怪しい図書館 後編 真
ある一人の女の子の話。
その女の子はね、非現実的な話がだいっきらいだったの。
魔法に異能力、スライムにドラゴン。そんなものはね、存在しないの。存在しないもののことを考えたって仕方がないでしょう。だからね、書き換えちゃうの。物語をぜーーーーんぶ。だって役に立たないんだもの。
その女の子はね、ある日気がついたら知らない図書館にいたの。
「凄いわ!ここにある本たち。お父様の書斎よりも沢山ある。一生かけても読み切れないんじゃないかしら。」
女の子ははしゃいだ。だっていくらでもお話を書き換えられるんだからどんだけつまらない本でも本の数だけ楽しむことができたから。
◇◇◇◇◇
「やめっ、やめてくれっ!!」
千歳のポーカーフェイスが崩れる。醜く、情けなく歪む。
ああ、なんて面白いのかしら。非現実が現実に押しつぶされる様は。
◇◇◇◇◇
その女の子は一匹の不思議なうさぎに出会ったの。
なんて可愛げのない兎だこと。いっそ喋らなければ可愛いのに。
女の子はそう思いつつも差し出された本を貰った。だってその方が都合がいいでしょ?
非現実的なうさぎは黙ってどこかへ去ってしまった。いえ、喋れなかった、といったほうが正しいかしら。
◇◇◇◇◇
千年は芽衣が手に持つ本を奪おうとする。しかし芽衣はひらりと交わしてしまう。
「まだお話が続きですわ。立ち上がるなんてお行儀の悪い。」
「待って、待って、やだ、やだ!」
◇◇◇◇◇
ああ、本の内容を話していなかったわね。
この女の子が持ってる本にはこう記されていたの。
◇◇◇◇◇
ああ、本の内容を話していなかったわね。
◇◇◇◇◇
ああ、本の内容を話していなかったわね。
◇◇◇◇◇
ああ、本の内容を話していなかったわね。
◇◇◇◇◇
おっと危ない、ループ行動を起こして物語が終われなくなるところだったわ。使い方には気をつけないと。
ちょっと前のページに戻ろうかしら?
◇◇◇◇◇
「あら、どんな本かしら。」
芽衣はウサギからその本を受け取りペラリと開き、1ページ目に目を向けた。
「これは・・・
◇◇◇◇◇
その本にはね現実そのものが記されていたの。気味悪く思いながらも女の子はその本を持っていくことにした。
もう少し続きを読んでみるわ。
◇◇◇◇◇
そこには大きな机に4つの椅子があった。偶然なのか、必然なのか。そこには四人の少女が集まっていた。
「立ったままというのもあれですし折角この場に四人もいるので座って本についてのお喋りでもしませんか?」
一人の少女が口を開く。
◇◇◇◇◇
偶然?いや、必然。4人の少女がその場に集まった、集まってしまった。
◇◇◇◇◇
二人の少女はもういない。千歳と芽衣の二人で過ごすにはこの図書館はただただ広かった。
「彼女たちはあなたが過去にここに閉じ込めた女の子。3人が今語った怖くない物語もここに閉じ込められた女の子を物語の内側に閉じ込めていたんでしょう。」
◇◇◇◇◇
そろそろ菱形が多くなって分かりにくくなってきたわね。
◇◇◇◇◇
「もういっそ表で直接話そうかしら。あなたは怪異として女の子たちをここに閉じ込めてきた。違う?」
「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
◇◇◇◇◇
千歳は震え続ける。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ
◇◇◇◇◇
「んなさい。」
「うるさいわ!!」
「全てはあなたがやったこと。あなたも物語の一部になるのよ。怖くない現実的なお話。もうあなたは怪異なんかじゃなくなるの。おめでとう。あなたは人間として生まれ落ちるのよ。」
◇◇◇◇◇
やだやだやだやだ
彼女がどんなに喚こうと物語の結末は変わりませんでした。
パラパラパラパラッ
ページを捲る音がしました。それは彼女の頭の中からどうしても離れずこびりついてしまうのでした。
おしまい
◇◇◇◇◇
「おしまい……じゃないわ。あなたは誰かがこのお話を読むたびに特に個性もないモブとして都市伝説ですらない、人を怖がらせることさえできない存在として生まれ続けるの。」
そこはもうすでに図書館ではなくなってしまった。
蛍の光が流れ始める。5時のチャイムだ。小学生はもう家に帰らないと行けない。
「じゃあね。私はあなたを二度と読まない。」
芽衣はそう口にすると振り返ることもなく帰っていく。
(この場所に来ることは二度とないでしょう。さらば、みんな。私を図書館に閉じ込めようとしたことが運の尽きね。)
芽衣はスキップをして鼻歌を歌いながらその場を去った。




