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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
メリーさん編
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4話 モクメと…

「モクメ?」


「ちょっと話があるんだけど良いかな?」


 モクメは言った。


「おう。上がれよ。」


 タケルは、モクメを家へあげる。


「モクメって、俺の部屋、来たことあったっけ?」


「いいや…。ないよ。」


「そっかー?なんか昔もこういうことがあったような気がすんだよな。良くうちに来てたやつがいたような…。」


「じゃあ、僕じゃないよ。こっちに引っ越して来てから、まだ1年しか経ってないからね。」


「だよな?」


 そんな事を話しながら階段を上る2人。

 そして、部屋に到着する。


「ここが俺の部屋だ。汚いけど、自由に座れよ。」


「…フィギュア好きなんだね。」


 部屋に入って開口一番、モクメは言った。

 タケルの部屋の窓際には、古いヒーローもののソフビフィギュアやガチャガチャの景品などが並んでいる。


「ああ。カッコいいだろ?とうちゃんにもらった貴重なやつもあんだぜ!超絶破界 ライオンロードのサムライオンとシノビートル!凄えレアなんだってよ。」


 タケルは、自慢げに鼻の下をこすりながら言った。


「へぇ…。」


 そのフィギュアの中に紛れてジンタンが立っている。しかし、タケルは気づいていない。


「で、話ってなんなんだ?」


「実は…。」


 モクメが話そうとしたその時。


 グーーーッ!


 タケルの腹が盛大に鳴る。


「あっ!もしかして、まだお昼食べてなかった?」


 モクメは申しわけなさそうな顔をする。


「ああ。帰りに人面犬とメリー…ゴホン。いや、ちょっと寄り道してたもんでさ。」


 タケルはごまかす。変なやつと思われても嫌だしな…。


「タケル、食べて来なよ。待ってるからさ。」


 と、モクメは優しく笑う。

 こんな感じの笑顔、見たことがあったような…?

 とタケルは思った。が、空腹には何者も勝てない。


「すまん!すぐ食ってくるからよ!母ちゃん!チャーハンッ!!」


 そう言って、再びドタドタと階段を下りていくタケル。


「全く、慌ただしいな。タケルは…。」


 モクメは、そう言って一息つく。

 そして、タケルの部屋を見渡す。目に入ったのは、部屋の角に放置されたランドセルとぶちまけた中身。


「えっ!?」


 モクメは大声を上げる。


「どうしたモクメ?」


 階段の下からタケルの声がする。


「だ、大丈夫。気にしないで。」


 モクメはそう言った。が、大丈夫ではない。ランドセルの中身の中に、あるものを見つけてしまったからだ…。

 モクメは、それを手に取る。


「こ、これは…。都市伝説事典じゃないか…。」


 手が震えている。


「まさか、なぜこの本がタケルの元に…?」


 モクメは都市伝説事典を、まるでここにあってはいけないもののように言った。


「…お前、それをどうするつもりだ?」


 モクメの背後から声がする。モクメは振り返らない。


「ワシが見えてるんだろう?」


 それでもモクメは動かない。まるで聞こえていないように。


「タケルは気づいてなかったようだが、お前、さっきフィギュアと言った時、ワシを見ていたよなぁ?おかしいなぁ…。普通の人間には、ワシは人体模型の胃に見えるはず…なんだがなぁ?」


「!!」


 モクメはビクッと背を震わせる。


「黒反モクメと言ったか。お前、何もんだ?」


 その時、タケルが戻って来る。


「おまたせ!モクメ。…ん?どうしたんだ?」


 タケルは、異様な空気を感じてそう言った。


「おいタケル。そいつ、ワシが見えてるぜ。」


「え?ジンタン、どういう事?」


 タケルは状況が飲み込めない。


「モクメ、ジンタンが見えてるって本当なのか?」


「…。」


 タケルの問いにモクメは答えない。


「あいつの手元を見な。」


 ジンタンは言った。

 タケルはジンタンに促され、モクメの手元に目をやる。モクメの手に握られていたのは、…都市伝説事典。


「…モクメ、それをどうするつもりだ?」


 今度の問いには、モクメの口が開く。


「これを持っていては、君に危険が及ぶかもしれない…。」


 モクメはそう言って、窓へ向かう。そこから飛ぶつもりのようだ。


「無駄だぜ。そいつはタケルから離れたがらねぇ。」


 ジンタンがそう言うと、都市伝説事典はモクメの手をスルリと抜け、タケルの手へと戻る。


「チッ!」


 モクメは舌打ちを残して飛んだ。タケルは慌てて窓から下を覗くが、モクメの姿はもうなかった…。



「なるほど。動く人体模型の胃に都市伝説事典。先日の夕暮小学校の事件も、やっぱり御堂タケルと無関係じゃなさそうね…。」


 モクメと一緒にいた女は、そうつぶやいた…。


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