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書籍化記念SS

お久しぶりです。

2022年7月4日に一迅社アイリスNEOさまより書籍発売になります。

書店特典は以下のようになります。


https://ameblo.jp/ichijin-iris/entry-12748057534.html




「やぁ、ミリアム」

「まぁ、リオネルさま。こちらにおいでなんて珍しいですね」


 王宮内にある図書室で私は大神官リオネルさまと会った。


 図書室は王宮に勤めている者なら身分証のみで出入り自由。

 なので私は昔からよく来ているが、リオネルさまがここに来ることはまれだ。

 なぜなら神殿にも図書室があり、基本的に動かないリオネルさまが利用するのはもっぱらそちらだから。


「今日は神殿にない本をお探しに?」

「いや、なんとなく気が向いて歩いていたら、ここに着いた」


 いつものように気だるげに椅子に座りそう答えるリオネルさまの横では風もないのにページがパラパラめくれていく。


 私が不自然な本の様子に視線を奪われていたら、リオネルさまがくすりと笑った。


「風の精霊たちだよ。今日は風が強いな」


 そう言われて灯り取りの小さな窓から空を見ると、木々の葉がさわさわと揺れていた。


「そこらじゅうを飛び回って、本当に楽しそうだ」


 私には見えない風の精霊たちを目で追い、リオネルさまはやさしげに微笑む。


 その視線の先の通路にレイモンドさまの姿があった。

 ダークブロンドの髪が風に乱され、それを手で押さえ、また乱され難儀している。

 後ろに付き従うマックスさまがそれを見て笑う。


 不思議なことにマックスさまの髪は乱れていない。

 レイモンドさまが立っている場所は、風の通り道なのかしら。

 でも歩き去った先でもレイモンドさまだけ髪が乱されている。


「相変わらず好かれているな」


 首を傾げていると、リオネルさまが苦笑した。


「好かれている?」

「レイモンドだよ。風の精霊はレイモンドがお気に入りなんだ」

「まぁ」


 なんてことないように言われた内容に私は驚きの声を上げた。


「まさかレイモンドさまも祝福の子なのですか?」

「祝福の子ほどではないかな。あれは規格外という意味でもあるから」


 リオネルさまは少し陰りのある笑みを浮かべて、私を見る。


「アイリーンさまも……規格外?」

「うん、まぁ祝福の子の中でも際立つね」

「ジーク爺さまよりも?」

「ジークムントは珍しい花や新しい花を作ったり、呪符を使うのは得意だが、アイリーンのように成長速度を大きく変えることはできなかった」


 アイリーンさまは意識的にしているわけではないとリオネルさまは続ける。


「アイリーンに祝福を与える精霊が普通より多いせいだ」

「他の祝福の子より多いんですか?」

「あぁ」

「ジーク爺さまよりも?」

「はるかに」


 リオネルさまはさらりと頷くけど、多いとはどれくらいなのだろう。私には想像もつかない。


 それが顔に出ていたのだろう。

 リオネルさまはやさしく微笑み、手を宙でひらりとさせた。


 その動きの一拍後、私の髪が風に撫でられる。


「精霊に好かれる理由は私も分からないよ。だけど精霊は常に誰かを祝福している」

「そうなんですか?」

「そう。普段はふわふわ漂っているが、すれ違う人間に祝福を与えてくれるんだ」


 私は自分の髪に手をやり、指先に何か触れないか探る。

 だけど何も感じないまま、少し失望を覚えた。


「人間と同じで、精霊にも好みがある。同じ空間にいて気が合う人と合わない人がいるように」


 精霊は気が合う人の周囲に集まってくるらしい。


「レイモンドの周囲にはいつも風の精霊がたくさんいる」


 そして風の精霊はその性質に従って流れていく。その動きにレイモンドさまは影響を受けているそうだ。


 それを聞いて私はレイモンドさまの言葉を思い出した。


「王宮での生活に不満があるわけではない。ただどうしようもなく……外に出て人と出会い、話がしたい。その土地に行って、そこの風を感じたいんだ」


 レイモンドさまは焦燥感にあふれる顔でそう言っていた。

 そして陛下に根無し草と言われるくらいふらふら出歩いてばかりいた。


 確かその言葉を聞いたのはアイリーンさまとレイモンドさまが出会う二年くらい前だったと思う。


「本人が意識しないところで、レイモンドも風と一緒に動きたくなるんだろう」

「あれは精霊の影響なんですね……」

「でもレイモンドは特別じゃない。皆同じように精霊に影響を受けているし、与えている」


 リオネルさまは人差し指を自分の口元に寄せ目を細めた。


「君は光だよ、ミリアム」

「光……?」

「祝福の子でもレイモンドほどでもない。だけどほんの少し、光の精霊にひいきされている」


 私はそれを信じられない思いで聞く。


「君がいると光の精霊たちは喜ぶ」

「喜ぶ……」

「そう。何かしてくれるわけでもないが、それが人と精霊の関係だ」


 私には見えないけど、精霊に好かれていると聞いてなんだか胸がどきどきしてきた。


「リオネルさま。光の精霊は……今も私のそばにいてくれていますか?」

「いるよ」


 即答された瞬間、窓から差し込む陽光が私の周囲に集まり、きらりと光った。


大幅な加筆修正であま~い感じにもなっていますし、

文章も少しは読みやすくなったかと思います。

ぜひご一読ください!

応援してくださった方々、本当にありがとうございました!

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