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都市伝説事典  作者: ニカイドウ
一年前の肝試し編
23/137

13話 死に顔アルバムの呪い

新校舎2階、渡り廊下前の階段で、タケルは、職員室組と合流した。

「おい、じゅんぺい!どうよ。取ってきたぜ。人体模型の内臓!」

タケルは、自慢げに胃を見せびらかす。

「へー。」

あまり興味を示さないじゅんぺい。

「なんだよ。欲しいのか?欲しいんだろ?やろうか?やろうか?」

タケルは、そう言ってじゅんぺいの頬に胃を押し付ける。

「いや、いらねー。」

払いのけることもしない。そっけない態度のじゅんぺい。

「なんだよ。冷てーな。じゅんぺい…。」

タケルは、くちをとがらせて言った。スネた自分を見せたい時のリアクションだ。

「あーあ、逃した魚はでけーなぁ。」

じゅんぺいはため息とともに言葉を吐いた。

まだ死に顔アルバムが消えた事を悲しんでいるみたいだ。

「なぁ、ヤマト。コイツどうしたんだ?」

タケルはヤマトに聞く。ヤマトは、一から説明するのも面倒なので、

「…まぁ、色々あったんだよ。」

とだけ言った。

赤マントは、そんなやり取りを見つめていた。彼女は、あのトイレで1人だった。いや、記憶はないが、その前からずっと1人だったような気がする…。しかし、それよりもっと前、自分もこの輪の中にいたような気がした。そんな彼女の心に芽生えたのは、懐かしいという感情だったが、彼女にはわからない。ただ、暖かかった…。

タケルは相手をしてくれそうなヤツを探す…。そして、カゲルを見つける。

「うえっ!?カゲル?なんでいるんだよ?」

タケルは驚く。しかし、

「もう良いって。そのリアクション…。はぁ…。」

職員室の出来事で疲れきったカゲルも反応が薄い。タケルはまた口をとがらせた。

「で、これからどうするんだ?」

みんなに聞こえるようにタケシは言った。

「体育館に戻らないのか?」

タケルは不思議そうに質問する。

「…いや、体育館は…、な。ちょっと…。」

タケシは慌てる。来た道を戻るのは勘弁して欲しい…。

「まぁ、そうだよな。タケシは紫鏡に取り込まれそうになったんだし、戻るのは嫌だよなぁ。」

カゲルが言う。

「え!そんなことがあったのか?」

タケルは、驚く。もしかして、殺人鬼のホルマリン漬けも夢じゃなかったんじゃ…?急に怖くなるタケル。

「…今は、早く外に出る事が先決だと僕は思う。そんなこと…が、また起こらないとも限らないからね。とにかく靴箱のある玄関まで行って、そこから出よう!」

ヤマトは言った。みんながその意見に深くうなずいた。

足早に階段を降りていく6人と赤マント。そして、一行は、玄関へたどり着く…。


「ハァハァ…。なんだかやけにしんどいんだけど…。」

かなり息の上がっているタケシ。

「お、俺も…。」

じゅんぺいも疲れているようだ。

「どうした?具合でも悪いのか?」

タケルは、2人を心配して言った。

「もうそこだよ!頑張って!」

ヤマトが励ます。ツトムも心配そうに見ている。靴箱を抜ければ扉にたどり着く。タケルはスピードを上げ、ガラスの扉に近づく。外は真っ暗だ。

「待ってろ!今、鍵開けるからな!」

そう言って、鍵に手を伸ばす。開け方は、居残りさせられたやつならだいたい知っている。ノブ付近と扉の上下に付いている鍵の計3つを開ければ扉は開く。その時、ドサッと音がする。それは、カゲルが倒れた音だった…。

「!!」

タケルは、心配よりも先に目の前のカゲルの変化に驚く。なんと、カゲルの髪が、まるで花に色水を吸わせる実験のように、黒から白へと変わっていく…。

「なんなんだよ!これっ!」

タケルは叫ぶ。と、同時にドドッと連なり響く鈍い音。それは、タケシとじゅんぺいの倒れた音だった…。2人の髪もカゲルと同様にその色を白く変えていく…。

「これは…!」

ヤマトは驚く。

「3人とも、自分の死に顔を見てしまっていたんだ…。」

ツトムもつぶやく。タケルには、何がなんだかわからない。でも、なんとかしなければいけないのはわかる。

「とりあえず、鍵を開ける!もしかしたらここから出れば治るかもしれないだろ!」

タケルは、言葉より先に鍵を開けにかかっている。背伸びして上の鍵を…。しゃがみ込んで下の鍵を…。そして、ドアノブ近くの最後の鍵をひねる。

パチンッ。

開いた!

「よし、出るぞ!」

タケルはノブを回した。

「………。」

ガチャガチャ…。

「………?ん?」

扉が開かない。鍵は開けた。ノブもちゃんと回る。しかし、扉はビクともしない…。

「くそっ!」

タケルは少し下がり、勢いをつけて扉にタックルする。

ドンッ!

ビクともしないどころか、タケルは扉に押し返され、床に倒れこむ。

「いってー!」

タケルは叫んだ。

「どうしたんだタケル、大丈夫か?」

ヤマトは、タケルに駆け寄る。

「扉が…、扉が開かないんだ。」

「なんだって!?」

「ハハハハハハハハ…。」

その時、聞こえる抑揚のない笑い声。

「その声は、死に顔アルバム!!」

赤マントはそう叫ぶと、ヤマトを守るように前に出る。すると、玄関の6つあるガラス扉のガラス一面に、巨大なガイコツ先生の顔が浮かぶ。

「そうだよ。私だよ。」

「うわぁっ!なんだよこれ!!」

タケルは怯える。

「これは幻だ。」

赤マントが言う。その声が唯一聞こえるヤマトは、

「大丈夫。これは幻だよ。僕たちに手出しは出来ない。」

とみんなに伝える。そして、床に倒れるタケルに手を貸して起き上がらせ、みんなのいる靴箱辺りまで戻る。ガイコツ先生は口を開く。

「…その通り。私は手出しできない。でも、どうする?死に顔アルバムの自分の写真を見たその3人は、死ぬのが運命だ。私が何もしなくてもね。ハハハハハハ。」

「死ぬ…?」

タケルはつぶやく。そして、タケシ、じゅんぺい、カゲルの顔を見る。コイツらが死ぬなんて嫌だ…!それを感じ取ったように、ガイコツ先生は再び話し始める。

「…死なせない方法はあるんだよ御堂。それは、御堂が言ったように、学校から出ること。そうすれば、私の呪いは届かない…。」

なら、どうしても学校から出なきゃいけない!タケルはもう一度扉にタックルしようと構えた。

「でもな、御堂…。この学校に外なんてもんはないんだよ御堂…。なんせこの学校はな、御堂…。お前たちの知っている学校じゃあないんだからな御堂…。」

「なんなんだ一体…。」

名前の連呼がタケルの恐怖心をあおる。

「…タックルの前に、もっと良く見たほうが良いんじゃないか?御堂…。ほら、扉の外だ、御堂…。」

ガイコツ先生は、そう言って消える…。

タケルはその言葉が気になり、ガイコツ先生が消えて見えるようになったガラスから外を見る。

「………………ッ!!」

タケルの顔が青ざめる。

「…どうしたんだ?タケル…?」

ヤマトはタケルに声をかける。ヤマトからはタケルの背中しか見えないが、何かがあったのはわかる。タケルは恐怖で狭まる喉から無理やり声を絞り出す。

「外が…、ないんだ…。」

「えっ?」

ヤマトもタケルに近づき、扉の外を眺める。

「!!」

外を見てヤマトは絶句する。それまでヤマトは、外が暗いのは夜のせいだとばかり思っていた…。しかし、ヤマトが見た扉の外は………暗黒。月や星もない。周りにあるはずの建物もない。闇の中に学校だけが浮かんでいる。

「ハハハハハハハハ…。せいぜいあがくんだな…。」

その声を残して、死に顔アルバムの気配は完全に消えた…。

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