰るんだぜ!次会う時まで気になるじゃねーかっ!!」


 タケルの怒りの理由を聞いて、ジンタンは唖然とする。


「タケル…。お前、やっぱり変わってるな…。」


 ジンタンは呆れた声で言った。



「…それよりよ。お前、帰り道、何に会って来た?負のエネルギーがこびり付いてるぜ。」


 ジンタンは、漫画を読みながら言う。


「え?いつも通りの人面犬と、メリーさんって人形だけど?」


「メリーさんか…?結構危ないやつじゃなかったか?…ま、ワシには関係ないがな。」


「…やっぱりそうだよな?持ち主のミクちゃんって子に渡して帰って来ちまったんだけど…。」


 タケルは、ジンタンにいきさつを説明する。

 ジンタンは漫画を読んでいて、聞いているのかもわからない。…が、タケルが話し終えた後、ジンタンは口を開く。


「で、そのミクってガキはよ、なんで電話に出たんだよ?今の世の中、知らないやつからの電話なんて誰も出ねーだろ?子供1人の留守番ならなおさらだぜ。」


「!!」


 タケルはジンタンの言葉を聞いて、ミクちゃんと別れたあとに感じていた違和感を思い出す。


「俺、ちょっと行って来るよ!」


 そう言ったタケルの肩にジンタンが飛び乗る。


「面白そうだから、ついてってやるよ。」


 ジンタンは、無邪気に笑った。



 タケルとジンタンは家を飛び出し、ミクちゃんの家へ向かう。

 すると、都市伝説事典が上空を浮遊しタケルの後を追って来る。


「うわっ!」


 タケルは慌てて都市伝説事典をつかんだ。


「誰かに見られたらどうすんだよ!…ま、でも、これが必要かもしれねーしな。」


 と言って、タケルは都市伝説事典を小脇に抱え込んだ。

 その時!


「きゃあっ!」


 少女の叫び声。それは、ミクちゃんの家の方からだ。


「ミクちゃん!俺があの時、違和感に気づけてたら…。」


 後悔を口にするタケル。


「急ぐなら、口じゃなくて足を動かせよ。」


 ジンタンは、意地悪そうに笑った。


「わーってるよ!クソッ!間に合ってくれ…!」


 ミクちゃんの家が見えた。家の前で、少女がうずくまっている。ミクちゃんだ!


「ミクちゃんっ!」


 タケルは叫ぶ。


「さっきのお兄ちゃん!」


 ミクちゃんもこっちに気づいたようだ。

 男の声がする。


「君、走れるか?あのお兄ちゃんの所まで走るんだ!」


 タケルからは死角になっていて見えないが、ミクちゃんの前に、誰かがいるようだ。


 ドォン!


 何かになぐられたような音とともに、ミクちゃんのところに男が吹っ飛んでくる。タケルに男の顔が見える。それは、さっきまでタケルの家にいた人物…。


「えっ?モクメ?」


 タケルの驚きなど気にせず、モクメは叫んだ。


「行くんだ!!」


 ミクちゃんは、モクメに押し出されてタケルの方へ走って来る。


「大丈夫?」


 タケルの所まで走って来たミクちゃんに、タケルは優しく声をかける。


「…うん。」


 ミクちゃんはうなずく。どうやらケガはないようだ。が、かなり怯えている。


「一体、何があったんだ?」


 タケルが聞くと、ミクちゃんは、


「メリーちゃんが…。」


 と言って震えだす。タケルは慌てて、


「ミクちゃん、大丈夫!これは映画の撮影なんだ。」


 と、どこかで聞いたようなセリフでミクちゃんから恐怖を取り除こうとする。

 いくら小さな女の子だからって、こんな嘘が通じるだろうか…?

 ミクちゃんは口を開く。


「…そうだよね。あんな事、本当にあるわけないもんね…。」


 どうやらミクちゃんはびっくりするくらい素直な子だったようだ。タケルの即席の嘘を信じてしまうくらいの…。


「…向こうにある御堂って家が俺んちだからさ。撮影が終わるまでそこで待っててもらえるかな?母ちゃんがいるから。タケルに家で待っててって言われたって言えばいいからさ。」


 タケルは言った。


「お兄ちゃんは?」


 ミクちゃんはタケルを見つめる。


「今からクライマックスの撮影なんだ。主役が行かねーと撮影にならねーだろ?」


 タケルはそう言って走り出す。

 モクメが前方に向かって何か叫んでいる。が、タケルには聞こえない。

 すると、ミクちゃんの家の門から何か得体の知れないものがはい出してくる…。

 人間のような姿をしているが、手足が異常に長く、体が極端に小さい。まるで足の長いクモのようだった。

 タケルはさらに目を凝らす。そして、その正体に気づく。

 それは、メリーさんだった。手足だけが異常に伸びたメリーさんが、モクメに襲いかかっていた!


「モクメッ!」


 タケルは叫ぶと、何かを投げた。その投げたものは、メリーさんの頭に当たると、弧を描いてタケルの手に戻る。


「イタッ!何なのよ?」


 メリーさんはタケルをにらみつける。あまりダメージは与えられていないようだが、モクメから目線をそらす事には成功したようだ。

 タケルは投げたものをメリーさんに向けてかかげると、


「秘技都市伝説事典ブーメラン!」


 と言った。そして、再びモクメに向かって走る。


「来るなタケルッ!」


 モクメが叫ぶ。が、タケルは既に範囲の中に入ってしまっていた…。

 モクメの能力が発動する…!



 それは、ミクちゃんが瞬きをする間の出来事だった。

 その一瞬で、タケル、モクメ、メリーさんの姿は、ミクちゃんの前からかき消えていた…。


「そうだ。タケルお兄ちゃんに、家で待っててって言われたんだった…。」


 ミクちゃんは、そう言ってタケルの家の方へと歩いて行った…。



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